プロローグ
まず最初にこの小説は、フィクションであると同時に、
初めての長編小説なので、いろいろ斬新なところもあると思います。
いろいろと考えさせられるところもあると思いますが、お読みいただけると幸いです。
「正太、ご飯だぞー」
「はーい。ねえお母さん、今日の夕飯なに?」
「今日は正太の好きな『豚の生姜焼き』だよ」
「っしゃー!好物キター!」
「はいはい。ほら、お父さんも食べましょう」
「よし、食べるか」
「うん!」
「「「いただきまーす」」」
温かみのある家族の風景、子供の好物、幸せそうな家庭。
これが当たり前の家族なんだろうか。
でも俺は、この家族が仲の良い家族だなんて思っていない。
正太は俺の弟。
この家族には俺を含む二人の子供がいる。
そう、この家族は、三人ではない、四人だ。
俺は食事中のダイニングに入る。
「ただいま」
「「「・・・・・・」」」
三人の箸が止まる。
そして、最初に口を開いた母親は
「あら?隼人、なんで帰ってきたの?」
自分の息子に言い放ったのは、母親としては最低な一言だった。
続けて母は、
「もう帰ってこなくてよかったのに」
またしても、母は息子に対し、冷たく、最悪な言葉を口にした。
父はイスから立ち上がり、俺に向かって叫んだ。
「隼人、ここはもうお前の家じゃないんだよ!お前はいつになったら出ていくんだ!どれだけ私たち家族を滅茶苦茶にすれば気が済むんだ!もういい加減にしてくれ・・・。お前は普通の人から見れば普通の人だ、一般人だ。だが、私たちにとっては害虫なんだよ!何度も何度も追い払っても何度も入り込んでくるゴミムシがっ!なんでこのいえにいるんだよ・・・。もう・・・いっそのこと殺してしまいたいくらいだっ・・・」
父も母も、「親失格」の称号を与えたいくらいの発言・・・いや、罵声を俺に浴びせた。
弟はただ静かに食事を再開していた。
でも、その兄を見る目は、人を見る目ではなく、「虫を見る目」をしていた。
いや、もしくはそれ以下の目かもしれない。
「俺はあんたらのことは正直、どうでもいいと思っている。
好き勝手に正太を可愛がってればいっ!?」
「私の息子の名前を言わないで汚らわしい!」
そういって母は、俺の顔を殴った。
「ああ・・・あの虫を触ってしまったわ・・・。
もう最悪、私は人として生きられるのかしら…」
実の息子の顔を殴るとは・・・。
本当に親としてじゃなくて、人間として失格だよなあ・・・。
「まあいい・・・。近いうちに出ていくよ。
このむさくるしい悪魔の家からなあ!」
俺は、自分の親に似たような罵声を浴びせた。
・・・「親子は似る」って、いうもんなあ・・・。
そんなことを考えながら自分の部屋へと向かった。
これが、俺、橋沢隼斗の家庭、誰も俺を家族として認めていない。
そう、あの日から俺は、「家族の一員」ではなく、
「他人」もしくは、「人以下のゴミムシ」のように扱われている。
このことは、近所、学校、バイト先の人間には知られていない。
「・・・・・・・」
部屋についたとたん、ある事が脳裏に浮かぶ。
(いいかげん、家出しねえと・・・。
いくらメンタル強めの俺でも、何年も罵声を浴び続けたら、さすがに、身体、持たねえしなあ・・・)