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彼女ーミサキーがいた日々  作者: itako8
第二章五節 カズの告白 ~カズの告白~
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第6話 博愛主義者

1996年9月9日(月)


約束の月曜が来た。


「"木を隠すなら森の中、告白を隠すなら告白の中"という作戦でいこう」

缶コーヒーをすすりながら、トモサカがこう言い出した。

缶コーヒーは俺からの相談料だ。


昼休みに校庭のベンチに座って昼ご飯を食べながら俺たちは話をしている。

周囲にアカリと図書委員さんの姿が無いことは確認済みで、

勉強会は少し遅刻すると伝えている。


しかしトモサカの言ってる意味が分からない。


「どうするんだ?」


「つまりは……だ。君が清水さんと告白しているタイミングと時を同じくして

アカリと図書委員さんも偽の告白で呼び出すというものだよ」



はぁ?



「そんなことできんのかよ?」


「ラブレターか何か……。

まぁ何でもいいよ。

それぞれ音楽準備室と視聴覚室に呼び出そうと思ってる」


「いや呼び出しに応じるかとか? その音楽準備室とかの鍵はどうするんだ?」


「鍵は必要ない。どうせ偽の告白だ」


「それに音楽準備室と視聴覚室を選んだのは別の理由だ。

あの二人を図書室から出来るだけ遠くに誘導する為と監視しやすくする為だよ」


音楽準備室と視聴覚室は図書室から遠く。正反対の位置にある。

どちらも音がでる教室だから図書室からは遠い位置にある。

なるたけ図書室からあの二人を離し、かつ監視する為の配慮らしい。


「偽の告白に応じなかったらどうする?」

気がかりな部分をトモサカに問う。


「その心配は無い。告白の呼び出しには誠実に応えるタイプだよ。あの二人は

大分、辟易としているみたいだけどね」

そういや。アカリは面と向かって告白を受けるタイプだ。

告白をしっかりは受けるタイプなんだろう。

しかしその告白相手に

辛辣な罵詈雑言と平手打ちを浴びせるのがアカリなのだが……。


「アカリはそうだけど。図書委員さんは?」


「とある伝手で確認してる。彼女も誠実に応じるタイプだ」


トモサカは友人や伝手が多い。

ここは信用するしかないか……。


「カズは図書室を避けてるみたいだけど、告白は図書室がいいんじゃないか?」


「うぇ。また図書室かよ」


「遠藤君と高宮さんの告白のセッティングは君がしたんだろ。

それに清水さんも立ち会っている。

図書館に呼び出せば、彼女も何が始まるかは何となく分かるし、

心の準備もできるだろう」



……!



そういう見方もあるか……。

告白相手に心の準備も出来ないまま

いきなり告白するのは何だかな……。

出来れば避けたい…と俺も思う。


図書室に一人で呼び出せば……。

何が起こるかは清水さんも予想がつくはずだ。


「けどさ。鍵はどうすんだよ?」

図書委員さんには頼めない。


「丹波が図書委員だ。貸してくれる。

未だ詳細は伏せてはいるんだが……、

貸してくれると言質は取っている」


「丹波かー」

確か……丹波は図書委員だ。

しかしちょっとおバカなんだよなー。

大丈夫か?

ま。他に頼るところが無ければ

致し方無い。


「僕も口が軽い奴だとは思っているけど。他に適当な人がいないんだ」

トモサカも丹波には思うところがあるようだ。

まぁな。中学の時も色々あったしな。


だが、偽の告白であの二人をつり出して。

その間に俺が図書室で清水さんと二人きりになり告白する。という計画か……。

……ふむ。悪くない。


「その告白の日時に清水さんを呼ばないとならないんだけど……」


「なんだったら。それは僕がしてもいい。

同じクラスだからね。言付けをするチャンスはいくらでもある」

そういや。二人とも同じクラスの学級委員だったな。


いや。素直にいい作戦だと思う。

思わず、ガシッとトモサカの両手を掴んできた。


「とりあえず。手を放そうかカズ。

遠くにいる女子がこちらをみて何やらヒソヒソ話をしてるから」


確かに遠めから女子が何やらこちらを見ている。


「おおっと。すまねぇ」


ん。何かこんなヤリトリが前にあった気がするぞ。

いつだったか忘れたけど。


「あのさ。もうちょっと聞いていいか。トモサカ」


「何?」


「友人から告白されるってさ。

どんなもん?」


「先週、話したばかりじゃないか……」

トモサカが苦笑する


「あ。だからさ。

恋愛対象として見れないけど

友人として関係性は続けたいな。

って思ってる人からの告白だったら

どうなんかなって?」


「……。具体的だね」


「やっぱ。そういうのってしんどいもん」


「……。そうだね。どうあっても僕は相手の望んだようには出来ないし。

僕としても告白されなければ

今まで通りの関係でいれた人もいたからね」

つまり今まで通りの関係で入れなくなった人もいた訳か……。


「相手をさ。傷つけないように告白するって出来ねーもんかな」


「無理矢理、関係性を強要しなければ……

それでいいと思うよ

友達のままでいられる場合もある」


場合もあるか……。

いや。ま。そうなのかもな。


「出来るだけ傷付けない方法を選ぶっていうのは

人間関係を良好に保つためにも重要だと思う。

……けどね。人は生きているだけで、誰かを傷つけている生き物だから……。

誰も傷つけず、自分も傷つかずに生きるなんて

……元々無理なんだよ」

トモサカが寂しげに語っていた。

……。人は生きているだけで誰かを傷つけている生き物か……。

残念だけど、そうかもな……。


「しかしカズらしいね」


「何が?」

俺らしい? どこが?

告白するのに悩み無くってるのがだろうか……。


「自分が振られて傷つくことは考えないのかい?」

考えてたことと違っていた。


「……。

いろんな奴らに怖がられて

無視されてきたんだ。

何を今更って話だよ」


視線を合わせようとせず避ける奴等や

俺が近づくとそそくさと逃げるように立ち去る奴等。

そんな奴等ばかりだ。

あの中2の事件以来、

高校に入っても……そうだった。


「……なるほど。

自らが傷つくことは厭わない。か。

やっぱりカズらしい」

トモサカがクスリと笑う。


「そんなカッコいいもんじゃねーよ。

慣れちまっただけさ」

俺は腕を組んで頭の後ろに回す。

そう。慣れてしまっただけだった。


「……やっぱ告白を断った後って気まずくなるもんなん?

友達でいられなくなるとか……」


「……。人に依るよ。

それに周囲の人も巻き込むこともある。

そうとしか言えない」


「……ま。そうだよな」

周囲の人か……。

そこはあまり考えてなかったな。

遠藤や高宮とも気まずくなっちまうのかな?


……せっかくできた友人なんだが、なぁ。

そうなったら……嫌だなぁ。


アカリは……。

ま。アカリはいいかな?


「でもそういうケースは少ないよ。

現に、僕に友人は多くいるから」


「そりゃ。お前だからってのもあるだろ」

人付き合いの良さでいったらトモサカ以上の奴を俺は知らない。


「……。否定はしない。

人付き合いも"慣れ"や"経験"ってとこはあるし……。

でも確かに……。そうだね。

告白とかを断るのも、最初は上手くできて無かったと思うよ

経験で人のあしらいが上手くなったってことは否定しない」


「告白されて。一番しんどいってていうか

嫌なことって何だった?」


「告白されて嫌なことか……。

最初は、なんていうか告白されることは嫌でもなかったよ。

自分が好意を向けられる対象であることであることが

嬉しくもあった。

ただ、失礼な言い方だけど、

彼女達が好きな僕はあくまで僕の一面だけだと思う。

それは仕方ない。

僕だって彼女たちの一面しか知らないから。

けど。なんか……。

僕を誤解してる人が多いってことが嫌だったかな?」


「誤解?」


「皆、言うんだよ。僕の事を優しいってさ」

そういってトモサカは優し気な笑みを浮かべていた。


「そうじゃないのかよ?」


「僕のそれは……。

あくまで人間関係を円滑に保つための

テクニックだよ。

人としての優しさじゃない」


「お前が優しくなかったら、誰が優しいっていうんだよ?」

こうして友人の相談に乗っているトモサカが

優しくないっていうのは違うんじゃないかと思う。


「……アカリだよ」

トモサカが少しためらってから答えた。


「はぁーーーーーーーーー!?」


アイツが?


あのワガママ娘のアカリが?


「僕は彼女のような博愛主義者にはなれない……」

トモサカがコーヒーを一口飲み、そして遠い目をした。

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