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EPISODE,59:霧島を切り裂いて

時刻は午前9時半を過ぎたころ。


「約束の時間にちゃんと来たようだな」

「父親だからってそんな上から目線で話さなくてもいいんじゃないか?」

「お前の態度のせいだっていつになったら気づくんだ?」

「こんな態度になったのは誰のせいなんでしょうね?」


とまぁ、予想通りというかあまりにもテンプレ過ぎて笑っちまいそうになったが、何とかこらえる。

その後も、霧島の連中が来るまで待ちぼけていた。



ようやくその連中が来たのは、11時半、つまりは2時間も待たされるハメになった。

その間、なかなか地獄のような時間を過ごしていたのだが、割愛させてもらう。

はたから見れば、見るに耐えられない感じだったしな。


「社長、本日はよろしくお願いいたします」

「こちらこそな。すまないね、急遽の会議が入ってしまって遅れてしまったんだよ」

「そういうことでしたか、お疲れ様です」

「ありがとうな」


会議とはいえ、俺らに連絡する時間はあったんじゃないのか?と聞きたかったが、聞いたら聞いたで面倒だからやめとこう。

そんなことを考えていると、社長さんの車から女の人が下りてきた。

年は俺とそんなに変わらないように見える。


「隼斗よ、紹介する。わが娘の霧島凪(きりしまなぎ)だ」


そういうとその女性、凪さんはお辞儀をした。


「はじめまして、凪です」

「橋沢隼斗です」

「自己紹介も済んだことだし、そろそろお昼にでもしようか」

「わかりました」


そういって車に乗り込んだ俺たちは、とあるところへ向かっていく。




そうして着いたのは、いかにもこ洒落ていて、なおかつ高そうなレストランだった。

店内に入ると、中の店員はすべてを理解したかのように無言で俺たちを席へと案内した。


「君、例のを頼む」

「わかりました」


どうやら俺たちにメニューを選ぶ権利はないらしい。

前もってコース料理かなんかを予約したのだろう。


「では、あとは任せるよ」


そう言って社長さんとあいつは二階席へと向かっていった。

そのときに、「くれぐれも失礼のないようにな」と俺に耳打ちした。


「えっと・・・まさか二人にされるとは」

「初対面ですしね。まぁ絶対こうなるんだろうなとは何となく予想はついてましたけどね」

「そう。ところで、あなた私のことどう思っているの?」

「というと?」

「私がモデルだってこと知ってるの?」

「えぇ、一応は知ってますよ。なんなら、よく熱愛報道とかされてるのとか、ニュースとかで見ますし。あなたが相当モテるのは知ってます」


そう言い、俺は運ばれた料理を口にする。


「そこまで知ってるなら聞くけど、なんで私に対しての下心がないの?」

「・・・結論から言うと、『興味がない』ってだけですしね」

「変わってるね」

「よく言われます」


その後は、特に互いに話す話題もなく、ただ黙々と食事を進めた。




「あ、お父様から──」


食後、スマホを見ていた凪さんはそんなことをつぶやいた。


「午後から二人きりの時間にしておいてやるから、仲良く親睦を深めなさい・・・だって」

「そうですか、じゃあ俺はこの辺で──」

「二人でいるかどうか見張っとくよ、ですって」

「・・・あの野郎・・・・・・」


俺はそう小声でつぶやく。

早めに帰りたいのにこのザマかよ、まぁ仕方ないか。


「どこか適当に歩きましょ」

「わかりました」


そう言って俺たちはレストランを出た。



適当に服屋とか雑貨店でウインドウショッピングをしていると、凪さんが話しかけてきた。


「気になったんだけどさ、もしかして彼女持ち?」


そんなことを聞かれた俺は、少し回答に困った。

彩音とは同居してるってのもあるという以前に、そもそも俺彩音のこと好きなんだけど、いまだに付き合えていないんだよなぁ。


「あぁ、えっと。はい、います」

「やっぱり、そうだろうと思った。でもなんでこのお見合い受けてくれたの?」

「親が無理矢理ってところですね」

「そういうことね、そりゃ私のこと興味ないわけよ」

「ですね」


そんなことを話していると、俺のスマホから着信音が響いた。

見てみると、「娘さんと今夜は外泊しろ」との旨のメッセージが来ていた。


「最悪・・・」

「ですね・・・、どうしましょうか」

「正直嫌なんだよね、私」

「俺もですよ」

「だね・・・って、ん?」

「どうかしまし──」


一瞬何が起きたかわからなかった、振り返るとそこには彩音がいた。

にっこりと笑ってはいるが、目は笑っていない。

あれ?これやばくね?


「行くよ」

「おおっ!?わかったから!」


そう言って彩音は俺の手を引き、連れ帰っていった。

凪さんを一人残して。





帰宅後、俺は彩音に事情聴取をしていた。


「あのなぁ、帰ってくるって言ったよ?・・・って言っても、信用されなかったってのはいろいろ理解できてるけどね」

「・・・ごめん」

「怒ってないよ。そもそも断り切れなかった俺も悪いしさ」

「うん・・・」


こうは言ったものの、やっぱ落ち込んでる。

その様子は、帰宅後部屋に来てみたら、部屋を荒らしてしまった犬のような感じそのものだった。


「てか気になったんだけど、俺いない間、寂しかったの?」

「ううん、違う」

「え?じゃあなんで──」

「苦しかったの」

「苦しかった・・・ねぇ」


そうか、もとはといえばこの同居も彩音の提案で始めたんだったな。

久々の一人の時間が苦痛だったんだろうな。


「まぁ、なんつーか。一人にさせてごめん」

「・・・・・・ゆるす」

「ありがとな」

「っ!?」





隼斗は、泣きかけだった私を見て優しく抱きしめた。

その温かみに、うれしさを感じた私は、こらえきれずに泣いた。

そんな私を、ただただ無言で抱きしめ続けた隼斗は、本当に優しい。


だからこそ私は、この瞬間がずっと続いてほしかった。

EPISODE59です。

最近はやることがリアルに多くてこの小説の編集が間に合わないことがよくあります。

でも、この週一投稿を意外と守れてることに驚いてる自分がいます。


ではまた、EPISODE60でお会いしましょう。

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