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プリンセス・プリンス 〜名もなき者たちの戦い〜  作者: 四季
3章 還り、そしてまた
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episode.119 歪んだ気持ち?

「他キャッスルで敵襲が確認されているようですね」


 時のキャッスルにてお盆を手に給仕のようなことをしているアオが静寂を破る。

 その視線は座に腰を下ろしている時のプリンスに向いていた。


「時のプリンス?」


 返答がないことを不思議に思ったアオが名を呼ぶと、ぼんやりしていた時のプリンスははっとして彼女の方を向く。


「……何か言ったか」

「はい」

「もう一度頼む」

「他キャッスルで敵襲が確認されているようですね、と」


 二人は顔を見合わせる。


「ここもいずれ敵襲があるかもしれません」

「それはそうよな」


 しばらくして、アオは俯く。

 そんな彼女を見た時のプリンスは、はー、と息を吐き出してから、その青い頭部をぽんと軽めに叩いた。


「だが案ずることはない」


 片側の口角をくいと持ち上げる。


「……すみません、いつも」

「任せておれ」

「……はい!」


 少しばかり憂鬱そうな面持ちだったアオは、面を持ち上げ、僅かに首を横に傾けながら笑みを浮かべた。


 だが笑顔でいられる時間も長くは続かず。

 突如、鉄板が割れるような深く棘のある音が響く。


 プリンスとアオはほぼ同時に音がした方へ視線をやる。すると時のキャッスルの上部に穴が空いているのが見えて。ほんの一瞬だけ二人で驚きの視線を重ねる。が、二人の視線はそこから飛び降りてきた何かへと視線が移った。


 黒いそれはかつんと音を立てて着地する。


「ンフ、驚いたかしら」


 降り立ったのはヨクであった。

 本来の着方より豪快に広がった漆黒の着物の裾がドレスの裾のようになびく。

 片手をついて華麗に着地していたヨクはその場で立ち上がる。


「……何をしに来た」


 警戒心を隠そうとはしない時のプリンス。

 アオは言葉を発することなくさりげなく後退する。


「好みの男と楽しみたくってね」


 意味が分からない、というような顔をする時のプリンス。


「安心してイイわよ。アタチの狙いはそっちの女の子じゃナイから」


 ヨクはウインクしながら片手で銃を撃つような動きをした。


「意味が分からぬ」

「ターゲットはアナタよ」

「……何を企んでおる」

「アナタ、好みなのよね。アタチのところへ来て? で、虐められて? 好みのアナタが痛めつけられているところを見たいの」


 時のプリンスの後ろに隠れていたアオは耐えきれず「何を言い出すのですか!」と叫んだ。さらに「そんな勝手なこと! 許せません!」と続ける。

 最初は無視していたヨクだったが、相手を刺激するかのように感情的に声を発するアオに不快感を覚えたようで、やがてギロリと睨みつけた。

 しかしアオは引かない。いや、引けないと思っていただけかもしれない。いずれにせよ彼女はそこでは止まらず、顔に力を加えながら「時のプリンスを傷つけないでください!」と叫んだ。


 刹那、無表情になったヨクが右腕を横へ伸ばし、その手の先から黒いものを勢いよく飛ばす。


 大型のエネルギー弾ともいえるようなそれは柱に命中。一本の柱を豪快に破壊した。幸いキャッスルが大きく崩れるような位置の柱ではなかったため被害は小さく、柱一本が折れて逝くだけで済んだ。やや埃臭いような匂いが辺りを満たす。


「黙ってなさい。こうなりたくないのなら、ね」


 折られた柱は削った面を上にして置いた鉛筆のような状態になっている。


「……暴れるな」

「アラァ? どうしてぇ?」

「ここはお主が壊すための場所ではない」

「仕方ないじゃないの、物分かりの良くない女に分からセルタメよ」


 アオはさすがに黙り込んでしまった。


「今すぐ去れ」


 時のプリンスは言うが。


「それは無理よ」


 ヨクは従いはしない。

 そして彼は指をぱちんと鳴らした。


「「お待たせしました」」


 南国のような雰囲気がある水着を連想させるような衣服をまとった女性が二人同時に現れる。


「あの男を拘束しなさい!」


 ヨクが格好に似合わない太い声で命令する。

 その次の瞬間、手に爪の武器を着けた女性二人は命令に従い時のプリンスに襲いかかった。


 時のプリンスは即座に取り出した棒を身体の前で回転させ二人の攻撃をまとめて防ぐ。

 そして怯んでいるところを蹴り飛ばす。

 一人には蹴りが上手く入った、が、蹴りの後の一瞬の隙にもう一人が襲いかかる。爪の武器を着けた手を振り下ろすようにして時のプリンスを裂こうとする。しかしアオが片手の指を伸ばし電撃を浴びせたことで女性の動きは一旦停止した。そこへ、時のプリンスの肘による一撃が突き刺さる。腹部に肘での打撃を食らった女性は後方へ飛ばされやがて地面に落ちる。


「すまぬ、アオ」

「いえ」


 女性らとは距離ができた。しかし呑気に過ごしている暇はない。なぜなら敵は女性らのみではないから。


「大人しく……」


 現に、ヨク本人が時のプリンスに迫っている。


「してちょうだいっ!」


 ヨクは右拳を突き出す。

 時のプリンスは咄嗟に片腕を盾にして拳を防いだ。

 しかし。


「ンフ」


 ヨクが突き出した手を開くとその手のひらから黒ずんだエネルギー弾が放たれる。

 先ほど柱をぶち壊したものと同じようなエネルギー弾。大きさは小柄な女性と同じくらいはある。それを至近距離で食らうこととなった時のプリンスは、腕でも防ぎきることはできず、後ろ向きに一直線に飛ばされる。


「……く、は」


 時のプリンスは柱に背中から叩きつけられた。

 背中を強打した彼はすぐには立ち上がれない、そこへヨクが迫る。


「さ、大人しくしてちょうだい。抵抗すればするホド痛い目に遭うわよ」


 ヨクは時のプリンスのすぐ傍にたどり着くとしゃがみ込む。


「従いなさい?」

「ふざけるな」

「アラ……。アタチ、アナタがそんなに馬鹿とは思わなかったわ。せっかくこのアタチが可愛がってあげようとしているのに……」


 そこまで言って、ヨクは時のプリンスの頬を張った。

 青ざめながらも敵意の色を強めたアオは、ヨクに向けて指を伸ばし、彼女なりの攻撃を仕掛ける――しかし指を掴まれ捻られ逆にアオが転倒させられてしまった。

 ヨクはそれ以上アオに何かしようとはしない。

 彼の意識は時のプリンスに向いている。


「ねぇ、アタチに従いなさいよ。いい加減、力の差がアルコトを自覚なさい」


 ヨクは片手で時のプリンスの頬に触れる。


「ね? 従うことにしてちょうだい? 従うならここでは何もしな――」


 だが、言い終わるより早く、時のプリンスは目の前の男を殴った。

 命中はしなかった。

 ただ、ヨクは大きく一歩下がったので、そういう意味では一発仕掛けた意味はあった。


「まだ分からナイのかしら」

「分かるわけがなかろうが。従え? ふざけるな」

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