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プリンセス・プリンス 〜名もなき者たちの戦い〜  作者: 四季
3章 還り、そしてまた
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episode.116 見せる根性

「ヨークーさまっ」


 基地内の自室にてミルクを飲んでいたヨクを訪ねてきたのは、金髪と凹凸のある身体つきが個性的なウツロ。

 彼女は眩しいほどの笑顔でいる。

 機嫌が良さそうな顔つき。


「アラ、ウツロ。どうしたの? 何か用事かシラ?」

「戦力集まりました」


 ウツロの答えに、ヨクは両手の手のひらを胸の前で合わせる。


「アラ! それはイイわネ!」


 間接照明の薄暗い部屋の中、ヨクの瞳が不気味に煌めく。


「ジャ、そろそろ始めましょ」

「いいですねー」


 ヨクは、んっふふふ、と笑う。



 ◆



 平穏が続けばいいと思っていた。

 でもそれは叶わなくて。

 その時は唐突にやって来てしまう。


『こちら剣のキャッスル! 敵の襲撃を確認!』

『杖のキャッスルも同様です』

『ふえええーん! 怖いですよぉーっ。敵大嫌いですーっ』

『こっちもだよ! ……ったく、だりーな。ま、撃破するだけだけどな!』


 剣、杖、愛、海――四つのキャッスルからほぼ同時に連絡が入った。

 こういうのは久々な気がする。

 だからこそ、身体に冷たいものが駆け巡って、自然と固い表情になってしまう。

 ここクイーンズキャッスルはまだ何も起きていないし、その仕組みのおかげで、もう少しは何も起きないだろう。だが、だからといって安心してはいられない。他のキャッスルの状況次第ではここも危なくなる可能性もある。


「これまた随分急ね」


 声をかけてくるのはクイーンズキャッスルに滞在してくれているミクニ。


「はい」

「ま、でも、ここは安全でしょう?」

「そうですね。……それも、今のところは、ですが」


 すると彼女は軽やかに笑った。


「慎重なのね!」


 何か面白かっただろうか……。


「安心なさい、あたしが護ってあげるわ」

「もしもの時には私も戦います」

「ふふ。それもありね!」



 ◆



 同時刻、愛のキャッスル。


「ぶええ……復活するなり敵に襲われるなんてぇ……ついてません……」


 愛のプリンセスは複数の敵に囲まれていた。

 全身黒タイツのそれほど強くなさそうな見た目の敵、しかし数が多い。


「はいーっ……ほいッ!!」


 迫ってくる敵の片腕を掴んで高く放り投げる。そして、宙に浮かんでいるところに、すかさずハート攻撃をぶち当てた。敵一体はそれによってあっさりと消滅した。


 だが次が来る。

 敵は一体ではないのだ。


「ふみゃ!」


 たくさんいるうちの一体に足をかけられた愛のプリンセスは、その場で転び、ぽにょんと胸から地面に落ちる。

 その身体にのしかかる敵たち。

 うつ伏せのまま何体もの敵に乗られた愛のプリンセスは「ぶみゃうぅぅ……」と息苦しそうな声を漏らす。


「こにゃいでくだはい……!」


 だが彼女はそのままでは終わらない。

 尻をどんと上向きに突き上げることで乗っかっている敵を吹き飛ばす。


「ふやあぁぁぁぁーっ!」


 やがて、その場で立ち上がり、乗っていた敵を一気に吹き飛ばした。


「アイアイ! 今日は絶対負けませーっん! 足を引っ張るのはもうやめるんですっ!!」


 叫び、両拳にハートをまとわせる。


「かみさま! アイアイに力をっ! ……なーんて」


 迫りくる敵に向けて放つパンチ。

 拳だけではなくハートをまとっているので威力は低くない。


「そんなラッキーなくたって! アイアイは愛のプリンセスです!」


 愛のプリンセスは叫びながらパンチを繰り返し敵をはね除ける。

 繰り出すパンチ自体は素人のそれと同じレベル。特殊な技能を身につけているわけではないため、繰り出し方は乱雑で、一撃で仕留めるようなターゲットの狙い方ではない。


「はいっ、はいっ、はいっ、はいっ……はぁーっい!!」


 しかし今の彼女は波に乗っていた。

 勢いづいているからこその強さがある。


「この調子でいきますよーっ、かかってきなしゃい!! ……あわわ、かっこ悪いです……発音が……がっ、くり」



 ◆



 一方、杖のキャッスルはというと。

 アオに似た青い目と髪を持つ女性の群れに攻め込まれていた。


「投降しなさい」

「戦うことをやめてください」

「抵抗しないで」

「大人しく従うならこれ以上何もしません」


 青い女性たちは自分たちで円を作って杖のプリンセスを囲み、そんなことを口々に言いながら、徐々に圧をかけていく。

 しかし杖のプリンセスは従おうとはしない。

 凛とした態度で対応する。


「ここは杖のキャッスルです、貴女がたが来るべきところではありません。速やかに出ていきなさい」


 杖のプリンセスは狼狽えてはいなかった。

 長い杖を手にしたまま言葉を紡ぐ。


「最後の警告です。それ以上勝手なことをするならば、侵入者とみなし、それに相応しい対応をさせていただきます」


 刹那、青髪女性のうちの一人が拳銃のような武器を取り出し発砲した。

 青白く光るエネルギー弾が飛ぶ。

 杖のプリンセスは咄嗟に杖を振りそれを防いだ。

 その一撃が杖のプリンセスの心を変えた。それまではぶつかり合うことを極力避けようとする態度を貫いている杖のプリンセスだったが、向こうから攻撃されたことで、戦う意思を明確にする。


「戦う気のようですね。分かりました。では……覚悟なさい」


 彼女が杖を掲げるとその先端から白色の光が溢れる。光線に似たそれは八方に向けて同時に放たれ、取り囲む青髪女性のうちの五名ほどを同時に焼き飛ばした。


「消えなさい!!」


 キャッスル内に響いたのは、杖のプリンセスらしくない戦士のように勇ましい声だった。

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