EPISODE,57:ギクシャクは垣根を超えて
隼斗のことが好きだと自覚してから、気付いたことがある。
朝目が覚めた時に、自分の好きな人の近くで眠っていることへの優越感を感じることがあったり、同時に布団の中で目が合った時の異様な気まずさが私を襲う。
それで朝から顔が熱く真っ赤になってしまうことが多くなった。
「はあぁ・・・」
「ん?どうかしたの?」
「いや・・・、うん・・・なんでもない」
「なんでもないって反応じゃないよねそれ」
私達は今、ピアノ室でお昼を食べていた。
普段お互いの友人関係を優先してるから、学校ではあまり話す機会がなく、こういう昼休みしかなかったりする事が多い。
「うん、正直言うとあんまりなんでもなくはないかな?」
「お、珍しいな。彩音が正直になるなんて」
「そう?結構素直な方だと思うけど?」
「まぁ、態度とかでいろいろ察せるとことかあるからね。ぶっちゃけありがたい」
「ありがたいんだ」
「まぁね。それで?なにか悩んでたん?」
「やっぱなんでもない」
「やっぱってなんだよ」
そう言って隼斗は笑った。
何気に思うけど、こういう笑顔にも癒やされるんだよね。
「聴いてくれるなら話すけど?」
「聴くよ」
「ありがと。じゃあ話すけどさ、隼斗の好きなこのタイプって何?」
彩音は真剣な眼差しでそう聴いてきた。
そう言われても、目の前にいるんだよなぁ・・・。
「ええっと、端的に言うとね・・・」
「言うと?」
「一緒にいて楽しかったり、幸せな人・・・かな?」
「ふーん・・・」
「ふーんって・・・。そういう彩音はどうなん?好きな人と進展したか?」
「えっ!?あ、えっと・・・。ぼちぼち、かな?」
「ぼちぼちて・・・」
あんまり詳しく答えない辺り、彩音らしいなとはよく思う。
あと答えるときちょっと顔赤くなってたけど可愛いな。
俺もそいつに取られ内容にしないとね。
そう考えながら俺は卵焼きを口の中に放り込んだ。
その夜、私達は寝る準備をしていた。
隼斗の抱きしめられて私が気に入ってしまったのがきっかけで、お互いを抱きしめ合いながら眠るようになった。
「えっと、それじゃあおやすみ」
「ん、おやすみ〜」
明かりを消して暗くして私は眠りにつく。
眠気が回ってきた、今日も疲れたなぁ、そう考えたときだった。
チュッ
───と、私のおでこに柔らかい感触があった。
そのすぐ後に、私の耳からこう聞こえてきた。
「おやすみ、彩音。大好き」
と、そんなことを言ってきた。
「ッ!んっ・・・・・・」
明日も学校なのに。
絶対に眠れない。
お願い、今起きたことが私の寝ぼけた幻覚によるものだと、願った。
でも、私は体を起こし。
「やっぱり、現実であってほしいな・・・」
そう隼斗の寝顔を見て再び眠りについた。
でも私は知らなかった。
この出来事の数日後、私が隼斗の前から姿を消すことを、この時の私達は知る由もなかった。
EPISODE57です。
去年の4月の9日から始まったこの俺バレももうすぐ一周年ってマジかと思いながら書いている今日このごろです。もうすぐ書き終わるのかと思うと寂しく思う反面乗り切るかと意気込める部分もあります。
ではまたEPISODE58でお会いしましょう。




