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プリンセス・プリンス 〜名もなき者たちの戦い〜  作者: 四季
3章 還り、そしてまた
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episode.113 宿るのは、やる気という名の炎

 盾のプリンスには鬱陶しさを感じるほど無事かどうか連続で確認された。が、その後は特に何も起こることはなく。あの一件以降、不気味さを感じてしまうほどに穏やかな時が流れている。


 何もない期間の先に事件が待っていた、ということもあったので、何もないからと安心しきってはいられないけれど。


 ただ、それでも、少しでも穏やかな時間があると嬉しい。


「お邪魔してすみません」

「いえ! ここは何もないですけど……アオさんならいつでも大歓迎です」


 今はアオがクイーンズキャッスルに遊びに来てくれている。

 ここには塗り絵くらいしかないが、並んで喋っているだけでも楽しかったり。


「実は、フレイヤちゃんさんにお聞きしたいことがありまして」

「聞きたいこと、ですか?」

「はい。先代のと言いますか、時のプリンセスさんのことで」

「……時のプリンスさんではなく?」

「はい、先代の、時のプリンセスさんについて聞きたいことがあるのです」


 それは私に聞くことなのだろうか?

 時のプリンスと仲良しなのだから彼に直接聞いてみれば良いのでは?


 そんなことを思っていると。


「フレイヤちゃんさんに聞くことでないですよね、すみません。本当は時のプリンスに聞いてみるべきなのに……分かっています。しかし、彼は教えてくれないのです」


 教えてくれない?

 大事にしているアオにでさえ話さないというのか?


 そんなことがあるとは思えないのだが……。


「先代さんの何を知りたいのですか?」


 尋ねてみると、アオは少し黙ってから「色々です」と答えた。


「小柄な方だったということやお茶が好きだったということは教えてもらえたのですが、さらに踏み込むと濁されてしまいまして」

「さらに踏み込む、とは?」

「彼女の最期についてです」


 それは……もしかしたら話したくないかもしれない。


 誰もがいつかは終わりの時を迎えるのだから命ある限り亡くなるのは定め。私の母親も先代プリンセスプリンスたちも今生きていないということはいつか亡くなったのだろう。それは生ある限りいずれ訪れること、当たり前のこと、ではあるのだけれど。


 ただ、母親が亡くなった時のことを話したくないという者がいたとしても不自然ではない。


「またどうして、そのようなデリケートな話題を?」

「時のプリンスはあまり皆と関わりたくないと言います」


 確かに彼は大勢でいることをよしとしないタイプではある。


 アオだけは意地でも傍に置いておきたいようだが……。


「聞けば、彼の母親である時のプリンセスもそのような感じだったようで。彼の一人でいたいところもそこから来ているようなのです」


 そこまで言って、アオは急にこちらを真っ直ぐに見つめてきた。


「ただ、私は常々不安に思っています」


 その視線はどこまでも直線で。

 顔面に突き刺さりそう。


「もしもの時、誰も頼れなかった場合のことを」


 どうやらこれは真剣な話らしい。

 彼女の表情を見ていれば分かる。


「そこで考えたのです。先代がどうなったのかを知れば参考になるのでは、と。彼と同じように基本一人で行動していた時のプリンセスがどうなったか分かれば、彼の今後の参考になるかもしれません」


 アオの口からは長い文章がするすると流れ出てくる。

 まるで練習を重ねていたかのような上手な話し方。


「あの、周りに助けられてばかりの私が言うのは変かもしれませんが――何かあった場合には普通に頼れば良いと思います」


 私なんて、いつも、頼ってばかり助けられてばかりだ。

 ありがたいことにプリンセスらは心が広い。

 こんな情けない私のことも助け支えてくれる者たちなのだから、非常時には時のプリンスのことだって助けようとするような気がするのだが。


 助けを求めている者を放置はしないだろう。

 たとえ日頃関わりが薄くても。


「……それができれば良いのですが」

「時のプリンスさん、嫌がります?」

「いかんせん日頃の態度があれなので……急に頼るなどできないかな、と」


 アオはしょんぼりした顔になっている。


「そんなことないですよ」

「ですが……」

「大丈夫! もしもの時には皆助けに行くはずです」


 しかしアオはまだ俯いている。


「とにかく、アオさんはそのことが気になって不安で仕方ないのですね」

「……はい」

「で、時のプリンセスさんの最期が知りたいとの話でしたね」


 少し話が逸れてしまっていたが、本題はそちらだ。


「はい。少しでも知っておきたいと思っています」

「そのことですが……ごめんなさい、私には分かりません」

「ですよね」

「ただ、何か情報がないか盾のプリンスさんに確認してみることならできます」


 できることがこれだけというのが情けないが……。

 私の母親の情報を持っていた彼なら時のプリンセスについても何か情報を持っている可能性はある。


「盾のプリンスさんに? なぜ?」

「彼は先代が遺した日記帳を持っているんですよ」

「そういうことですか……!」

「時のプリンセスさんに関しての情報が何かないか聞いてみます」


 するとアオはその場で頭を下げる。


「ありがとうございます。どうか、お願いします」


 その後、私は、早速盾のプリンスに連絡する。


『クイーン……!』


 少しばかり瞳を輝かせる盾のプリンス。


「すみません、少し頼みたいことがありまして」

『何でも任せてほしい』


 声こそ淡々としているが、表情は静かながらやる気に満ちたようなものだった。


「時のプリンセスさんについての情報はありませんか?」


 事情を簡単にだけ説明する。


「そういうことなので、何か情報があれば教えていただきたいのです」

『分かった、改めて日記帳を調べてみる』

「急にすみませんがお願いします」

『もちろん。任せてほしい。君の頼みなら何でもする』


 今、彼の心には、やる気という名の炎が宿っている。

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