EPISODE,12:とある二人は何色に染まってる?
その日、帰りの電車はいつもより一本遅らせて乗った。
理由はただ一つ。
それは、隼斗の過去が打ち明けられた後、俺は「過去とこの先の未来に対する不安」による影響で泣いた。
それを見て何を思ったのか、彩音さんは俺を優しく抱きしめた。
お互いにぬくもりを感じあった後。
ただ、ここからが問題だった。
何にせ、お互いの感情を隠さず、そのままの気持ちで身体が動いてしまったというわけで・・・。
我に返ったあと、
「今の・・・誰にも見られてなかったよね・・・?」
という感じになり、さっきのことに対して「不安」というよりも「恥ずかしさ」の方が強かった。
そんな二人は、いつもは別々の席に座っているが、今日は電車の中で仲良く隣同士で座っていた。
しかし、お互いに顔を赤く染め、相手の顔を確認できない・・・というか、確認しづらい空気になっていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
気まずい空気の中、最初に口を開いた隼斗は
「「あっ・・・あの!!」」
((あ・・・・・・・・・))
ハモってしまった・・・・・・・・・。
こんなことになってしまったせいで、
また無言の気まずい空気が生まれてしまったのは、言うまでもない・・・。
そんな沈黙を破るように、今度は彩音さんが口を開いた。
「あの!あ・・・その・・・さっきは・・・えっと・・・ごめんね?」
「いや・・・その・・・彩音さんが謝ることじゃないって」
「それさっき私も隼斗さんにも言ったよ」
「あ・・・」
「ふふっ」
「あははっ」
あー、バカバカしい・・・。
でも、いつの間にかこんなバカなことで笑い会える仲になれて嬉しい。
そう思う自分がいた。
「それにしてもありがとな。その、泊めてもらっちゃって」
「いいよ。というか、あんま自分一人で抱え込んじゃだめだよ。愛情をもらえない家庭って居心地悪いどころじゃ済まないからね」
「そうだな」
それにしても不思議だ。
俺の親友である涼太よりも付き合い(友達付き合いな)は短い。
それなのに、その涼太以上に信頼できて、絆が深められていることに俺は驚いていた。
そんなこんなで駅に着いた。
しかし今日、俺は彩音さん、もとい
「女子の家にお泊まりをする」という、
人生で一回はあるか無いかのイベントがある。
少しどころじゃないぐらい、ドキドキしているのは、言うまでもないことだ。
「じゃあ、ここからは私が案内するね」
「わかった、よろしくな」
「うん」
彩音さん曰く、いつも自転車でこの駅に来ているという。
「いつもどれぐらい掛けて着くの?」
「んー・・・自転車に乗ってここ来ると片道で二十分ぐらいだね。歩いてここに来たことはないけど。」
結構時間掛かるな・・・。
自転車で二十分掛かるとして、歩いていくとなるとどのくらい掛かるんだ?
「あの、歩いていける距離だよね?」
「行けると思うよ」
「ならいいけど・・・」
時間がなるべく掛からないことを祈ろう・・・
三十分後
「長いな・・・」
「大丈夫?」
「大丈夫だけど・・・めっちゃ遠くね?」
「そう?もう慣れちゃったからわかんない」
「マジか。普段自転車乗ってる人って、慣れるの早いのかな?」
「わかんない。というか、隼斗さんって
家からいつも何分ぐらいで着くの?」
「歩いて十分もしなかったと思うけど」
「羨ましい・・・」
「まあ、家から近いしな。ってそういえば、俺の家のある方角とは反対方向にあったんだな」
「え?そうなの?まあ、ここら辺あんまり詳しくないからなぁ」
「そうなんだ」
「うん。あ、着いたよ」
「やっとか・・・」
「ここ、私の住んでる家」
「え?ここ?」
彩音さんが示した先を見て驚いた。
まさかの「アパート暮らし」だった。
ここは住宅街だからというか、そもそも
「アパートがある」という事実の方に驚いていた。
何にせ、ここら辺に住んでいる人って、みんなマイホーム持ちの人だらけだからなぁ。(借家ぐらしの人もここらじゃあんまりいないしなぁ)
更に驚いたのが、そのアパートの名前なのだが
「ね・・・『ネクラ荘』?」
なんだろう・・・インパクトありすぎないか?ここ。
というか、こんなにインパクトのある名前のアパートなのに、知らなかったな。
(俺がこの街に引っ越してきたのは小学3年の頃だから、大体七,八年ぐらいここに住んでいるのか、俺は。そんな俺でもここは知らなかったな)
「まあ・・・やっぱりびっくりするよね」
「なんか由来とかあるの?名前の」
「あぁ、伯父さん曰く・・・」
「ん?伯父さん?」
「あれ?言ってなかったっけ?ここの大家さん、私の伯父さんなの」
「ほぉー・・・・・・って、え?そうなの!?」
彩音さんの伯父さんのネーミングセンス・・・何をどう考えたらこうなったんだろう?
というか、なんで両親と一緒に暮らしているはずなのに、伯父さんのアパートで暮らしているんだ?
そう疑問に思ったのだが、「お泊りin女子の家」にウキウキして、そんなことを考えることが出来なかった俺はこのあと、とんでもない事実を知るのは後で話すことにしよう。
EPISODE12でございます。
いつも、読んでくれている方、そしてブックマークしてくれた方には感謝を申し上げます。
女子から「お泊りしよ?」と言った相手が、自分の意中の相手だったらと考えた人もいるかもしれませんね。
ここで急ですがお知らせです。
「小説を読もう」にて、「義妹の在り方に決まりをつけて欲しい」が連載中です。三部作連載なのですが、
よかったらそちらも読んでいただけると嬉しいです。
(『羨ましい』って検索すると出てきます)
では、EPISODE13でお会いしましょう。




