EPISODE,34:勝負の行方は・・・/特別読み切り 永遠の漂流者
※今回は読み切りの小説を最後の方に収録してありますが、これは「俺バレ」とは関係ないのでご了承ください。
一条寺さん曰く、実家は道場だと言う。
道場とはいえ、大型で多くの門下生を率いているようなものではなく、小さい規模の道場である。
「ごめんね。私が浅はかなこと言ったせいで」
「いや、それは置いとくとしてさ、そもそもなんであんなこと言ったの?」
「・・・・・・自慢の人って言いたかったから・・・・・・」
「え?」
「ううん!せっかくの機会だし、どっちが強いのか知りたくなって!」
「すげぇ自分勝手な理由だな!」
なんか小声でなんか言ってたがそれよりも、おれはこじんの疑問に巻き込まれたってことかよ・・・。
「ほんとにごめん!」
「はぁ・・・、説教は後回しにしておくとして、今は目の前の問題解決しねぇとな」
「うん・・・、わかった」
今すぐにでも叱りたいところだが、今はそういう場合ではない。
ネクラ荘の警備員である一条寺葉月さんから柔道対決を申込まれた。
しかも俺が負けたら、彩音との同居解消を促すデマを大家さん(彩音の伯父さん)に吹き込むと言い出したので、ここは何としても勝たねばならない。
そのために俺たちは、道場についたところだ。
「おはようございまーす」
「おう、来たね」
「ちなみに私もいます」
「うん、いらっしゃい」
道場に入った俺は、これからの動きについて聞いた。
「えっと、まず柔道着着た方がいいですよね?」
「そうだ。自分の柔道着はある?」
「えぇ、ちゃんとここに」
「よかった。もしなかったら一発不合格にしてたわ」
「だいぶ理不尽っすね・・・」
「世の中は理不尽なことだらけなのよ」
「覚えときます」
そんな会話を交わしたあと、すぐに着替えて向かった。
「これでよしっと──」
「隼斗・・・」
「彩音?どした?」
「めっちゃ似合ってる」
「あ、そう?ありがと」
「こらこら、イチャイチャしてないで早速始めるよ」
「イチャついてねぇけどなぁ・・・」
「・・・・・・」
「ん?」
急に無言で柔道着の袖を引っ張った彩音は、俺に耳打ちしてきた。
「・・・隼斗」
「ん?」
「頑張ってね」
「あぁ、頑張るよ。ありがと」
彼女からの応援をもらい、俺は葉月さんのところへと向かった。
勝負の説明を聞く。
「ルールは簡単。一本先取で勝敗を決めるよ。どちらかが取った時点で終了。いいね?」
「はい!」
俺は構えを取り、体制を整えた。
「合図お願いね、彩音ちゃん」
「はーい」
どうやら、合図は彩音がするらしい。
いよいよ始まる────。
「・・・始め!」
始まってすぐに、一条寺さんから攻めの動きが見えた。
でも、
「フッ!」
「っ!?」
その動きを封じるかの如く、戦いは幕を下ろした。
特別読み切り『永遠の漂流者』
もう長いこと、俺は海に漂っていた。
正確には、今いるこの丸太舟の上で。
もういつだったかも忘れてしまったが、乗っていた観光客船が沈没し、海に放り投げられた。
そして気づいたときには、この丸太舟の上に乗っていた。
この舟には見覚えどころか、自分が作った覚えもない。
陸地を目指そうにも、眼の前は何も見えない。
そう、自分の眼の前は真っ暗だ。
暗闇の中、明かりの一つも見えない中で俺は陸地を探していた。
この舟に乗ったときから気になっていたことがあった。
食欲がない。
普通、何日も食べ物を摂らないと腹が減り続け、最悪死ぬことは必然的だ。
だが、この丸太舟から海面を見ても、魚の類は見当たらない。
それどころか、その影すら見えない。
そもそも、食欲がない時点で魚を探す気力もない。
そんな日々に、俺はうんざりした。
いい加減にこの悪夢のような漂流を続けたくないと願う俺は、とうとう海に身を投げた。
ゆっくりと沈みゆく身体。
段々と無くなっていく意識。
苦しいはずなのに、どこか快楽を感じる。
どこまで沈んでいくのだろう?
この俺の身体は、俺の意識は・・・・・・・・・・
「ハッ!?」
「あ!?先生!患者さんが目を覚ましました!!」
「おぉ!奇跡だ!!」
どうやら俺は今まで眠っていたらしい。
でも・・・、自分が一体何者なのか、一切の記憶が失われていた。
だが、不思議とはっきりとした感情が出てこなかった。
あぁ、そうか───
俺は、あの海で己のすべてを投げ捨てたらしいな。
その代償として、今俺はここに生きているのだろう。
廃人と化して。
これから俺はどうなるのだろう?
この永遠に思い出されるはずのない記憶を探しながら、俺はまた漂流者として生きていくのだろう。
EPISODE34でございます。
一瞬にして相手を倒した隼斗すごいですね。
そして今回は特別読み切りとして、「永遠の漂流者」を収録しましたが、いかがでしたでしょうか?
実はこれある曲から構想のヒントを得て書いたやつですが。
その曲というのがデス・エンジェルの「seemingly endress time」という曲でこの曲の歌詞からヒントを得たのですが、この曲がお気に入りの一つというわけで参考にしました。
楽しんでいただけたら幸いです。
ではまた、EPISODE35でお会いしましょう。




