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DAY-1 万国共通の想い

 小鳥の囀りが聞こえる。


 目覚ましなったか?


 もう、朝なのか。


 もう少しだけ‥‥。


「ってしまった寝坊した‼︎」


 飛び起きた途端に身体中が痛むことに気づく。


 背中もお尻もガチガチで痛い。


 それに、空気が暖かい。


 冬だった日本の朝はとてもこんなに心地の良い暖かさではなかった。


「ここは、どこなんだ」


 呟いてみて、首を振る。


 なんでセリフだ。


 これじゃ異世界モノの主人公が、唐突に異世界に飛ばされて、当たり前のように放つセリフそのものだ。


 明らかに俺は今、レンガの石畳の上に魔法少女ユミルンの柄パジャマを着て寝転がっていた。


 左右に立つ建築物は明らかに日本の建築ではない。


 雰囲気としてはイギリスとか、フランスのイメージだ。


 行ったことないからあくまでイメージだが。


「取り敢えず、その辺の人に聞いてみるか。英語で何とかなればいいが」


 痛むお尻を抑えつつ立ち上がって、光の差す方へ向かう。


 大通りなんかがあるなら、そこに出るのが一番だ。


 何かの事件に巻き込まれたなら情報もあるだろう。


 視界が開ける。


「‥‥あぁ。これは‥あれしかないじゃないか」


 きっと異世界に飛ばされた主人公もきっとこう思ったから呟いたんだ。


 だってこれはもう、明らかに「地球」じゃない。


 タイムスリップとか外国に飛んだとか、そういう可能性を通り越して、文化が人種が「匂い」が違う。


 ここは退屈だが愛すべき母星ではない。


「ここはどこなんだ‥‥」








 レンガの石畳をすごいスピードで横切る乗り物は、自動車とか空飛ぶ車とか、あるいは馬車とかそういうものを想像していた。


 自動車であれば現実的で一番安心できただろうが、心の片隅でもしここが異世界だったら馬車あたりだろうと想像していた。


 だって、異世界モノっていったら中世ヨーロッパ風の町並みで、移動は馬車だと決まってる。


 だからこれは予想外。


 故に異世界確定。


 俺は非日常の只中にあるらしい。


「スライム‥‥だと」


 さっきから言葉がうまく出てこないが、アレは多分スライムと形容するのが一番だろう。


 色はまちまちで、形も統一性はないが半透明で地面に接している部分が軟体動物のようにぐにゃぐにゃと動いている。


 馬のような形をしていても、馬の脚が地面を蹴って進んでいるというより、蹄の部分が地面を擦るように進んでいるような、ブルトーザーに近い進み方をしているように見える。


「そうだ、人。人を探さないと」


 歩道らしき場所を歩く人々は、人間のようだった。


 恐らく俺とは違うんだろうが、少なくともコミュニケーションは取れるだろう。


 1人でゆっくりしてる人が狙い目だ。


 例えば、そう、オープンテラスで1人コーヒーを傾ける女性とか。


「あの、すみません。少しお話いいですか?」


「※▲⌘Å◇▽?」


「嘘だろおい」


 異世界モノの主人公ってなんでヒロインと喋れたんだよクソゲーかよふざけんなよ。


 音声言語が日本語と同じとか誰が決めたんだクソ。


 少なくとも日本語、英語、ロシア語やフランス語とも違うような気がする。


 明らかに聞いたことのない言葉だ。


 どうしようもねえ。


「※∞∞±◯▽〓」


 黙り込んでしまった俺に、美しいブロンドの髪をなびかせた女性は何やら声をかけてくれている。


 何もわからないので、ただただ首を傾げていると、ナプキンを不意に掴むとそこに書き込みを始めた。


 1分も経たずして簡単な地図が描かれたナプキンを俺の手に握らせ、通りの向こう側を指差して、微笑んだ。


 きっと「ここへ行け」ということだろう。


 どうやら、親切心というのは地球固有のものじゃないらしい。


 絵や記号は万国共通。


 地図記号なんかは解読できないが、少なくとも目指す場所はわかる。


 俺は通じるかわからないが、謝意を示すお辞儀をすると、地図の差す場所に歩き出した。

いかがでしたでしょうか。


数学は世界共通と言いますが、絵や記号はどんな国でも通用します。

しかし、それ以上に通じるものは、想いでしょうか。

言葉がわからなくても表情や身振りで伝わるモノが確かにありますよね。

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