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盲目の織姫は後宮で皇帝との恋を紡ぐ  作者: 小早川真寛
第1部

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見えない呪符《中編》

「そこは薇瑜ビユが以前使っていた部屋だ。今はここにはいない」


 私は大きな扉の前に立って首を横に振る。


「ここでいいのでございます。そもそもの始まりはこの部屋。呪符はここにございます」


「そうか……何か必要なものはあるか?」


 私は少し考え、大事な人を呼ぶ事を忘れていたことに気付く。


「呪術に詳しい者をお呼びいただけますでしょうか。呪符を見つけるのは簡単でございますが、その後呪符をどうしたらいいのか分かりかねますので……」


「蛇を捕まえた時も思ったが、そなたは推察する能力はずば抜けているが、それ以降のことになると少し残念だからの……」


 燿世ヨウセイ様の言葉に私は少しムッとする。確かに最初の密会していた宮女を取り逃がしたことになっているし、蛇も叩き潰してしまった。今回こそは華麗に解決する予定だ。


「あと薇瑜様付きの宮女様方にお手伝いいただきたいのですが……」


「分かった。何人必要だ?」


「全員でございます」


 そう断言すると、燿世様は少し驚いたようだが直ぐに近くにいた宮女に使いをやらせていた。



 数分もしないうちに不服そうな様子の宮女らと祈祷師が部屋の前に集められた。宮女らの足音が重く、少しでも薇瑜様の側にいたい……という想いが伝わってくる。


「よく集まってきてくれた。呪符探しをするので、この者の指示に従うよう」


 燿世様の言葉に渋々といった様子で宮女らは私と共に部屋の中に入った。


「それでは皆様、お手数ではございますが四方に散らばり、壁を叩いていただけないでしょうか」


 音を拾いやすいように私は部屋の中央に立ち、そう告げた。


「叩く?」


 入口から動こうとしない宮女が、苛立った様子でそう質問する。


「はい。呪符はおそらく壁紙の中にございます。皆様が叩いてくださいましたら、どこに隠されているか音で聞き当ててみせましょう」


「あんたねぇ。私達がちゃんと調べていないって思ってんでしょ?壁だって触りながら確認したんだからね。それに薇瑜様の看病のためならいざしらず、こんな茶番に付き合うために寝ずに働いているわけじゃないんだよ!」


 彼女の言い分は尤もだ。そもそも薇瑜様がこの部屋で過ごされている以上、壁紙の裏……など大掛かりな場所に呪符など隠す時間などなかったに違いない。そして、もし壁紙の中にあるならば、薇瑜様が部屋を移られた時点で体調は改善しているはずだ。だが、それでも調べなければいけなかった。


「ですが――」


「勘違いするな」


 私の言葉を遮るようにして口を開いたのは燿世様だった。


「私は、この者に探すよう乞うたのだ。この者の言葉は私の言葉と思い、しかと聞きとげよ」


 決して怒鳴るわけではないが、床にまで響くような燿世様の声に入口にいた宮女の身体がピクリと震えるのが分かった。


「失礼いたしました」


 その宮女が壁際に立つと、部屋で所在なさげにしていた宮女らも壁際に移ってくれた。


「部屋の四隅に四人立っていただき、その間に一人ずつ立ってください」


 薇瑜様付きの宮女は全員で八人いる。おそらく早番の宮女らも叩き起こし、連れてきてくれたのだろう。


「それでは皆様一斉に壁を叩いてくださいませ」


 私がそう言って手を叩くと、一斉に宮女らが両手で壁を叩き始めた。最初はバラバラだった音だが、次第に双方の音を聞きリズムよく打ち付ける。おそらく私に対する苛立ちをぶつけているのだろうが、さすが皇后付きの宮女といったところだろう。


 その中で微かに異なる音が耳に届いてきた。



「ありがとうございます。お止め下さいませ。そして私からみて二時の方角にいる宮女様を拘束していただけますでしょうか」


 私の言葉に衛兵が宮女を取り押さえると、その宮女は「違う!」「放せ!!」などと暴れ始める。その声は先ほど私に最初に噛みついてきた宮女のそれだった。


「して……この者と呪符がどのような関係にあるのだ?」


 燿世様の驚いたような声に私は小さく頷く。


「その者の帯をお調べくださいませ。おそらくそこに呪符が入っております」


 私の言葉に一斉に視線がその宮女へと向かった。


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