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プリンセス・プリンス 〜名もなき者たちの戦い〜  作者: 四季
3章 還り、そしてまた
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episode.107 助け船?

 本音を言うなら、怖い。


 よく分からない敵と一人で向き合うことには恐ろしさはある。


 でも、だからといって、ここで引き下がることはできない。愛のプリンセスを放置して逃げれば彼女がどんな目に遭わされるか。それこそ、また、寝られなくなってしまうようなことをされるかもしれない。それを思うと、ここから私一人逃げ出そうとは思えなくて。


「意識を戻してください」

「ムリムリ」

「どうして! 貴女がやったのでしょう!」


 はっきり言い放った瞬間、黒い女性は片手で私の首を握ってきた。


「……死にたいの?」


 今すぐにでも殺せます、とでも言いたげな調子で脅される。

 でも屈する気はない。


「やめてください!」


 両手を突き出す。

 黒い女性の胸もと辺りに手のひらを当てた。


「ッ!?」


 首から手が離れる。

 こちらが反撃することは想定されていなかったようだ。

 真っ黒なので顔つきなどは見られないがそれでも分かる――黒い女性は動揺している、と。


「生意気な女……!」


 とはいえ、ここからどうすれば良いのだろう。


 自力で何とかする?

 そんなことができるのか?


 眠ってしまっている愛のプリンセスを連れて逃げる。自力で勝てる確率が低いので、それも一つの選択肢かもしれない。だが、彼女を連れて逃げるなら、彼女を抱えながら素早く移動しなくてはならない。しかも敵が目の前にいる状況での逃亡だ、難易度はより一層高まるだろう。


 素人に毛が生えたかな、程度の私に、そんなことができるだろうか。


 いや、逃げるとしたらどのキャッスルへ?


 一人脳を動かしていた、その時。


「ムカつくんだよ!」


 黒い女性は毒々しく叫んだ。

 すると、それを合図にしていたかのように、何本もの黒い触手のようなものが迫ってくる。


「こういうことをするのはやめてください!」


 一息で一気に言いきり、手を伸ばして作る薄い膜で触手を弾き返す。

 これが私にできる精一杯の抵抗だ。

 けれど、何本もの触手が別々の動きをするものだから、弾くのも一苦労。最初のうちは確実に弾けていたが、徐々に疲れてきてしまった。それでも懸命に相手の動きを把握する。一本でも見失えば大惨事に発展しかねないだけに神経を使う。それに、まばたき一つさえできないので、目がひりひりする、痛い。


「戦いなんて無意味です!」

「そんなこと言ってるけどー、そっちも戦ってんじゃん?」

「それは、仕掛けられているからです!」

「はぁー? 意味不明なんですけど。アンタ、ただの馬鹿でしょ」


 確かに馬鹿かもしれないが、今はそんなことはどうでもいい。


「いいから……大人しくしろよ!!」


 直後、背後の床から生えてきた触手は二本。逃げるのは間に合わない。それらに巻き付かれ、腕をそれぞれ固定されてしまった。


「……っ!」


 腕以外の自由は奪われていないのだけれど、両腕を固定されてしまうと好きなようには動けない。全身に巻き付かれているわけではないので腕を除く部分を揺さぶるくらいなら可能だが、それ以上のことはできなくなってしまった。それに、これではクイーンの力が使えない。


 しかしこの体勢……連続宙返りの練習ができそうだな……。


「アンタの力はいーせんいってるけど、腕さえ固定しちゃえば怖くなーい」

「……何をするつもりですか」

「だーかーらぁ、迎えに来たんだってば」

「迎えに? 意味が分かりません」


 疑問符を抱えていた、瞬間、身体を電撃が駆け巡った。


「え、ちょ……えええええ!?」


 全身に感じるのは痛みと熱さ。威力のわりに肉体が滅ぶことはないあたりが嫌らしい。意識はありながらも高火力で焼かれているような感覚があるところが心にくる。


 何とか逃れたい。

 でも心が折れていく。


 動けない。何もできない。このままではどうしようもない。誰か助けてと叫んでもきっと……多分、ここからでは、声も届かない……声、も……。


 意識が遠ざかる。



 ◆



「……ということで、私が様子を見に行った時には既に愛のプリンセスは倒れクイーンは行方不明になっていた」


 通信での緊急会議が行われている。

 現時点で把握できている情報を提供したのは盾のプリンスだ。


 彼はクイーンの身に異常が発生したことをいち早く察知し愛のキャッスルへ急行したが着いた時には既に事後であった。そこにいたのは眠ってしまっている愛のプリンセスだけ。クイーンの姿はなかった。


 ちなみに眠ってしまっている愛のプリンセスは保護された。

 以前と同じように森のプリンセスが傍に置いている。


『盾のプリンス、何か痕跡はなかったのですか?』

「ありません」


 杖のプリンセスの問いに対して盾のプリンスがそう返すと。


『盾のプリンスじゃ無理だろ』


 海のプリンスが冗談半分で口を挟む。


『ぼっさーんとしてるからな』


 盾のプリンスは眉を少しだけ内へ寄せる。


「うるさい」

『図星だろー』


 感情的になるべきではない、と己を制する盾のプリンスだったが。


『頼る相手がこれじゃ、クイーンもダメダメだな』

「黙れ!!」


 制した数秒後には声を荒くしてしまった。


『もうー、盾のプリンス、熱くならないでー。むさ苦しいからー』

『急に大声出さないで』

『落ち着いてください盾のプリンス』


 森、剣、杖から、連続で注意される。


『……ま、気持ちは分からんでもない』


 一対多のような状況に陥りかけた盾のプリンスに助け船を出したのは時のプリンス。


『可愛がっておった女が消えればそうもなるわな』


 それを聞いた森のプリンセスは。


『あらあらー、もしかして、アオちゃんが消えたところ想像したのかしらー?』


 くすくすと笑う。


『黙っておれ』

『照れてるわねー』

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『episode.107 助け船?』まで拝読しました。 心に入り込んで操ろうとする敵。強敵ですね~ 今までは何とか元の世界に戻れていましたが、クイーンを迎えに来たとは(*゜Д゜) はらは…
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