8,定期戦2日目(2)
その後の『ド・レース』は、第二回戦は1位ソージック、2位レタデミー、3位ラスパーナ、第三回戦が1位ラスパーナ、2位レタデミー、3位ソージック、という結果になった。
とりあえず、一度も最下位にならなかったレタデミーが一番点数が高く、逆に二度も3位という結果を出してしまったラスパーナは一番低く、奇跡的にも1位、2位、3位を一つずつ取ったソージックは中間あたり、と言ったところか。
午後の一時二十分。
試合は第二競技『ジャルダン』に向けての準備が進んでいた。
といっても、派手が舞台装置が用意されていたりとかではない。
試合場には、巨大な水槽が用意されていた。その規模は尋常ではなく、試合場の約半分ほどの面積は占めるだろう。
試合場は半径五〇メートルほどの円形らしいので、水槽の底面の面積は、二五〇〇平方メートルほどだろうか。バカでかいなんてもんじゃない。試合場の広さに比べればそうでもないが……。
高さは目測で一五メートルほどか。
水槽の内側には、青い水がなみなみと満たされていた。その水位は、水槽の三分の二以上はあるだろうか。
『ジャルダン』は水中戦前提の競技である。
空中戦が前提であった『スカイ・ファイラ』と、ルール自体は似ている。
ただ一点、『スカイ・ファイラ』ではエリアに身体が触れることで減点の対象となっていたが、『ジャルダン』では、選手の身体のどこかでも水中からはみ出た場合に減点されるのである。
鬼か! と誰しもが言いたくなること間違いなしの、鬼畜ルールである。
『スカイ・ファイラ』よりも、格段に難易度が高くなる。
要は、制限時間内一切息継ぎせずに水中で戦え、ということなのだから。
空中に浮かぶ方法よりも、息継ぎなしで水中に長時間いる方法の方が、切れる手札は限られてくる。
一応酸素ボンベの携行は許可されているが、この競技でそんな単純な細工をしても、それほど効率的とは言えない。
効果がないわけではない。
ただ酸素ボンベを用いるということは、とてつもなく大きな弱点を背負って模擬戦闘に臨むのと同義だ。
対戦選手に、自らの急所たるボンベを破壊されてしまえば、それは即詰みを意味する。
必然、この競技では道具を用いずに長時間の水中活動を可能にする手段が好まれるようになる。
ボンベを守り切るだけの技量があれば、別に構わないと思うのは俺だけなのだろうか? 多分、少数でも俺以外にもいると思うんだが……。
しかしそうなると、魔法を使って酸素を確保するか、諦めて息を止めているかくらいしか方法はない。
訓練された人間は、五分は呼吸なしでも悠々と水中活動できる、と聞いたことがあるが、『ジャルダン』は制限時間内を水中にいるだけで終わる競技ではない。
もちろん、他の競技と同様、激しい戦闘が繰り広げられる。
そんな状況で、長時間息を止めていられるわけがない。
よって、魔法を使って酸素を確保する方向に傾くわけだが、水中で呼吸を可能にする魔法自体、かなり希少だったりする。
こういう場面で、生体変化魔法というのは喉から手が出るほど欲しくなるわけだ。
魚のようにエラ作れば、水中で呼吸するなど他愛もないだろう。
もちろん、外見が少々グロテスクなものになる可能性はあるが。
……あいにくと生体変化魔法は未だ開発されていない。昨日、レンが使用した魔法は、あえて無視するものとする。
ちなみに、これまでの『ジャルダン』では、風属性の魔法で外から空気を強引に持ってくる、浮遊魔法で空気を顔に貼りつける、などの手法が用いられている。
俺も、そのくらいしか思いつかない。
そんなことを考えているうちに、水槽内の水が、だんだんとその水位を上げていく。
だが別に、水量が増しているわけではない。
この『ジャルダン』という競技は、空中に浮遊させた水の塊の中で展開されるのだ。
競技用の水は純水を使用しているわけではないので、電気を発生させる類の魔法は使用禁止(破ると強制失格)。
ゴーグル類の使用は基本的にオッケー。
フィンなどももちろん使用可能だが、この競技では凄く邪魔になるのだろう。これを使用した選手は、俺の記憶の中でも、0人である。
巨大な水の塊が、試合場の上に完全に浮遊する。
それと同時に、空になった水槽が撤去されていった。
宙に浮かぶ水塊はアメーバ―のようにその形状を変化させていたが、やがて楕円形の形に落ち着いた。
そして、試合場には二人の選手が出てきていた。
第一試合はソージックとレタデミーの試合だ。
先方戦の選手は、両選手とも女子であった。
『ジャルダン』のユニフォームは、基本的にウェットスーツのような感じで、身体のラインがくっきりと判別できる。
だからというわけでもないが、二人の選手の体型で決定的なまでの格差が、浮き彫りになっていた。
水色と白色の配色のソージックのユニフォームを身に着けた女子選手の胸はまな板――――この競技をするには非常に有利な感じになっていた。
対する緑色のユニフォームのレタデミー選手の胸は、ソージック選手とは対照的に豊満な二つの丸みがよくわかる。
これまた随分と対照的な二人が相手になったもんだ。
「ねえ、どっちが勝つかな?」
制服姿のリンが、そんなつぶやきを口にした。
開会式と閉会式しか出番がないとはいえ、いちいち手間がかかるのにどうして制服に着替えたりするんだろうかね。
「「ソージックが勝つよ」」
――と、俺とセイラの言葉が、ぴったり重なる。
「おおう? どうしてそう思うんだ?」
テラが、首を傾げて問うてくる。どちらに対しての問いかはわからない。多分、どっちもに訊いてるんだろう。
試合場の方をちらりと見て――正確には、ソージック選手の胸部のあたりを見て、答えた。
「……選手個人の……適性とか?」
「あと選手個人の情熱とか」
最初が俺の答えで、セイラが後の答えである。
――情熱?
たしかにひんぬーの女性の中には、巨乳を目の敵にするような性格がいるかもしれないが。
もしかして、そのことでソージックの選手が対抗意識を燃やしていると?
「巨乳を嫌う気持ち、わたし、わかんないな」
――ぼそり、と。
セイラがそうつぶやいたのを、俺は聞き逃さなかった。
考えてることは、どうやら俺と同じらしかった。
そりゃあ、セイラのお胸はひんぬーというほど貧相なわけじゃないし。
むしろ、標準的な大きさなんじゃないだろうか。……彼女のBの実数値を知ってるわけじゃないから断言できないが。
それでも、リンやリーンを見て羨ましいとか思わないのだろうかね。
「……始まる」
試合場の方では、選手が向き合い睨み合っていた。
二人はそれぞれスタート位置として設置された高台の上に立っている。その高さは、二〇メートルほどにはなるだろうか。
二人の間合いはおおよそでも一〇〇メートルほどか。
何故そんなに離れているのかというと、二人の間に、件の水塊が浮かんでいるからだ。
楕円形の水塊は、二人の選手の眼下に青々と深く広がっている。
『――スッタアァァァッット!!』
第二競技『ジャルダン』第一試合ソージック対レタデミーの一回戦が、始まる。
◇
スタート直後、両選手はほぼ同時に水塊の中へと飛び込んだ。
この競技では、いかに水中にいられるかが重要になってくる。
水から顔だけでも出すのはもちろん、減点の対象になってしまう。
だが、厳密には水中から出るのがダメなのではなく、あらかじめ設定されているエリア内――楕円形の立体的なフィールドから出てしまうのが減点対象となっている。
故に、レタデミーの選手の作戦は、ルール上「水中から出ている」と見られたとしても、「ルールを違反している」ことにはならない。
『おおっとー。これはデミル選手、思い切った行動に出ましたあー!』
レタデミーの選手――ミヤ・デミルの取った手段は、かなり大きな賭けだった。
彼女は水属性の魔力を、水塊の外にまで繋がっているチューブ状に変形させ、さながらシュノーケルの要領で新鮮な空気を確保していた。
対するソージック選手――ルル・スバーンの取った手段は、この競技で最も有り触れたといっていいもの、浮遊魔法で空気を自身の顔に貼りつけるという手法だった。
両選手が取った先方は、ある意味正反対の効果である。
シュノーケル状に水属性の魔力を展開しているデミルには、常に相手にシュノーケルを狙われるリスクが生じる。もしチューブを破断させられたりでもすれば、その都度再展開する必要があった。息継ぎするための空気を顔に貼りつけているスバーンには、そのようなリスクはない。
しかし、デミルのシュノーケルには、一度展開してしまえば破壊されるまでは無制限に息継ぎができるというメリットがある。対して、スバーンは顔に貼りつけた空気内の酸素を吸い尽す度に(正確には吸い尽す前に)また新しい空気の気泡を取り入れなくてはならない。
単純に機動性を重視するならば、おそらくはデミルよりもスバーンだろう。抱えるリスクの面でもそうだ。
だがやはり、全体的な安定性を考えるならばデミルに軍配が上がるだろう。
――結局のところ、この勝負が決したのは、選手がいかに冷静であったかにあると言えるわけなのだが……。
高速でデミルに肉薄したスバーンが、その掌から風属性の魔力を渦状にして撃ち出した。
それはさながら、水中で発生した竜巻だ。
デミルはそれを障壁を展開することで防御する。
直後、スバーンがその場を離脱する。
デミルに迫った時と同様、水中であることを疑うほどの高速で、後ろへ飛ぶ。
距離を取ったスバーンへ、デミルの反撃が襲いかかる。
複数個の魔力弾が、直線ではなく曲線を描く軌道でスバーンへ迫る。
それを、ほとんど紙一重で回避していくスバーン。
しかし、そのスレンダーな身体の動きが突如止まる。
まるで見えない攻撃を受けたかのようなスバーンの反応。
そこへ、さらなる追撃が彼女を襲う。
攻撃は、やはり見えない。
水中では視認が難しいその攻撃は、水属性の魔力弾だった。
水属性によって変質した魔力は、水中では極端に見えにくくなる。
デミルのシュノーケル状の魔力チューブは、空気を内部に通していることで視認化が可能になっているが、純粋な水属性の魔力を見出すのは至難の業だ。
水中では水の密度の関係か、極端に威力が落ちてしまうものの、それでもこの水属性は有効な手段と言えた。
無論、こんなのはこの競技では言うまでもない常識。これまでの『ジャルダン』でも普通に使われてきた。
にもかかわらず攻撃を喰らってしまったのは、スバーンが冷静さをやや欠いていたからに他ならない。
激流の連続攻撃に晒されたスバーンはなすがまま身動きが取れず、その後のデミルの魔力弾の直撃を受けてしまった。
そして、その後は一方的な試合展開となった。
◇
『おおぉ!? スバーン選手これはかなり効いたかー! デミル選手怒涛の連続コンボが決まったぞおぉ!!』
「……空回りだったみたいだな」
ぼそりと、そうつぶやく。
あのハイテンションであればもしかしてとは思ったが、予想以上に相手選手への恨みが強かったせいで冷静さを欠き、対処できたはずの攻撃にも対処できずに敗北を喫したということだろうか。
さて、まだ勝負がついたわけではないが、おそらくソージック側が逆転することはないだろう。
先方戦はもう飽きた。
この勝負、決着がどうついたかは、後で誰かに聞くとしよう。その時に俺が、まだ勝敗の行方に興味を持っていたらの話だが……。
「……どこか行くの?」
――と、俺が席を立ったのを、隣に座っているセイラが目ざとく気づく。
「……うん。ちょっと、トイレ」
適当にそう言って誤魔化し、俺は観客席を後にした。
背中を呼び止める声は、一言もない。
歩いている俺に話しかけてくる声も、一言もなかった。
だからというわけでもないが、俺は試合場のあちこちへ足を運んでいた。
選手控室が並んでいる廊下。
施設に備えつけてある大食堂。
選手のための休憩室などなど。
これだけ巨大な規模の施設を、普段はどうやって運用しているのか、ふと疑問に思う。
時刻はもうすぐ二時になろうとしている。
『ジャルダン』は今、二回戦目の終盤といったところだろうか。
一試合にかかる時間は、三回戦で三十分程度。準備にかかる時間も入れればおおよそ四十分ほどだろうか。それが三試合ある。通算でだいたい百二十分くらいと考えると、この競技はまだまだ長い。
ちなみに、『フィースフィール』は三校選手が一斉に競う競技で、それは『ド・レース』も同様。『ハイ・サヴァイヴ』は昨日新人戦を済ませているし、団体戦とはいってもチーム戦であるから実際には三試合しか行われない。結局、今日の競技では『ジャルダン』が一番時間がかかる競技というわけである。
まあ、今それは関係ない。
今現在、俺は選手控用の訓練室の前にいた。訓練室とは、出場を控えた選手たちがウォーミングアップ、トレーニング、ストレッチなどを行うために設けられた部屋で、広さはだいたい学校の教室二部屋分くらいといった感じだろうか。
ここまでどういう道程で来たのかは、正直さっぱり覚えてない。
室内を覗いてみようか?
いや、やめておこうか。
「あ、おまえは……」
その時、横から声がかけられた。
声の方を向くと、そこには知ってる顔があった。
ブラウン色の髪の毛に、見慣れた堀のある顔立ち。友人である、テラヴァルト・ドラグランと瓜二つの容姿。しかし、その瞳だけは青色ではなく金色である。
テラの双子の弟の、グランバルト・ドラグランである。
昨日の『スカイ・ファイラ』で、レンに敗北した負け犬だ。
グランバルトは、わずかに敵意を滲ませた視線を俺に向けてきた。
「リュウト・カワキ……」
「……グランバルト・ドラグラン」
俺、こいつに何かしただろうか?
仇敵を見るような目つきなんだが……。
友好的に接してきたとは言わないが……まあ、たしかに俺たちのこれまでを思い出してみれば殺伐とした関係性しか築けないかもしれないな。
「――ここに何か用か?」
低い声で、グランバルトは問いを投げてきた。
「……いや、用という用はない、な」
もともと、散歩のようなものだ。
特別、訓練室を使いたいというわけでもない。というか、そもそも選手に選ばれてもいないから勝手に利用することはできない。
「……お前こそ、ここに用があるのか?」
訓練室の扉を指さして、訊ねた。
グランバルトが運動着を着ているからふと思ったことでもあるが。
もしそうだとすれば、今の俺の立ち位置的にはグランバルトの邪魔になっている。まあ、だとすれば少しおちょくってみるのも面白いかもしれないが。
グランバルトは、ぐぬぬと厭そうな表情を浮かべる。
とその時である。
「グランの奴まだ来てないのかー」
ガチャリ、と。
訓練室の扉が開き、そんな声が厭に緊張していた空気を破った。
扉から顔を出したのは、これまた、俺が見たことのある人物だった。たしか、こいつは――、
「ジーク・…………カン、ジイィ……?」
……まことに失礼なことではあるが、苗字はちょっと、忘れ気味だった。
「うぉっ、リュウト・カワキか」
相手の方は、しっかり覚えてくれていたというのに。
「あ、訓練室に何か用か?」
「……いや」
考えてもみれば、訓練室の前にいればそんな風に思われても仕方がないか。
……そうだ!
こいつのフルネームは、たしかジーク・カンザイだったはずである。
別に、だからどうというわけでもないが……。
「そうか。……なあ、おまえ、今暇か?」
「ジーク?」
好奇を宿した目でジークが俺に質問し、グランバルトがそんなジークの真意を訝しむようにジークの名を呼ぶ。
「暇だが……なんだ?」
「いや、そういえばおまえって、今年も選手じゃないんだよな?」
……メンドくさいな。
昨日、レタデミーのグレンにも言われたが、そんなに意外なことなんだろうか。
魔法重視のラスパーナでは、俺が選手でないことはあまり疑問にならないと思うのだが。
何かを閃いたかのようにニヤリとしたジークを前に、不快感にちょっとだけ表情を歪めながら返事を口にした。
「そうだが……なんだ?」
「ちょうどいいや。ちょっと手伝ってくんね?」
「……あぁん?」
手伝う?
いったいなんのこっちゃ?
首を傾げた俺に、ジークはやれやれという風に頭を掻いた。なんだか、むかつく仕草だ。
「いや、俺の練習相手になってくれねって話なんだけどさ」
「……あぁん?」
練習相手って、何の練習だというのだろうか?
しかしよくよく見てみれば、ジークはグランバルトと同デザインと思われる運動着を着ている。
……なんとなくではあるが、事情がわかってきたような……。
ジークが訓練室にいた理由、グランバルトが運動着姿で訓練室に来た理由などなど、見当くらいはついた。
「……お前は何に出るんだ?」
俺の問いに、ジークはやれやれと溜め息をついて、
「新人戦の時と同じ競技さ」
――と答えた。
新人戦と同じ――つまり『ハイ・サヴァイヴ』の本戦に出るわけか。
それはそれは、随分と実力を認められているのだな。
魔法に関してイマイチ才能が足りない俺としては、羨ましいと思わないこともない。
しかし、だとするならば――、
「答えはノーだ」
「なんだよ、つれねえな」
……つれなくて結構だ。
いい汗をかいて青春な気分になるほど、おめでたい精神はしていない。
それに、友人であるテラも『ハイ・サヴァイヴ』本戦に出場する。一応、敵に塩を送るような真似をするほど節操なしなつもりもない。
その場を去ろうと、踵を返す。
しかし――、
「――――ふっ!」
突如、後ろから厭な気配を直感して、俺は前のめりにしゃがみこんだ。
頭上を、ひゅんと音を鳴らして突き抜けていく、ジークの拳。
俺がそのままの体勢で振り返ると、拳を引き戻したジークの姿があった。
いきなり何しやがんだこのクソガキ。
苛立ちが視線に現れたのか、ジークはにっと笑った。
「このとおり、そっちが乗り気でないならこっちは実力行使でおまえを引き込んでやるよ」
芝居めいた仕草で……いっそ「あっはっは」と大笑いしそうな口調でそんなこと宣言するジーク。
いや、それ拉致問題とかになるんじゃないだろうか……?
………………。
「……選択肢はないってかい?」
「一応、本戦が始まるまで抗うっていう手があることを言っといてやる。まあその場合はさっきみたいに俺らがおまえに勝手に襲いかかっていくが」
……不良どもめ。
カツアゲする気か。
「で、どうするよ? 俺の練習相手になってくれるか? グランだけだと、さすがに格闘の相手までは務まんなくてさ」
未だ障壁を廊下の両サイドに展開して俺の退路を塞いでいるグランを指さし、苦笑するようにジークは言う。
たしかにグランバルトで組み手をするのでは、役者が不足しているかもしれない。
「で、練習相手になってくれるかい?」
ずい、とジークは顔を近づけて質問してくる。
……なんだか、
抵抗するのもバカバカしくなってきたかも……。
しかしその後、二時間近くジークとの組み手につき合わされることになった。
……さすがに、うんざりした。
最後まで抵抗の手は緩めるべきではなかったのだと、少しだけ後悔した。




