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転生者の苦悩 ~呉呉末  作者: 近藤 了
第二部 第一章 業炎の序
54/102

4,放火魔事件

      ◆


 火炎が上る。

 ごうっ、と燃える灼熱のエネルギーが、家を包んでいる。

 ――これは、口封じのつもりなんだろうか?

 だとすれば、奇跡的に難を逃れたことになる。

 でも、それだと家の中にいる人たちはどうなるのだろう?

 こうして火事を目撃している以上、自分は間違いなく見物人だ。でも、あの中の二人は?

 頭の中が、呆とする。

 見物人に混じっている自分は、どうしてここにいるのだろうか。

 何故こんなことになってしまったのだろうか。


 思い返してみれば――

 ――彼らの現場を見なければ、こんなことにはならなかったのに……




 暗く静まった夜の道を、歩いていた。

 周囲は荒涼としており、俺が今歩いている道以外に、特にこれといった特徴はなかった。

 ここまで、かなりの一本道だった。途中、何か所かでこぼことしたところがあったが、基本は直線で幅の広い道だった。

 だが、ふと前方を見てみれば、その直線道もここまでのようだった。

 このまましばらく歩いていけば、この直線は嘘のようにいびつな歪みに変わってしまうのが見える。

 目視できるほどにまで、その歪みは近かった。

 さらに奥の方を見透かしてみれば、道の幅が狭くなっていき、道の表面がでこぼこしているのがわかった。

 こんな道を、歩かなくてはいけないのか。これから先にたどり着くであろうが、禍々しいイメージとなってここまで漂ってくるかのようだった、

 少し、憂鬱になる。

 ……背後を振り返ったことに、特に意味はない。

 ただ、これまで歩いてきた道をもう一度見てみようと、そう思っただけだった。

 暗い荒れ地に、俺が歩いてきた一直線の道が伸びている。特徴もなく、道という機能を果たすだけの、ただの道。

 いや、違う。

 背後の一直線の、さらに向こうまで続く道。

 そこは、前方の荒れ道以上に歪みきった道だった。

 なんだ、あれは。あんな道、歩いた覚えはないぞ。

 道のいたるところに亀裂が走り、震災でもあったのか、隆起、陥没している部分もある。おおよそ、誰も通りたいとは思わないような道が、俺の背後にはあった。

 その光景を見た瞬間、俺の中に、抑えようのない嫌悪感が噴き上がってきた。

 狂った景色から視線を前方へ移す。もう、二度と振り返りたくない。

 俺の視界に、こちらに歩いてくる一人の人物が映る。いつのまに……。

 こちらに歩いてくる人物は、ゆっくりと片手を軽く上げる。俺に、何かを伝えようとしているのか?

 ふと、俺は違和感を覚えた。俺とそいつの距離は、縮んでいっている。なのに、そいつの姿が、いつまでたってもはっきりと見えない。まるで、煙のように靄がかっていた。

 誰だ、と問おうとして、俺は一歩前に出た。

 だが踏み出そうとした右足は、地面を踏みしめることはなく、沈んだ。

 浮遊感はほんの一瞬。

 直後に、俺は何もない闇の中へ落ちていく。


      ◆


 瞼を持ち上げると、可憐な少女の寝顔がすぐ目の前にあった。

 瞬間。心臓と身体が、ぴくりと波打つのがわかった。

 俺とセイラの二人は、リビングで爆睡していた。布団も何もかけずに、互いの身体を密着させて。

 どうして、こうなったんだ?

 昨夜の記憶をたどる。

 頭の中が、酷く痛い。全身を倦怠感が支配している。胸焼けもした。

 たしか、セイラの誕生日祝いを二人でやって、酒を乾杯して飲んで…………その先は曖昧だ。パンボンは、そこまで強い酒ではなかったはずなのだが。俺が酒に弱いだけか?

 セイラを起こさないようにして、起き上がる。

 動揺はすぐに治まったが、ほとんど抱き合った状態で寝ている体勢は、俺としても気まずい気分になる。

 すぐ近くに、パンボンの空瓶が転がっていた。

 昨日貰った一本を飲みあかしたらしいが、それでもやっぱり、爆睡するにはアルコール度数的に足りないような気がする。

「……んう」

 その時、セイラが小さな声を漏らした。目を覚ましたらしい。

「…………」

 寝惚け眼を一回、二回と瞬きさせてから、見上げるようにして俺と視線を合わせてくる。

 とりあえず挨拶しておいた方がいいだろうか。

「お、はよう」

「……おはよう」

 まだ眠いのか、セイラは目をこすって大きく欠伸した。

「今、何時?」

 訊いてくる。

 部屋にかけられた時計を見てみれば、長針と短針は八時半の形を指していた。

 ――あれ。今日から、また学校があったよな。

 これって、遅刻してしまうんじゃないか?




 結果を言うと、一時限目の授業には間に合った。

 起きた時刻から一時間目開始までは、おおよそ三十分の間があった。その間に朝食を作り(セイラの分はこの際なしだ)、制服に着替えて(セイラは着替えずに、ゆったりしていた)、急ぎ足で家を出た(セイラは登校するような素振りもなく、ゆったりしていた)。

 セイラに家を任せるような形になってしまったが、大丈夫だろうか。セイラだって、今日からまた学校のはずだ。家の鍵とかも渡してないから、登校でするにも家から出られなくなってたりしてるかもしれない。

 まあ、いいか。

 もしセイラが学校に行けずに困ったとしても、それはすぐに準備しないセイラが悪いのだ。仮にセイラが鍵もかけずにレープ校に行ってしまったとしても、俺の家には泥棒に入られて困るような貴重品は置いてない。自慢にならないけど。

 そして今は昼休み。

 俺の在籍するAクラスの入り口には、レンの姿があった。

 明らかに俺を咎めている視線を貰って、俺は昨日「アイソレーション」を出る時にレンとした約束を思い出した。

「ごめんなさい」

 教室の入り口でそれだけを謝罪した俺に、レンは不満を吐き出すように吐息して、

「なんで、これなかったの?」

 非常に、回答に窮する問いだった。

 果たして、セイラとの一件を話しても問題はないのだろうか。一昨日あたり、夜の散歩で出会いそのまま連れ帰った少女と、成人祝いということで飲みあかし、朝まで二人してぐっすり熟睡……。

 問題――大ありな気がしてならない。

「昨日、夜に友達が訪ねてきたんだ」

 問題な部分はぼかして、説明するしかないだろう。

「それで、俺の成人祝いってことで、お酒を飲んで騒いだんだけど……」

 実際は、セイラの成人祝いだが。

「そのまま朝まで寝ちゃったと?」

「うん」

 察しがよくて助かる。

「なんのお酒を飲んだの?」

「パンボンって、ラベルにはあったな」

「どれくらい飲んだの?」

「一瓶分を二人で」

「たったそれだけで?」

 酔っ払っちゃったものは、しょうがないだろう。

 肩をすくめてみせた俺に、レンは怪訝そうに眉根を寄せた。妙に言い訳臭いところがある説明になってしまったし。……ほとんど事実なのに。

 それでも、一応の納得はしてくれたらしく、レンは自分の教室に戻っていった。

 本当に、頭が上がらない。

 せめて、あいつの成人祝いの時は実家に帰ってやるとしよう。

 溜め息を一つつき、自分の席に戻ろうとして、そこで呆れ果てたような視線を頂戴した。視線の主は、入り口近くの席で俺とレンの会話を聞いていたリンだった。

「行かなかったんだ、昨日」

 どうしようもない、と言うような、俺を咎めるかのような視線を向けてくる。

「行なかったんだ」

 熟睡した状態で、どうやって実家まで行けというんだ。

 リンの後ろの席のテラに視線を向けてみれば、苦笑を返された。

「友達って、誰?」

 溜め息を一つつき、リンがもっともな質問をしてくる。彼氏と揃って、さっきから俺が答えずらい問いばかりしてきやがって。

 幻滅されこそしても、見捨てられないのは長年の付き合い故だろうが。

「この前中央地区で知り合って意気投合したんだよ。リンたちはまだ知らない人だな」

 セイラと出会ったのは中央地区ではなかったし、そもそも意気投合はしていないのだが。

「なんて名前?」

 ――セイラって正直に答えたら、絶対女の子ってばれてしまうだろうな。

「――バサラさんって人」

「……そう」

 首を傾げながら、リンは眉間を狭めた。だが、特に言及してもこなかった。

 それにしても、どうしよう。バサラさんなんて知り合い、もちろんいるわけがない。

 このまま、リンがバサラさんのことを忘れてくれることを願うしかない。




 イソラの言っていたとおり、校内の様子は変わっていた。

 がらりと雰囲気そのものが変わっているわけではないのだが、休み前と比べて、空気が張り詰めてるといおうか、校内のいたるところから緊迫した気配が漂ってくるのだ。

 まあ、それで生徒たちの行動や心構えが変わるわけではないのだが。

 午後の三時三十分。帰りのホームルームが終わった後、俺は速やかに帰路についた。

 今年住居が変わって通学路も変わったので、最近の俺の登下校では、リンやレンと一緒になるようなことはなくなっていた。……引っ越さなくても、結局は別の意味で自重していたかもしれないが。

 校門を出ると、俺の知ってる人物が待っていた。

「カミネさん?」

 艶やかな黒い長髪、色白の肌、大人びた顔立ちに黒いシドー着を纏った少女は、腕を組んで校門の脇に寄りかかっていた。

 俺のように下校しようとしている生徒たち(特に男子)は、そんな無表情に佇む彼女の美貌に目を奪われて歩行の速度を落としていた。

 なんで、ソージックここにいるんだ?

 学校に行った、というのならレープ校に行くはずだし、彼女がここにくる理由なんてあるんだろうか。

 セイラは俺の姿を見ると、寄りかかっていた壁から背中を離し、

「この後、予定ある?」

 そんな質問をぶつけてくる。

「予定――は、ないけど」

「なら、付き合って欲しいところがあるんだけど……」

 ――なんだろうか?

 まさか、ショッピングとか言わないだろうな。ていうか学校はどうしたんだ?

「今朝、ちょっと気づいたの」

「ほう」

「わたし、今持ってる服はこれだけで、着替えがないのよ」

 ああ、つまり、買うのを手伝え、ということか。

 でも、そういうのって、自分の家に戻ればいくらでもあるもんじゃないのか。

「わたしの家には、もうないと思うから……」

 俺の思考を読んだというわけでもないだろうが、彼女はそう補足する。

 まさか、虐待されていたパターンか!?

 いや、待て。虐待されてる以外にも家に服がない事態はあるだろう。例えば、爆発か何かで家が消し飛んでしまったりとか。……さすがにないとは思うけど。

 さて、断る理由は特にないのだが。

「ああ、わかったよ」

 でも、訊きたいことはそれなりにあるわけで。

「でもカミネさん、家の鍵はどうしてきたの?」

「リビングを探したらあったわ」

 懐から、俺の家の鍵(スペアキー)を取り出すセイラ。物色したのか!?

「カミネさん、学校はどうしたの?」

「行ってないわ」

 直球で、簡単にとんでもないことを言いやがった。

 この女、この外見みてくれでまさか不良だったりするのか?

 セイラは何故そんなことを訊いてくるのか、とでも言うように首を傾げた。

「それって、ズル休みってこと?」

「ちゃんと、理由ならあるわ」

 基本が無表情だから何を考えてるのかイマイチわからないんだよな、彼女。

 学校を休む理由、なんだろう?

 問い詰めるべきか、触れないでおくべきか。

 まさか、変な事件に巻き込まれたりとかしないだろうな。

「そんことよりも、早く行かない?」

 セイラが、急かす。

 たしかに、時間は有限だ。もうすぐ四時になるから、買いものは早くしておくにこしたことはないだろう。




 セイラの新しい服を購入するため、俺とセイラは街に足を運んだ。

「そう言えば、金は?」

 ふと気になって訊ねる。

 まさか、俺の所持金を使わせて、とか言ってきたりしないだろうな。

「それなりには、持ってるわ」

 そういうことならば、特に俺が気にすることでもないか。

「どんな服を買う気?」

 これは、完全な好奇心だった。

「シドー着の……できれば黒色のがいいんだけど」

「シドー着――かあ」

 今更な話だが、ネワギワの世界にはデパートという概念はない。ついでにスーパーやコンビニなんてものも存在しない。喫茶店やレストランとかは普通にあるのに。不便だ。

 そしてさらに、ここはザーナ大陸の三大国の一つジビロン国。セイラが求めるシドー着とは、つまりザーナ大陸から南方に大きく離れている島国――シドー国の伝統衣服であり、簡単にいうとこの国ではシドー着は販売されていないということなのだ。

 どうしてもシドー着が欲しいというのであれば、オーダーメイドか自作ということになる。

 オーダーメイドは普通に買うよりも値段はかかるし、店によってはそもそも作れないところもある。自作にするのならば、金はそれほどかからないだろうが、服の出来は完全に本人の力量に左右されてしまう。

 果たして彼女はどっちなのだろうか。

 高い金を出してオーダーメイドするのか、それとも生地を買って自分で作るのか。

 一応、作るだけなら俺もできる。特注とかは無理だけど。

 第一、まだ知りあって間もない男に頼むことでもないだろう。

 考えながら、セイラに続いて歩く。

 セイラの足取りは、目的の定まった足取りだった。

 間もなく、セイラは街の大通りの道に沿って並んでいる一店に入った。

「マーシーの衣服店」という店の名前だ。名前からして、布の類を売る店ではなく、衣服を取り扱っている店とわかる。当然、俺もセイラに続いて入店する。

 店の中には、いかにも女性客を対象にしているらしい服が売られていた。

 セイラは受付けのカウンターのところまで行くと、受付けの店員と軽い挨拶を交わす。知り合いのようだ。

「セイラちゃん、久しぶりね」

「ご無沙汰してます。マーシーさん」

「今日はどうしたの?」

 セイラが話しかけた店員は、見た目三十代ほどの、黒髪のややパーマがかった女性だった。極彩色の服を着て、なんとなく、中国の民族衣装を思わせる。

 シドー着はこの店でオーダーメイドするつもりなのだろう。店員の服装を見る限りは、そう思える。

「あの、また服を仕立ててほしいんです。できれば、三着ほど、欲しいんですけど」

 遠慮がちな声で、セイラは言った。

「ああ、そういうこと。いいわよ」

「ありがとうございます。それで、お代なんですけど……支払いは今度でいいですか? 今は、一着分しか持ち合わせていないので」

「まあ、ちゃんと払ってもらえるなら、セイラちゃんの頼みだし、いいわよ。ところで――」

 パーマ店員の視線が、セイラの後ろで立っていた俺に向けられる。にんまりとした笑みが浮かび、セイラに訊ねる。

「そこのボーヤは彼氏かしら?」

「友達です」

 特に動揺を見せることもなく、セイラは淡々と答えた。

「ふうーん」

 にやにや顔を崩さずに、パーマ店員は頷く。

 セイラは一歩退いて、俺とパーマ店員を対峙させ、

「わたしのシドー着をいつも繕ってくれてる、マーシー・サキマさん。で、この店の店長でもあるの」

「マーシーだよ。シドー風の服からザーナの服まで、なんでも作ってる。よろしくね」

 店内を見た感じ、作ってるのは女性物中心だろうが……。

「……女装するような機会があったら、来ますね」

 俺の冗談を無視して、セイラはパーマ店員――もとい、パーマ店長に俺を紹介する。

「リュウト・カワキさん。さっきも言ったけど、友達。この前、知り合ったばかりなの」

「よろしくお願いします」

「うん、よく見るとなかなかに可愛い顔してるボーヤねえ」

 ……そうだろうか?

 そりゃあ、レンと比べれば男っぽい顔立ちではないが、幼さは大分取れてきてると思う。それとも、この年代の女性からすれば、俺みたいな顔立ちは“可愛い”になるのだろうか。

「どれくらいでできますか?」

 セイラが、パーマ店長に問いかける。

「急いでるの?」

「そういうわけではないんですけど、できれば、今日中に一着だけでも……」

 うーん、とパーマ店長は顎に手を当てて、

「まあ、一着ぐらいならなんとか――なるわねー」

「ありがとうございます」

「ええ、色は……やっぱり黒色にするの?」

「はい、それでお願いしおます」

「うん、今は……四時十五分か。それじゃあ、遅くなるけど、七時頃にまた来てちょうだい」

 そんなやり取りの後、セイラは店を出ていこうとする。パーマ店長に言われた七時までの間、時間を潰すつもりなのだろう。

 もちろん、俺もセイラに続く。この店にいるのが厭というわけではないが、約三時間もここにいるつもりもない。

 だが、店の入り口で、思わぬ人物と遭遇した。

「リュウトくん!?」

「……キヨさん?」

 随分前に、実家の隣に越してきた元隣人。初めて会ってから、たしか九年か十年ほど経過しているはずなのに、彼女の容姿は未だに若々しい。二十代くらいだろうか。

 彼女の振る舞いや言動から、前々から、実はかなりのご高齢(具体的には三ケタ)なんじゃないかと思っているのだが……。

「あら、ピッツマーさん?」

 受付カウンターから、パーマ店長の声が届いた。

「マーシー、久しぶり」

 キヨさんはパーマ店長に向かって朗らかに笑う。

「知り合いなんですか?」

「ええ。あの子が十七の時から、ここで服を買ってるの」

 パーマ店長が十代の頃……何年くらい前になるんだろうか。

 昔、女性に年齢を訊ねるな、とキヨさんに注意された手前、本人の前で年は訊きづらいし。別に、キヨさんが恐ろしいとかそういうのは一切ないが、本人の前だと変な強制力を感じてしまうんだよな。

 でも、見た感じだとパーマ店長、もといマーシーは三十代だし、二十年ほどは昔になるのか。

「昔っから、ピッツマーさんは若々しいのよねえ。羨ましいわあ。わたしなんて、もうおばちゃんだもの」

 マーシーが妙にテンションの乗った口調で言う。ちなみに、ピッツマーとはキヨさんの姓だ。

 キヨさんはそこでふっと微笑み、視線をセイラに向ける。

「リュウトくんの、彼女さんかしらー?」

 それはさっき聞いた質問だな。

「友達です」

 今度は、俺が答える。あまり動揺なく回答したのは、セイラと似たり寄ったりだ。

「へえー」

 マーシーの時のような反応だ。この流れからすると、セイラにキヨさんを紹介しないといけないのだろうか。

 そう思っていると、キヨさんはセイラの方を見て、

「キヨ・ピッツマーです。リュウトくんとは、家が隣だったのよ。今はリュウトくんが引っ越しちゃったけど」

 気さくに挨拶した。

「セイラ・カミネです。リュウト・カワキくんの、友達です」

 小さく、頭を下げる。

 すると、キヨさんは、ずいと身を乗り出すようにして俺との距離を縮める。

「可愛い友達ね」

 小さな声で、茶化すように囁いてきた。


 ……彼女では、ないんだけどなあー。


 その後、俺とセイラは店を出た。

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