EPISODE,13:いくら完璧な紳士といえどもハプニングは起きるものである
彩音さんがまさかの「アパート暮らし」だったという事実。そして、「女子の家に泊まる」という滅多にないイベントにドキドキしていた俺は、危うく忘れかけていたことを思い出した。
「ところで、今日家に親いるでしょ?」
「あ・・・えーっと・・・その・・・」
「?・・・あれ?もしかして・・・」
「えへへ・・・今日、二人っきりです」
「あー・・・マジか、フラグが・・・」
建ってしまった。
俺みたいな健全男子高校生だからといって、普段仲のいいだけの女子と一晩共に
すると思うと・・・。
「今夜、俺の理性が保てる自信がない・・・」
「そんなに自信ないの?」
「まあ、万が一って考えても・・・ねぇ」
「まあ、安心して。もし私を襲おうものなら、優しく殺めてあげるね・・・」
「お、おう・・・お手柔らかにな」
そういえば忘れてた。
彩音さん、小学生のとき、柔道の師範を投げ飛ばしてたって言ってたもんな。
「じゃあ、行こっか。私の家」
「おう、今晩よろしくな」
「・・・なんか・・・別の意味に聞こえたのって私だけ?」
「気のせいだと思うよ・・・」
何変なこと想像してんだ?
と、言いそうになったが。
なにか嫌な予感・・・というよりも、
「悪寒を超えた何か」を感じた。
あー、なんて言ったらいいんだ・・・
これ?
「『雪崩』かな?」
「あ!それだよ、それ!!・・・っていうか、彩音さん今、俺の心読んだ?」
「知らなーい」
「えぇ・・・」
読んだな。
完全に読んだだろ・・・。
まあ、とりあえずさっきのことも丸々含めて、言わんでおこう、一応。
・・・いや、絶対に口から出せねえよ、これ。
「というわけで、私の家へようこそー」
俺が家の中に入った途端、彩音さんのノリが少し良くなって、そんなことを言ってきた。
「なんか、嬉しそうだな」
「だって、私。他人を招待するの初めてだから」
「あー、それで楽しみになってると」
「うん。それに私、結構楽しみなんだよねえ」
「そっか」
「うん」
彩音さんはまるで、無邪気にはしゃぐ子供に見えた。
そんな部屋の中はというと、風呂、トイレ付き。
西日が入らない設計になっている窓の配置。(西日、厄介だもんな)
それに・・・家族との仲の良さを感じる、ちょっと狭い部屋は、温かみを感じた。
俺はその温かみに眩しさを感じた。
それは、「光」とも異なるものだった。
でも、その光であって光じゃないその
「輝き」は、まるで俺を優しく包んでくれているようだった。
なんか・・・いいな・・・こういうの
「え?ちょっと!?」
「あ・・・あれ?なんで・・・」
俺はその温かみに涙を流していた。
自分の暮らしている場所に悲観しているからじゃない。
この温かみが一生無くならないでほしい
、そんな思いが溢れた。
泣くほどなんだな・・・。
「あ・・・」
「よしよし。うふふっ」
頭・・・撫でられちゃったよ。
ああ、すごい温かいよ・・・。
人の手って、本当はこんなに温かいんだな。
頭を撫でられたあと。
俺は夕食の準備をすることになった。
しかし・・・
「うーん、どうしよう・・・」
「彩音さん、どうかしたの?」
「ねぇ、隼斗さんって料理できる?」
「え?ああ、できるよ」
「ちょっと・・・手伝ってくれる?」
「うん、わかった。メインの食材って何?」
「これなんだけど・・・」
そう言って取り出したのは、「ひき肉」
だった。
「ひき肉ねぇ、・・・ってもうアレしか
思い浮かばないな」
「あれって?」
「ハンバーグ」
「え?作れるの?」
「一応作れるけど、それでいいか?」
「うん、いいよ。じゃあ、作ろっか」
そう言って始まったハンバーグ作りなのだが、共同作業が苦手な俺にとっては、正直不安だったのだが、彩音さんの的確なサポートのおかげで、思ったよりも早く作り終えることができた。
(ちなみに、ハンバーグのソースはトマトソースになった。というのも、お互いの意見が一致しての結果だった。ほんとによかった、すんなり決まって)
「んーー!おいしいー!」
「よかった、喜んでもらえて。それにしても、久しぶりに作ったけど、上手くできてよかった。ん、味も良いしな」
「ウソでしょ・・・。その事実に似合わないぐらい美味しい・・・」
「そうか?まあ、上手くできたことに感謝だな」
「だね、上手く作ってくれたことにもね」
「ありがとな」
「ん」
自分の作った料理が他の人を幸せにできる。
そう考えてしまって、嬉しくて。
その時ちょっと泣きそうになったけど、こらえたことは内緒にしておこう。
その後、風呂上がりの、しかもバスタオル一枚姿の彩音さんと遭遇し、互いに陳謝するハメになってしまった。
「本当にすいませんでした!!」
「いや・・・そもそも私のせいだから・・・」
・・・とまあ、そんなこんなで収まったことは、ほんとにありがたいと思っている。
(ん?もっと『エッ!?』があって欲しかったって?いや、実は彩音さんと遭遇したとき、彼女が慌てた拍子でバスタオルで隠してた『たわわ』が露わになってしまったことだけ暴露しておこう)
それにしても、未だに疑問に思うことがある。
それは、「なぜ、家族が伯父のアパートに住んでいるのか?」ということ。
理由は特にないが、自分の直感がそう言っている。
ただそれだけだ。
一応気になったので聞こうとしたその時、そこで新たな問題が発生してしまった。
というわけで、その問題の対処が済んだら聞くとしよう。
だが、そんな彼女は、俺よりも暗い過去を抱えていたことは、このときの俺はまだ知らない。
EPISODE13です。
いつも読んでくれている方、ブックマークしてくれた方々に感謝の限りございます。
次回予告をするなら、「彩音さんの罪」が
明らかになります。
(隼斗の料理スキルで人が喜ぶ、これ結構自分の中のお気に入りの一つです)
では、EPISODE14でお会いしましょう。




