EPISODE,61:人こそが真の死神だ
最近、私は甘えすぎてると思う。
隼斗に依存してるといってもいいくらいに甘えているし、毎回隼斗も快く甘えさせてくれるから、正直幸せだと思ってるし、ずっと続いてほしいとも思う。
でも、私のこの隼斗に対する愛情を伝えるのが本当に怖い。
伝えたとたんに、その人から何かが消えてしまいそうで。
その何かが、私のこの虚しい思いを埋めてくれていると断言できる。
だから私は、隼斗に思いを伝えられない。
「そういえば、最近彼氏君とどう?」
授業間の休み時間、絵名がそんなことを聞いてきた。
「えっと・・・、彼氏君って?」
「何言ってるのもう、橋沢くんだよ」
「えっ・・・付き合ってないけど・・・?」
「・・・・・・はい?」
「言ってなかったっけ?」
「いや、聞いてるけど。そもそも仲いいのにいまだに付き合っていないことに驚きなんだけど?」
「まだ付き合ってないよ・・・」
「えぇ!マジで!?もったいないよ~、最近女子たちの間であの人の評価上がってるんだよ?」
「え!?そうなの?」
初耳だった。
隼斗がそんなにモテることにひどく驚いた。
「なんで・・・そんなに?」
「なんでも、最近あの人の良さに気づいた子たちが話題にするようになってね。そこからだんだんと気付き始めて、今に至るって感じ」
「なにそれ・・・」
「というか、同居してるんだから彩さんが一番有力候補だよ」
「それはそうなんだけど・・・」
「ん?」
「告白するのが怖い・・・」
「えー、なんで?彩さん転校してきたときめちゃくちゃ男子から告られてたじゃん」
「でも・・・」
「でも?」
「隼斗は・・・しなかったの」
「え?そうなの?」
実際、この話は事実。
この高校の男子で唯一、隼斗だけが告白していない。
「それって、彩さんのこと可愛いとか思ってないのかなぁ・・・?」
「そういうわけじゃないと思うんだよね」
「というと?」
「前に『私のことどう思ってるの?』的なこと聞いたらさ・・・その・・・・・・いっぱい私の魅力語ってくれたことがあって・・・」
「なにそれ羨ましい・・・」
あの日の言葉攻めから察するに、少なくとも隼斗は私に『可愛い』とか『綺麗な人』とかそういうことは持っているんだと思う。
そもそも毎日同じ布団で一緒に寝るのを嫌がらなかったり、家で抱き着いたりするのを拒んだりしなかったり、膝枕してもらってることを考えてる限り、少なくとも私に心を許してくれているのだと思う。
そんな淡い期待を抱きながら、残りの休み時間を過ごした。
放課後、スマホの通知音が鳴り画面を開くと、隼斗から「ちょっと涼太から買い物に付き合わされることになったから先帰ってて」とメッセージが来ていた。
それを確認した私は、一人まっすぐ家に帰る。
高校の最寄り駅の近くまで来たとき、「すいません」と話しかけられた。
「はい、どうかしました?」
「あの、鈴木文具店の道ってどう行けばいいですかね?」
「それならそこを曲がって、あ──」
突然、わき腹に鋭い痛みが走り、私の意識は暗闇へと落ちた。
「遅くなったな・・・」
俺は放課後、涼太のお願いで買い物の手伝いを済ませて、ようやく家の前まで来ていた。
最近は彩音がよく俺に甘えてくることが多いから、きっとさみしい思いをしてるだろうと、そんなことを考えながらドアに鍵を差し込もうとした瞬間。
「オラァ!!」
「なっ!?」
いきなり中から、いかにもガタイのいい連中が襲い掛かってきた。
俺はとっさによけ、連中三人を当て身で気絶させた。
「なんだよこいつら・・・」
「おい!何があった!?」
そういって隣の部屋から明男さんが出てきた。
「明男さん、さっき部屋に入ろうとしたらこいつらが出てきて」
「なんだこいつら?とりあえず俺はこいつらを拘束する。はやちゃんは大家さん呼んできて」
「わかりました!」
そう言って俺は、急いで大家さんを呼んだ。
「なにがあったんだ・・・」
「どうします?こいつら起こさないと・・・って、あ」
そう話していると、気絶していた三人の一人が起きた。
「クソっ!ガキに後れを取るとは・・・」
「お前ら、誰だ?」
「そうだな・・・、その前に伝えたいことがある」
そいつは、信じられない一言を放った。
「小窪彩音は、預かった。返してほしかったら坂上町の廃工場に来い」
EPISODE61です。
さらわれてしまった彩音さんに、隼斗は相当な怒りがこみあげていることでしょう・・・。
そんななかですが、前回のEPISODE60のタイトルが未記入だったことに気づき、やっと書くことができました。マジですみませんでした。
ではまた、EPISODE62でお会いしましょう。




