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彼女ーミサキーがいた日々  作者: itako8
第二章五節 カズの告白 ~カズの告白~
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第4話 遠藤と高宮への相談、そして頼み事

1996年9月7日(土)


部活の帰り道。

身体が重い。

練習の疲労が溜まっている。

遠藤にも追いつかれそうになっている。

向こうは、俺と違って調子を上げてきているからな。


……しょうがない。


これは自分で選んだ道だ。

そう思って空を見上げた。

雲が低くなってきていた。

秋の……新人戦が近づいていた。


遠藤、高宮と一緒にいつものコンビニに向かう。

俺にはこの二人だけに相談したいこと、

そして頼んでおきたいことがあった。


「遠藤と高宮、今日は俺の奢り。

といってもジュースぐらいだけどな。

遠藤はポカリだと思うけど、

高宮はどうする?」

ジュースは相談料だ。


「あ。うん。じゃ。遠藤君と同じので」

高宮が答える。


「いいの? 今日も僕が負けてるんだけど……」

遠藤が遠慮がちに答えた。

いつもは遠藤に奢らせているが、

流石に今日は相談と頼みごとがあるからな。


「今日は相談に乗ってもらうから、奢りだ

気にすんな」


「そうだ……。その僕たちに相談って何?」


学校の方をフッと見返す。

テニス部はまだ練習していたから清水さんとアカリが

コンビニに来るまで未だ多少時間はあると思う。


アカリと清水さんには聞かれたくなかった。


しかし……イザ相談すると恥ずかしいな。

頭をポリポリと掻いて俺は相談事をしゃべりはじめた。

「あー。ジュース買ってからにしたいけどいいかな?」



「あのさ。付き合うってどうなのかなって?」

アクエリを片手にコンビニの壁に背中と体重を掛ける。


俺は清水さんの事が"好き"なんだと思う。

付き合ってみたいという気持ちもある。

でも"付き合う"っていうのがあまり分かっていない。

遠藤と高宮をみていると

なんだか"楽しい"ことのような気はするが……。

だから直接二人に"付き合う"ってどういうことか聞いてみる事にした。


「どうって?」


「友達付き合いとなんか違うもんなのかな?」


「うーん。変わらないところもあるけど……」


「そうですね。付き合う前からよく映画の話はしてましたし…」

休み時間もよく話し込んでたな。この二人は。

あの時から映画の話してたのか……。


「じゃ。変わらんもんなの?」

友達の延長ってもんなのかね?


「そういうわけでもないんですが……」

高宮が言葉に詰まる。


「付き合うと友達のままだと見れない部分が見れているとは思うけど……」

遠藤は答えた。


何が見れたんだろう?

聞きたい気はするが流石にそこは踏み込んではいけない気がする。

付き合っている相手にだけに見せる姿ってことのような…。


「遠藤君。それちょっと恥ずかしい……」

高宮は恥ずかしいそうだ。少し顔を赤らめてる。


うーん。

気になるけど

聞かないでおこう。

遠藤にだけ後で少しだけ聞いてみるか……。


恥ずかしかったのか高宮が話題の方向性を変えてきた。

「二人で出かけるようになりましたね」


「うん。よく二人で映画見に行ってるね」


この二人とは一緒に遊びにはいってるけど

映画館には一緒に行ってない。


俺はふと気づいたが、

プールとかお祭りのお誘いはあったのだが

確か、映画へのお誘いはこの二人から無かった。




映画を見るということが……この二人にとっての"特別"なのかもしれない。




「映画館は二人で行きたから」

遠藤が答える。


「うん。そこは二人で行きたいね」

高宮も同意を示す。

息もぴったりだった。


あー。何か遠藤が羨ましくなってきた。

チクショー。見せつけやがって。


「ただ。なんだか。友達の延長みたいな部分も確かにあるんだよ」

遠藤が続ける。


「そうなの?」


「映画を見た後に二人で、今見た映画について良く話し込んだりするからね」

まぁ。そういうのは男友達同士でもあるっちゃ。あるのか?


「でもそういうのって気心知ってる相手じゃないと出来ないじゃないですか」

高宮が続ける。それもそれでその通り。


「付き合ってなかったら、あんなに話し込めないかな?」

遠藤が疑問に持つ。


「どれくらい話すんだよ?」

その言葉に二人はお互いの目を合わせて話し合う


「1時間くらいかな?」

遠藤の返答は多少疑問形だな。


「えっ。面白い映画だったら2,3時間話してるよ。

だって他の映画の話に移っちゃう時もあるし」

こいつら2,3時間も話してるのかよ。


「そうだっけ?」


「だから、この前も川さんのところに行こうって言ってて行けなくて」


「あぁ。そうだった。喫茶店で話し込んじゃったんだよね」


なんだか。俺がそっていのけの会話になってしまっている。

付き合ってる二人だからしょうがないか……。


次はどうしよう。こうしようと話し込んでる二人を

俺は羨望と嫉妬が入り混じった眼差して見ていた。


しょうがないから

意図的に会話から離れて二人が気付くのを待った。

しばしの時間は必要だったが、俺が置いてけぼりなのにどうやら気づいたみたいだ。

勉強会でもこいつら二人には割とよくあることだからなぁ。と思う。


「ご。ごめん。相談受けてたんだったよね」


「まあ。仲が良くてなによりだよ」

二人だけの世界ってやつを見せつけられた思いだ。

俺もこんなふうに清水さんと話せたらな……とそう思う。


「あの。私もごめんなさい。

他の人から見たら。どうってことが無い事なのかもしれません。

でも二人で映画を見て、そして話し合う時間が私達にとっては特別なんです」


「二人の"特別"ね……」

俺と清水さんの間にもそういうものが出来るのだろうか?


二人の間にだけの"特別"ができる……。

付き合うってそういうものなのかもな……。


「なんか。やっぱり楽しいものなんだろうな。付き合うって」

部活帰りの疲労で固まった身体を少し伸ばして、俺はそう呟いた。


その言葉に、二人とも照れながら頷いていた。


そして俺は意図的に話題を変えた。

頼みごとも伝えておかないと……。


「そういやさ。昼休みの図書室での勉強会さ。俺、結構楽しいなって思ってるんだけど、二人はどう?」


「えっ。僕も楽しいよ。勉強が楽しいってあんまり思えない方だったけど、みんなですると結構楽しく思える」


「私も楽しんでますよ。清水さんが教えるのが上手だし、遠藤君の例えも面白いから」


「そっか…」


2学期も昼休みの勉強会は順調に続いていた。

発起人は俺だけど、

実質取り仕切っているのは、アカリと清水さんだ。


ちょっと勉強会がグダグダになりそうな時は清水さんが注意する。

怠けそうになる時はアカリがゲキを入れる。

そんな感じだった。

でもみんな一様に笑顔を見せる時が確かにあった。




中学のあの事件の前のクラスのような雰囲気が確かにそこにあった。




自分の成績が悪いから

出来る奴に泣きついた形だけど

始めてよかったと思っている。


俺と遠藤の成績が上がったことを彼女は素直に喜んでくれた。


あの笑みを俺は忘れないと思う。


彼女は色んな人の勉強の仕方、

教え方がある事が参考になると言ってくれていた。


勉強会が

彼女の先生になりたいという夢を叶える為に

役に立ったというのであれば、俺としても素直に嬉しい。


例え付き合う事が出来なかったとしても

好きな人の為に出来ることを俺はしたかった。

それが僅かでも出来たんじゃないかなと思っている。


自己満足なんだと思う……。

でも好きな人の為に何かが出来んだ。

……。こんなに嬉しいことは無い。

期間にしてみればわずかに2カ月ぐらいだ。


大げさかもしれない。

でもそういう想いだった。


「あのさ。俺、清水さんに告白しようって思ってる」

その言葉に遠藤と高宮は俺を凝視した。


「……。なんとなく。鬼塚は清水さんの事が好きなのかなってことは気付いてた」

遠藤が口を開いた。


「バレバレか。

告白すると……さ。

色々と気まずくなるかもなって思ったから

だからまぁ。前もってってことだ」


「清水さんはそんな人じゃ……」

高宮が口を挟んだ。


「あ。うん。そうだと思う。

けど気を使わせたくないから。

振られても今まで通り

友達でっていうのがいいんだけど……。

そうはいかないかもしれないし。

だから勉強会も……もしかしたら」


もし振られたら

俺と清水さん…とは

一緒にいる事が気まずくなる……かもしれない。

そして勉強会でもそうなってしまうかもしれない。


「まっ。振られてもさ。

清水さんの事だから、

友達のままでいましょうって感じになるとは思うんだ。

だけど、一緒にいて気まずくなるのは嫌なんだよ。

だから勉強会は……。

最悪は……俺だけが抜けるっていうオチがいいんだ。

けど、まぁどうなるか分かんねぇし」


あの勉強会は俺も好きだった。

だから俺がいなくなってもあの勉強会を続けて欲しい、そう思っていた。


「だから出来れば、俺が抜けることになってもも気にせず、

勉強会続けてくれよ」

二人は黙って俺の言葉を受け止めていた。




彼女が教師としての予行演習ができるあの場を

そのままにして欲しいと俺は願っていた。




「それと俺が、この話をしてたこと清水さんとアカリには内緒な!

なんていうのかな…。

勉強会を餌にして、無理矢理清水さんと付き合いたいわけじゃないから…

俺、そういうの嫌だからな……」


勉強会とかそういうのを

付き合うためのネタにはしたくない。

だから今日ここで二人に話したことも、清水さんとアカリには伝えて欲しくなかった。

ま。アカリに対して言わないのは

アイツがお邪魔虫であるからなのだが……。


「……。鬼塚君は人の事気にしすぎですよ。もっと自分本位で良いと思いますよ」

高宮がそう言ってくれた。


「うん。鬼塚って意外と気を使う奴なんだよな」

遠藤も続く。


「"意外"とって言葉は余計なんだよ!遠藤」

遠藤の首を右手でロックして、その頭を軽く小突いた。

俺は二人に気遣って欲しくなかったから、務めて明るく振る舞っていた。

そして遠藤といつものようにじゃれあった。



「清水さんは鬼塚君のそういうところが……」

高宮が何か言いかけて、そしてその言葉を飲み込んでいた。

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