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彼女ーミサキーがいた日々  作者: itako8
第二章五節 カズの告白 ~カズの告白~
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第1話 新人戦のその先を見据えて……

1996年8月31日(土)


夏休み最後の部活。


短距離や跳躍種目の人達と合同でハードルを使った練習をしていた。


9月末の新人戦が近いせいか、遠藤の目も真剣みを増している。


高宮のイップスも最近は聞かなくなってきた。


……ロイター板が効いたかな?


良い感じだ……。


と思ってたら


遠藤と高宮が……仲良さげに話し始めた。


二人の関係を妬ましいとか羨ましいとかは……。


た・し・ょ・うは思ってるけど…………。


ナニナニ。


身長と同じで


小さい男だと!




ほっとけ!




ま。……。


二人とも別にベタベタして……


部活の雰囲気悪くしてるまでの付き合いでは無いし……。





ウィンドスプリントを終えて少し小休止をする。


遠藤も結構、俺に追いついてくるようになった。


中学で部活には入ってなかったみたいだが


一人で走っていたそうだ。


だから地力はある。


遠藤に声を掛けようと近づくと……


何か背中にネットリした視線を感じた。


矢木先輩だ……。


うーん。なんかあんのか?


たびたび感じるんだが……。


いや。いい。ほっとこう……。


無視して座り込んでいる遠藤に近づく。


さっきまで肩で息をしていたが、大分落ち着いてきていた。


「遠藤。ちょっと相談だ。

いいか?」


「何?」


「俺。新人戦は諦めるわ」

クガセンには前もって伝えている。


ちょっと驚かれたが、了承はもらった。


ただ出来る限り入賞は目指せと言われてる。


入賞……つまり8位以内。


結構、しんどいんだがねー。


「はぁ? 何言ってるの? エントリーしただろ」

遠藤が理解出来ないという表情を見せる。


「勘違いするなよ。試合には出るさ。

ただ新人戦を目標とした練習はしないってことだ」


試合には出る。



……でもそれは、新人戦で勝つ為では無い。



「いや。ちょっとそれ、どういう意味?」

遠藤が慌てている。


「俺は新人戦じゃ無くて

もう少し先を見据えた練習をしたい」


次は秋の記録会だ。


それまでに間に合うかも分からない。


クガセンからは未だフォームが良くなる余地はあると言われている。


だからタイムも伸びる可能性がある。


そしてこれが、果たして上手くいくかどうかは分からない。



でもこうでもしなきゃ越えられない気がした。



まだタイムは県大会を突破できるかどうかというレベルだ。


県大会のレベルでは、既にタイムとして俺の上に6人いる。


……。新人戦に的を絞れば、"8位入賞"という結果は出るかもしれない。


だが次の北信越大会を超える事は出来ない。


タイムが明らかにその事実を語っていた。


練習でのタイムを超えるタイムを



本番では出せ無い。



夏の合同練習で俺よりも速い人達と一緒に走って、多少タイムは良くなった。


しかし……それでも。


練習で出来ないことは本番でも出来ない。


今のままじゃ全国はおろか


明らかに北信越の壁ですら超えられない。


……でも。




俺の目標は……あくまで"全国"だ。




「で……だ。遠藤。お前はどうする?」

ここでようやく遠藤との相談になった。


「どうするって……」

遠藤が困惑した表情をみせた。


「新人戦を勝つ為の練習をするかどうかっ……てことだよ」

練習メニューは自分の分も含めて遠藤のも、

基本的には俺が考えている。

たまにクガセンに修正されることもあるが……。


それをどうするかだ。


新人戦を見据えた練習をするか

俺と同じように先を狙った練習をするかである。


「僕は……勝ちたいんだ。

自分がしてきたことが間違いじゃないって……

だから……新人戦で勝ちたい。

勝ちたいんだ」



少し考えて遠藤はそう答えた。


遠藤は口を真一文字に結んでいた。


多分遠藤は、こういった勝負事で


勝利した経験が無い。


であれば、それもいいかもしれないと思った。


まずは勝利を求める。それも間違いじゃない。



けど。うーーーーん。



遠藤の奴、誤解してるな。


気合の入った表情を見せる遠藤を見返して


申し訳なさそうに俺は話し始めた。

「わかった。

新人戦を目標にするってことだな」


「うん。……どんな厳しい練習でも耐えて見せるよ」


「……あのな。遠藤

気合入ってるところ悪いが……、

新人戦が目標なら、お前の練習量は減らすから」


「えっ!?」

遠藤の目が驚きでまん丸になった。


そう。


……むしろ厳しい練習をするのは俺の方なのだ。

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