1章あたらしいお友達②
少し歩くと大きい古き良き佇まいの木造旅館…うん旅館というより大きいし中は改装されて洋装の部分もあるからどちらかと言うとホテルのが正しいんだろうけど。
「ほあぁー」
まぁさやかからしたら大きいすごい所って感じかな、ものすごい目を輝かせて見てるし。
「さぁどうぞお入りください、…宇佐美貴女は従業員口からね」
一緒に入り口から入ろうとするのを制止し、首根っこをつかむように服を掴んだ。
にぶるさんの笑顔が怖い。
「えぇ〜」
「貴女は今日仕事でしょうが」
「えーでもぉ」
「…締めるよ?」
宇佐美さんの耳元ですごーい小声でにぶるさんが脅しにかかった。
すぐさまさやかの方に目を向けたが…聞こえてない良かった。
顔から滲み出る『?』って疑問詞が頭に浮かんでる。
宇佐美さんに関しては流石ににぶるさんが怖かったのかしょんぼりしながら少しビクつきながらも別れの言葉をかけてきた。
「ぼっ坊ちゃん、さやかさん、名残惜しいですが、宇佐美はお仕事に励まなければなりません」
「宇佐美さん、仕事頑張ってください」
「またお話ししてください、宇佐美さん」
お互いに一言ずつお別れの挨拶をしたあと宇佐美さんは従業員用の入り口へ向かっていった。
「行っちゃったね」
「仕事ですので、さて坊ちゃん、さやかさん参りましょう」
「そういえばどこに向かうの?母さんの仕事部屋?」
「いいえ、今回は一部屋お取りいたしましたのでそちらでお待ちすることになります」
「珍しいね、普段はしてくれないのに」
「さやかさんをお迎えに上がることもあり、流石に狭いのではとのゆかり様の配慮です」
「なるほど」
エレベーターに乗り込み上へ登る、そこそこ高い階で止まり廊下にでる。
にぶるさんについていき、とある大きな部屋の前で足を止めた。
「こちらです」
通してもらった部屋は普段でも上から2番目くらいじゃなかったっけ?
「どうぞ、坊ちゃん、さやかさん」
「えっといいのかな?」
「入ろうか」
戸を開けると薄暗い部屋、前室から主室へ向かい襖を開ける。
「暗いね」
「まって、今電気つけるから」
どこにあったっけと手探りしようとした瞬間。
パン!パン!!
と目の前から破裂音が響いてきた。
「!」
とっさにさやかの前に出て、彼女を隠すようにした。
まさか…なんかいるのか?
とにかく必死に目を凝らし、心臓がうるさい。
ただただ緊張してる中
パチッ!
電気が付き、目の前にはクラッカーを持った母さんと知らない男の人がいた。
「かっ母さん」
「お父様」
なんと、仕掛けてきたのは自分の母親だった。
〜続く〜