EPISODE,62:聡明で狂った彼は──
俺を襲おうとした3人の連中は、「繋駕組」の一員だと名乗った。
その名を聞いて気づいた。
繋駕組は、親父の勤めている会社のバッグで、以前その奴らと裏で取り引きするような仲だとニュースで報道されたことがあった。
そして、繫駕組の幹部には親父がいたはず。
「流石に警察呼んだほうがいいですよ、大家さん」
「いや、明男さんそれはやめといたほうがいいかも」
「なんで?」
「ここで呼んだりしたら、人質になってる彩音さんに何をされるかがわからない。そもそも繫駕組は警察の脅しなんてもの通用しないような奴らなんですよ?」
「じゃあ、どうするんだよ?」
「『郷に入ったら郷に従え』っていいますよね?」
「まさか、乗り込むのか!?」
「それ以外にないですよ!」
実際、奴らと彩音は坂上町の廃工場にいるらしい。
場所がわかったのなら話は早い。
早急に潰すだけだ。
「待つんだ、隼斗くん」
「大家さん?」
「流石に1人で行かせるわけには行かない。そもそもひとりきりで乗り込んだとしても、相手が何人いるかすらわからない。数の差はどうするんだ?」
「・・・わかりません・・・でも!」
「でもで済むならもう解決してるよ」
「っ!・・・じゃあどうすれば?」
「まぁなに。私に1つ、作戦がある」
「作戦?」
「その作戦のために、君には時間稼ぎをして欲しい。廃工場から連中を逃さないようにして時間を稼いでいれば十分だ。だから行って来い」
「・・・わかりました!信じてますからね!」
そう言って俺は、自転車にまたがり、急いで廃工場に向かった。
ここからそう遠くないことが幸いだった。
「んんっ・・・」
目が覚めると、私はなにやら作業台のようなものの上に仰向けになって寝かされていた。
両手両足には、鎖で縛られていて動けなかった。
「気づいたか?」
「あ・・・」
眼の前には、なにやらガラの悪い男が立っていた。
でも、私はその男の声に聞き覚えがあった。
「隼斗の・・・お父さん?」
「そうだ。いろいろと君のことは調べているよ。小窪彩音」
「なんで、私をここに?」
「無関係だと思うだろうが、私から見れば十分に関係があるんだよ」
「えっと・・・、それって私が隼斗を家出させるきっかけになったからとか?」
「半分正解、半分不正解ってとこだな」
「どういうことです?」
意味がわからなかった。
そもそも隼斗は、理不尽な理由でこの家族によって心がボロボロになって、私が助けたんだからむしろ・・・。
いや、そんな訳はない。
親から見れば、隼斗を誘拐した張本人にしか見えてないのだろう。
「まぁ、詳しく話そうか。簡潔に言うと、君はあいつに『自由を゙与えた』ことと『こっちが不都合になるようなことをしてしまった原因』ってことだ」
「どういうことなんです?」
「まぁ詳しく話すつもりはないよ。話したところで理解できないだろうからねぇ。だが、君には二度とあいつに近づけないようにするよ」
そう言って、ポケットからナイフを取り出し、私の指にかけた。
「ちょっと!やめて!!」
「こうでもしないとお前はあいつに近づくんだろ!殺されないだけありがたいと思えよ!」
体が固定されて抵抗ができない、思うように動けないまま私の左手の人差し指にナイフの刃が通る。
指を力ずくで固定され、ゆっくりギコギコと刃が通る感触。
痛い、苦しい、もうやめて!
そんな考えが頭の中を駆け巡る。
もう、隼斗と関わらなければこんなことにならないのかな───
「痛みに耐えるコツ?」
数日前、私はそんなことを聞いた。
隼斗が今まで苦しめられてきたのに、どうやってその苦痛に耐えることができたのか、ふとそんな疑問が頭に浮かんだのだ。
「考えたことなかったな・・・うーん、なんでだろ?」
「えっと、特にない感じ?」
「あ、1つあったな」
「え?なに?」
そう言って、隼斗は笑顔で言った。
「乗り越えられるって、何かしらを信じていればなんとかなるよ。ただの楽観主義的な意見だけどね」
「おい!クソ親父!!」
そう叫ぶ声がこの空間に響く。
なぜだろう、私はこの響く声に安心感が出た。
指の痛みが自然と引いていく感覚がする。
見てみたが幸い、切り落とされていないようで良かった。
「思ったより早かったな、隼斗。この子少し傷つけてやったよ!」
「・・・よくも・・・・・・」
「あ?」
「よくもやってくれたなぁ!!」
隼斗の目は、全てを憎んでいるような、そんな恐ろしい目をしていた。
EPISODE62です。
思うんですけど、なかなかアクヤクヲ描くのはかなり大変なんですよね。悪者には悪者のプライド的なものでもあるんでしょうかね?
ではまた、EPISODE63でお会いしましょう。




