EPISODE,40:惚れた弱み?いや、そういうのじゃなくてだな・・・
美空ちゃんとの会合が終わって2日経った月曜日。
「隼斗」
「どした?」
「ひま」
「わかるぞ、その気持ち」
俺達は放課後、バイト先である『2×12』でバイトをしていた。
──なお、レジには俺と彩音しかいない。
まぁ、細かく言うと俺達の他にもう二人居る。
店長&副店長夫婦だ。
2人は裏方で商品の発注・受け取りやらなんやらで忙しい。
いや、忙しいなんてもんじゃない。
あれはもう、時間に追われてるって言ったほうが良いな。
前に1回だけ裏方を手伝ったことがあるが、目が回るやら頭は回転しないやらで、ものの2分でリタイアした記憶がある。
もう、地獄なんて言葉じゃ生ぬるく感じるレベルだ。
「はぁー・・・」
「どうかしたの?」
「いや、ちょっと昔のこと思い出してね」
「昔のこと?」
「ここの裏方。めっちゃ激務だって話したっけ?」
「あ、うん前に聞いた。そういえばさっき半額商品置いてきてって呼ばれた時、副店長が鬼の形相になってたよ」
「うん・・・、そうか・・・」
どれだけ今忙しいの?
というか、お客一人も来てないのに何でそんなに忙しいんすか?
そんな疑問が俺の頭の中を駆け巡った。
それにしても・・・
「客、来ないな・・・」
「そうだね~」
いつもならそこそこ客は来るのだが、今日は珍しく全然来る気配がない。
そのせいで、さっきしりとり始める始末になった。
まぁ、すぐに飽きたけどね・・・。
「そういえば、今日2人は?」
「2人?あぁ、水無瀬さんと涼太は休み」
「休みなんだ」
バイト行く前にスマホでLead(SNSの一つ)のグループLeadで確認しておいた。
「なんで休み?」
「水無瀬さんは大学の方でいざこざが起きてそれの呼び出し」
「いざこざ?」
「なんか水無瀬さん曰く『大学の敷地内でBBQしてた輩の中に敷地燃やした奴がいて、その犯人探すから当日いた人全員呼び出しだ』って」
「そもそも敷地の中でバーベキューって良いの?」
「大学にもよるらしいけど、水無瀬さんのところはしていいって」
「へぇー・・・」
「あと、涼太は昨日のケガが治ってないから休むって」
「あー・・・、うん。そうだったね・・・」
涼太のケガの発端は、昨日の事だった───
「涼太、このサンドイッチ向こうの棚に頼む」
「わかった」
サンドイッチの棚が空になり、急いで補充しようとしていたときだった。
その近くで彩音がモップを使って床掃除をしていた。
「彩音さーん、ちょっとごめーん」
「あ!そこ!」
「え?うわぁぁぁっ!?」
涼太は濡れた床に足を取られ、派手に転倒してしまった。
ただコケて箱の中のサンドイッチブチまけるだけだったら店長に土下座すればよかったのだが・・・。
「あ・・・」
「えっ・・・?」
涼太は、彩音に覆いかぶさるように転んでいて、その左手は彩音の胸を鷲掴みにしていた。
「あ・・・、その。これは・・・」
「ひっ────」
「おい!大丈夫か・・・って、なにこれ?」
「あ、隼斗・・・、これは───」
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「ぶぐぉあぁぁぁ!?」
「あっ・・・」
彩音の右手から繰り出されたビンタは、涼太の右頬にクリーンヒットし、そのまま左側にふっ飛んでしまった。
だがそれ以前に、俺は嫌な予感がしていた。
ビンタの音だ。
バチン!ではなく、バキン!って聞こえた。
もしかしてと思い、ふっ飛ばされた涼太の顎を触ってみたら、明らかに骨の方に違和感を感じたので、涼太の親を呼んで近くの病院に連れて行ってもらった。
そしたら案の定、顎の骨にヒビが入っていたらしく、全治一ヶ月と診断されたという。
「あの時は、ほんとに最悪だったぁ・・・」
「涼太に謝ろうともしなかったな、彩音は・・・。てか、あの後涼太の親御さんに呼ばれてたけどなんかあったの?」
「あの後叱られたんだけど、『胸揉まれました』って説明したら急に態度謝られた」
「立場逆転してるなぁ・・・」
「だって、隼斗の方向いてるときも揉んでたし・・・」
「あー、そりゃダメだわ」
「もう、ほんとに最悪だったぁ」
「胸ねぇ・・・」
「隼斗?」
「気付いたこと言っていい?」
「どうぞ」
「彩音ってそこそこ胸大きいね」
「経口補水液飲む?」
「熱中症じゃないよ?そもそも今寒いし」
「どうしたの?急にセクハラ発言してきて?」
「いや、すまん。ほんとにすいませんでした」
「ふーん・・・、まぁいっか。別に怒ってないし」
「あ、そうなの?」
「うん。なんか怒るよりもビックリしちゃったからかな」
「なるほどねぇ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「隼斗」
「ん?」
「美空ちゃんが涼太以外の男と付き合うこと無いかもしれないってほんと?」
「かもしれないって話だけどね。いやもう十中八九ありえる」
「ふーん・・・」
会合で気付いたが、あの子マジで涼太に深い一目惚れしてるからなぁ。
仮に付き合ったとて、決して離してはくれないだろうしな。
そんな事を考えながら、バイトの終わる時間を2人で待っていた。
EPISODE40です。
今回は書きたかったシーンを書けたので、満足しております。
そんな今週紹介するのは、「フォビドゥン」の「スルー・アイズ・オブ・グラス」です。
聴きどころは、ギターサウンドが聴いていくうちにどんどんと緊張感が生まれてくるという曲です。
ぜひ、聴いてみてください。
ではまた、EPISODE41でお会いしましょう。




