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ショートショート7月~2回目

でえと

作者: たかさば

仕事から帰る道すがら、仲睦まじい様子でベンチを分けるおばあちゃん二人を見かけた。


肩を寄せ合い、時折口元に笑みを浮かべながら、手のひらをパタパタやっている。たまにつぶらな目を見開いて驚いているのが、とてもチャーミングでほほえましい。仲良く膝の上のミカンを分けあってもぐもぐしているのも、実にのどかだ。


あれは、でえと、だろうか。


たまに遠くに目をやり、時折ミカンに目を落とし、時々見つめあって笑い合う……。幸せそうな二人を見ると、つまらない日常を過ごし無感情が常の私であるはずなのに…笑みが、こぼれる。


忙しなく帰路に就く自分が、せせこましく感じる。

……自分だけがこんなに生き急いで、バカみたいだ。


私も、もっと。


この、おばあちゃんたちのように。


心に余裕を持って、笑い合えるように、なれたら。


歩行者優先の細い市場通りと主要道路が交わる交差点横。ここにはベンチがふたつと花壇があって、小さな集会スペースとなっている。信号待ちの老人やベビーカーを押すママさんたちの休憩所として愛されるだけでなく、夏祭りの際にはチケット販売会場となる、町のみんなが訪れる馴染みの深い場所だ。


街路樹が良い感じに日陰になっていて、涼しいんだよね。炎天下を帽子も被らず歩いていた私だったが……、信号がちょうど黄色になった事もあり、空いているベンチに腰を下ろすことにした。


穏やかでのんびりとした、心地好い空間のおすそわけをして、もらおうと、思っ……


「でさあ、あのクソババア何て言ったと思う?うちは関係ないですだって!」

「だから新参ものはダメなのよ!若いやつらはホント礼儀がなってない!」

「引っ越し祝いもやっすいもんでさあ、貧乏人の癖に一戸建てとかしゃらくさいんだわ!」

「犬もうるさいし早く追い出したいねぇ。」

「町内会長押し付けてイビろうか?」

「ゴミ捨て場所、あの家のガレージ前推薦しとこう。」

「子供の学校にさあ……」

「ああ、市役所に……」

「あはは!ざまあみろ……」

「ウフフ、楽しみねぇ……」


私は、腰を下ろすことなく、赤信号の根元に一直線に向かい!!

ミンミンと鳴く蝉の声に、懸命に耳を傾けたのであった!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 蝉さんありがとうございます。 [気になる点] おいこらババアなんつー話w [一言] 理想と現実のギャップですよ
[一言] あっ……。 外からの長閑な雰囲気だけを見て、満足しておけば良かった……。 どこかには、本当にほのぼのでぇとしている老夫婦もいます、おそらく。いや、いて欲しい。
[一言] 且( ´ー`)フゥー…そんな時は耳にバナナです。
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