第5話 どこでいつ告白するかそれが問題だ その2
1996年9月7日(土)
遠藤と高宮を見て
やっぱ好きな人と同じ時間を過ごすっていいんだろうな……。
と思うようになっていた。
俺も清水さんと一緒に時間を過ごしたい。
色んなことを一緒に楽しみたい。
二学期の勉強会も上手くいきそうだ。ちょうどいいタイミングだと思う。
振られるかもしれないけど……。
それでも告白しよう。そう思っていた。
けど告白しているところを誰かさんには聞かれたくないんだよなー。
特に、アカリと図書委員さんには。
性格の良いアカリの事だ。
間違いなくからかってくるだろう……。
さらにからかうだけではなく
そのネタを持ち出して間違いなく脅迫してくる可能性がある。
限定パン買ってきてとか……。
もっとマメにボール拾えとか……。とか言い出す可能性がある。
ホントどこの女王様なんだよ。あいつ……。
けど大概どっちかがいるんだよなぁ。
図書館で勉強しているときは図書委員さんが……
夕方帰宅する帰り道はアカリが……
身近にいる。
帰り道のは俺が勝手に始めたことではあるけど……。
うーん。困った。
こういう時は信頼でき、かつ頭の切れる奴に相談するのがベストか。
「そんなわけで。トモサカ。なんかいい案、無いか?」
トモサカに電話で相談することにした。
「なるほどね。愛川とその3年の図書委員がお邪魔虫というワケか……」
少しわかりづらい説明だったと思うが、トモサカは理解してくれたようだ。
柔道男の告白のセッティングもトモサカがしたようだし……。
ここは一つ頼んでみようと思う。
「しかし。図書委員の人から鍵を借りて、図書室で告白とは考えたものだね」
説明の都合上、遠藤の告白を手伝った経緯も伝えた。
「割といい案だと思うよ。
カズはやっぱり"ユニーク"だね」
トモサカは俺の事をたまに"ユニーク"という。
「そうでもねぇよ」
「確かに告白しているところを他人には見られたくないね」
「トモサカもそうなのか?」
こいつは告白を受けてばかりいる奴だ。
したことは無いらしいが……。
「周りに人がいると断りづらいからね。
断ったことで相手が周りからかわれることもあるし」
トモサカがモテるのはこういうところかもしれない。
断るにしても、相手が傷つかないように配慮する。
「やっぱ断りづらいもん?」
「前はそうだったけど、今はそうでもないかな……。
多少の気まずさはあるんだけどね」
「でも付き合う気は無いんだろ。どうすんだよ?」
「その場ではいったん保留。
その後にできるだけ二人きりの状況にして断るだけだよ。
それが出来なければ電話で断る」
何だか事務作業のようにトモサカは答えた。
「ふーん。じゃその場では保留なんだ」
「全部がそうではないけど……」
「どゆこと?」
「僕は告白してくる人に同伴者がいる場合はその場で断るようにしてる」
あー。あるあるかもね。
一人じゃ勇気が無いから友達連れてくるタイプだ。
「なんでまた?」
別にそれだけではその場で断る理由にはならんと思うが。
「保留にすると、
同伴者が気があるんじゃないかと誤解してややこしくなる。
というか、実際になった」
うん? どゆこと?
「同伴者から圧力を掛けられるんだよ。
あんないい子振るの? とか、いつまで待たせる気? とか」
うわー。そりゃ嫌だ。すげー余計なお世話だ。
「そういう子達は断っても、圧力掛けてくる子が多いし。
だからその場で断るよ」
あー。モテる奴はモテる奴で苦労してんだな。
「そうでなくても告白っていうのは自分の傷つきやすい""なま"の言葉だ。
伝えようとしている相手以外に聞かせるもんじゃない。
少なくとも僕はそう思ってる」
「そうかもな。でも。お前。その。本当に誰とも付き合う気ねーの?」
何だか自分の事より、こいつの事の方が心配になってきた。
「僕自身。今は誰とも付き合う気は無い。
ただ友達付き合いは大切だと思っている。
断る事で少し関係性にヒビのようなものが入るのは確かだけど。
でも。だからといって付き合う気は無いね」
トモサカははっきりと言う。
高一の時点でだれとも付き合う気は無いというコイツは
結構な問題抱えているとは思うのだが。
「誤解して欲しくないから言うけど。
他の人が付き合うのまで咎めるつもりはないよ。
上手くいってるカップルを見て羨ましいという気持ちが
全く無いというわけでは無いから……」
だったら。付き合えばいんじゃね。
と思うがこいつにも色々とあるんだろう。
「そういえば……。
あまり、思い出したくないけど……。
教室のカーテンにいきなりくるまれて二人きりにされて告白ってのもあった」
トモサカが思い出したくないものに触れるかのように、溜息をつきながら言う。
「マジで!?」
告白してるご本人さんから見れば、カーテンで遮断されていると思ったのかもな。
実際は周りの人間は耳をダンボにして聞いてたんだろうけど。
アカリみたいに。
「周りに人がいるのは分かっていたし……
というより周りの人間が協力してたからそうなったんだけど、
その場合は保留にした……。
勘弁してほしかったよ」
もてる奴はもてる奴で苦労があるんだなぁとシミジミ思う。
「告白してきた子をからかったり、
いじめたりする人がいなければ、
その場で断るんだけどね」
「そういう奴ら。けっこういるからな」
具体的に言うとアカリとか。
アカリとか。
アカリとか。
「個人的には直接告白した方が良いとは思うけど。
状況が状況だし。電話とか手紙……。
ラブレターが必ずしも悪いとは思わないけど……。
そっちにはしないのか?」
トモサカが尋ねてくる。
考えなかったわけでは無いのだが……。
「俺は字が汚いしな。それに国語が苦手なんだよ。
上手い文章が考えられない。
それと……やっぱり直接伝えたい」
「そうなると。アカリと図書委員さんが邪魔だと……」
そう。
アカリが邪魔。
アカリがオジャマ虫。
アカリが目の上のたんこぶ。
はんにゃーはーらーみーたーりー!
悪霊退散! アカリ退散!!
キエーーーーー!!!
霊媒師に頼んでお払いしてもらいたいよ。ホント。
ただしシャーマン遠藤はご利益が無さそうなので頼まない。
あいつは天気しか操れないしな……。
「そう。その二人が邪魔なんだよ」
トモサカの言葉に同意を示す。
「うーん。少し考えてみる。時間をくれないか。
週明けの月曜ぐらいにはとりあえずの案を出してみる」
「いいのか?」
「まぁ。友人が困ってることだし」
「だが、サッカー部には入らんぞ!」
あらかじめ断っておく。
おそらく電話口で苦笑しながらトモサカは答えた。
「わかってる。それは諦めてるよ」
とりあえずは考えてくれるみたいだ。
持つべきものは友達だなぁと思う。




