EPISODE,35:幻とおしおき
「そ、それまで!」
彩音から試合終了の合図が出され、二人は試合開始時の立ち位置に戻る。
一条寺さんの攻勢の動きを封じるかの如く技を決めたのだが・・・。
「ど、どういうこと?」
「えっと・・・、二人共。これどっちの勝ちなの?」
二人は混乱していた。
無理もない、この技は多分柔道ガチ勢でも知っている人はごく一部であろう。
それだけ知られていない技を俺はかけた。
だから2人が混乱しているのもよく分かる。
「あの・・・、二人共?結局これってどっちの勝ちなの?」
「あぁ、それは─」
「完敗だわ・・・」
「「えっ?」」
「私の完全敗北だわ。まさか、あの技をかけてくるなんて。人生で初めてよ・・・」
「あの・・・、隼斗。今の技って?」
「あぁ、『山嵐』のこと?」
「『山嵐』?」
山嵐とは、一部では『幻の技』と呼ばれている大技。
相手の右袖と、左襟をつかみ、同じ方向に投げ飛ばすという技。
非常に豪快な技であると同時に、難易度も高い技となっている。
その理由としては、ルールの中に秘密がある。
柔道のルールに、「相手の襟、および袖を長く掴むと反則」というルールが存在する。
これが理由で、この『山嵐』は、短い瞬間に掴んで投げ飛ばすのが難しく、『幻の技』と言われている。
「まさか独学で柔道やってる人にこんな大技かけられるとは思わなかった・・・」
「「あっ!」」
ふらついて倒れかけた一条寺さんを彩音と支えた。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫。それより隼斗くん?」
「はい」
「これで、あなたの強さというものを私に証明できたわ。だから約束通りにするわ」
「よかったー、ありがとうございます。てか、デマって自分から認めてたんですね」
・・・と言いたかったが、言ったら言ったで面倒なことになりそうなので、普通に「ありがとうございます」とだけ言い、心にしまった。
「それにしても・・・」
「ん?どうかしたの?」
「いや、なんで俺の強さ確かめるだけなのに、俺たちの同居解消をしてこようとしていたんですか?」
改めて考えても変だ。
一個人の能力を確かめるのに、その人の生活に変化をもたらすのは必要ないはないはず。
「だって・・・」
「はい」
「あなたが彩音ちゃんと一緒にいるのがなんか嫌だったのよ!」
「何だその理由!?」
え?どゆこと?
いきなり意味のわからないことを言われた俺は混乱した。
「あー、要するに嫁入り前の少女が自分の知らない男と毎晩一夜の過ちを犯していないか不安だったってこと?」
「そう!わかってくれて嬉しいわ!」
「どっちみち私情じゃないですか!?」
「だって・・・、あなたが来てから、よくあの子笑顔になること多くなったのよ?その理由があなただって気づいたときにいつか排除しようと思ってたのよ!」
「もうそれ嫉妬じゃないですか!?」
理由が想像以上に私情混じりだったので俺は呆れた。
「まぁ、この人結構過保護だからね。しょうがないよ」
「本当に心広いよね、彩音って」
「そう?ありがと」
「やっぱり・・・」
「ん?」
「やっぱりあなた達付き合ってるわよね!?」
「「付き合ってません!!」」
「それにしたって仲良すぎよ!」
確かによくハモるよなぁ。
てかハモるからって、仲良し認定されてもなぁ。
そんな事を考えながら、道場をあとにした。
「さて・・・、どうしょうかね?」
先刻、俺は彩音を叱るのを後回しにし、帰ってから叱ろうと考えていたのだが・・・。
「やっぱやめた」
「・・・え?いいの?」
「なんか面倒だし。そもそも罰が思い浮かばん」
「そっか・・・」
「あ、でも・・・」
「ん?」
「これだけやっとこ」
「えっ?」
俺は彩音の頭をポンポンした。
「・・・なんで?」
「さぁな?」
言えるわけ無い。
『キョトン?』としてる顔が見たくてやっただけだと、言えるわけ無かった。
・・・にしても、可愛いな、本当に。
EPISODE35です。
柔道の世界は奥深いと言うのかは知りませんが、私はあまりスポーツ観戦とかは興味ないんですよね〜。(じゃあなんでこの話書いたんだってツッコミをいれてくれた人はツッコミ上手だと思います。多分ですけどね)
そんな中、今週はこの作品に初めて評価ポイントがつけられ、めちゃくちゃ喜んだことを覚えています。
ちょっと長くなってしまったので、今週の洋楽ヘビメタ解説はお休みにします。(すいません)
では、EPISODE36でお会いしましょう。




