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彼女ーミサキーがいた日々  作者: itako8
第二章五節 カズの告白 ~カズの告白~
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第7話 告白の時

1996年9月16日(月)


俺は今、図書室の中で清水さんが来るのを待っている。

図書室の前ではトモサカが清水さんだけを通すことになっていた。



今日は清水さんへの告白の日。

昼休みの図書室の前には俺、トモサカ、丹波しかいなかった。

新人戦前にこんなことをするのもどうかと思ったが……。

けど、新人戦とは違って

先延ばしにしての後悔をしたくなかった。


「図書室は閉めたし……。図書室整理中の看板も出した」

丹波が図書室の前に置いた看板をポンポンと叩いた。


「それと図書室の整理。告白終わったら手伝ってもらうからな」

実際に整理もするらしい。

なんでも本に付けたナンバリング通りに

棚に保管されているかどうか確認するとのことだ。

そのタイミングを見計らっての告白となった。


「アカリと図書委員さんもそれぞれ、別方向に歩いているのは確認してる」

とピッチ(PHS)をポケットにしまいながら、トモサカが説明してくれた。

別方向とは音楽準備室と視聴覚室の方向。

トモサカは、ホントに顔が広い。

ニセの告白による釣り出しだけで良い気はするが……。

あの二人の事だ。

念には念を入れて確認したほうがいいだろう。


「俺は先に図書室の中に入って、清水さんを待つよ」


「バーベキュー用意して待ってるぜ」

丹波から声を掛けられる。

……。

柔道男の一件を知ってるんだろう。


「これからってところなんだから勘弁してくれよ

つーか。ま。……なんか胸がいっぱい、いっぱいで

大声出したい気分だけどな」

試合前の高揚した感じとは別だけど似てる感じがした。

だけど試合とは別で、いつまでたっても緊張が解けてくれそうにない。


「カラオケに行って、スピッツでも歌うかい?」

俺の緊張に気づいてか、トモサカが軽口を叩いた。


「ははっ。歌いながら空でも飛んでやるよ」

ほんと。そうしたい気分だ。

そしてわずかだけど緊張がほぐれた。


「それと失敗したら例の件、頼むわ」


トモサカには告白後に俺と清水さんの仲が気まずくなったら

俺の代わりに勉強会に参加して欲しいと頼んでいた。

できれば振られたとしても勉強会を参加はしたいのだが……。


でもどうなるか分からない……。


ただそうなると女三人に遠藤が一人だけになってしまう。

ちょっとバランスが悪い。

代役がいると思った。

トモサカだったら何とかしてくれる気がした。


「……分かったよ。まぁ僕も忙しいから毎日は無理だよ」

トモサカがヤレヤレと言った顔をしている。


「海でバーベキューだな!! 任せろ!! けど毎日するのか?」

丹波が完璧に誤解していた。


「毎日、肉は勘弁してくれ」

たまに食うから上手いんだよ。ああいうのは。


「あ。もう時間だぜ。それじゃ鍵を開けてと。中でお姫様が来るの待っとけよ。カズ」

丹波が図書室の扉を開ける。


「あぁ。でも俺は王子様ってガラじゃないがな」

俺はその軽口に合わせて答える。


「それと……。有難う。二人とも」

二人に短く感謝の言葉を口にし、

丹波とトモサカが見守る中、俺は図書室の中に入っていった。

後ろでカチャリという鍵を掛けた音がした。


アカリが聞いたら怒るかもしれないが

"吊り橋効果"とやらは使いたくなかった。

だから清水さんを図書室の中で待たせて

俺が告白に出向くという形では無く、

自分が先に図書室に入り、清水さんを待つ形にした。

自分の事を好きでもない女性を無理に好きにさせるみたいで、

なんだかあのやり方は好きになれなかった。

俺は出来るだけフェアに告白したかった。


そしてトモサカは俺がそんなことを言うというところまで予想してた。


「カズらしいよ……」

トモサカはそう言った。

俺ってつくづく分かり易いのかね……。


昼休みの図書室。周りにあるのは大量の本、そして静寂。


ただそれだけ。


うー。緊張が……。


この静謐な空間と


いつもと比べてやたらうるさい時計の音に耐えれそうになかった。


昨日も、自宅で清水さんの事を考えて


布団を抱きかかえてゴロゴロと転がり


文字通り悶絶していた。


でも図書館では当たり前だが、そんなことは出来無い。


緊張が半端ない……。


……。清水さんは来ると思う。いや来るはずだ。


すっぽかすような子じゃ無いと思う。うん。無いはず。無いはず。……。


不安を押し込めるように頷く。


顔を上げて時計を見る。約束の時間の1分前。


あー。緊張が止まらん。手が震えてる。


未だ対面もしてないんだぞ。


どーすんだ? これ。


手を心臓に当てる。


試合より緊張してるぞ。これ。


えーと。うーんと。


そうそう。


試合と同じ。


深呼吸。深呼吸。


必死で吸ってー。吐いてーをゆっくり繰り返す。


用意していた"告白の言葉"と


最後になるかもしれないから、"伝えたい言葉"を反復していた。


そして図書室の扉がゆっくりと開いた。


そしていつもより白い顔をした清水さんが中に入ってきて


次いで、かちゃりと鍵が閉まる音が聞こえた。

BGM 「空も飛べるはず」スピッツ

https://www.youtube.com/watch?v=h-kQw4JqCHE 

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