5,ハイ・サヴァイヴ(3)
◇
「うわあ……」
ソージック側観客席にて。
リンが何かに捕らわれたかのように、そんな声を出した。
第5競技ハイ・サヴァイヴ新人戦。その第1回戦となるソージック対レタデミーの試合。
結果はソージックの勝利。たった今、レタデミーの最後の1人が倒されたのだ。観客席から、割れるような拍手の雨と、黄色い歓声が巻き起こる。けれど、
「うそ、リュウトが3人も……」
リンが呆然とする理由はそこではなかった。信じられない、とばかりにリンは口元を手で覆う。
「まさか、ここまでやるなんてね」
隣のイルサも、現実味のない声音で呟く。
「でも、最後の方は4人みんな苦戦してたわね。4対1で断然有利だったのに」
意外そうに、話を続ける。
「相手があれだけの手練れだったら仕方ないと思います」
難しそうに唸り、レンが弁護の言葉を発す。
「獣族3人をリュウト1人で何とかできたのに、まさか最後に残ったレタデミーがあそこまでやるなんてな」
リュウトたち4人に敗れたレタデミー最後の脱落者を見下ろしながら、テラ。
レタデミー選手のうち獣族3人ではない最後の1人。名前はマクミラン・ホズワルド。彼は魔法を専門にリュウトたち4人と戦っていた。多彩で且つ威力も十分な彼の魔法戦の腕前は、リュウトたちソージック選手たちにたった1人で善戦した、と言えるだけには卓越していた。
どうやらレタデミーの作戦は獣族3人を林ステージに配置して地の利を生かしたスピード戦で勝負を決める、というものではなく林ステージには獣族を、平原ステージにはマクミランを置いて万全の状態で迎え撃つ、というものだったらしい。
だが、結局のところソージックが勝った。交戦中薬1名が脱落しかけるピンチに陥ったのだが、最後にルーガの放った『レイ・ベルム』がマクミランを沈めたのだ。
4対0。完全勝利だった。
「リュウトって予想以上にやれるんだな、レン」
愉快そうに、テラがレンにそう言った。
「あんな動き、僕も初めて見ましたよ。兄さんだけ林ステージに突っ込んでいった時はハラハラしましたけど、それに最後の1人相手にも結構苦戦してましたし、でも勝てたのは嬉しいです」
顔を綻ばせながら、レンは得意そうに言う。
その光景を、テラは微笑ましげな表情で見ていた。
自分より劣るばかりに、兄であるリュウトがバカにさる。優しい性格のレンにとってそれは苦痛だっただろう。だから、ソージックの勝利にリュウトが大きく貢献している現状、レンは楽しくてたまらないのだ。
「オレも、こんな弟だったらな……」
ふと漏れた呟きは、テラの飾りのない本音だった。幸い、発した声量は小さくかつこの騒音の中なので誰もテラの一言を聞いた者はいなかった。
この近距離でも、レンは楽しそうな表情が崩れないことから聞こえなかったのは明白だし、リンとイルサは何か話しこんでいて聞こえていても意識が理解するのを拒むだろう。何やらリンの顔が赤くなっていたように見えるが、関係はあるまい。
自嘲するような笑みを浮かべ、テラは視線を試合場に戻す。
試合場では、勝利したソージック選手たちが円陣を組んで笑い合っていた。
◇
「それはなんとも言えないな」
同時刻、同じように試合場を見ていたジークは、そんなことを漏らした。
その口元には、薄い笑みが浮かんでいる。
「まさか……、獣族3人を1人で倒すなんて」
信じられない、とばかりにグランバルトが呟く。
身体強化を掛けていたとは言え、一般家庭の少年が獣族と接近戦で、しかも空中戦が得意な“猫”と戦って勝つというのは、それだけ現実離れした結果だったのだ。
「あのリュウトって奴、かなりやるな」
「獣族3人に、……はあ?」
グランバルトは、未だ現実に復帰できていないようだった。
「グラン、いい加減目え覚ませよ。一応補欠に選ばれてたんだ。凡人じゃないのはわかりきってることだろう?」
「でも、獣族3人って……」
「ま、林ステージで“猫”の獣族3人を相手ってなると俺でもキツイからな。でも、負けるつもりもねえよ。俺たちがやることに変わりはないだろ。俺とグランのコンボは最強だ。それは揺るがない。例え相手がカワキの神子だろうと、魔法で向かってくる限り俺たちは負けない」
断言とも取れる言葉は、確かな根拠あってこその発言だった。どんな強力な魔法だろうが、ジークとグランバルトならばいともたやすく破ることができる。
「……そうだね。少し落ち着いたよ。でも、油断はできないな」
グランバルトの表情に、試合開始直後にリュウトをバカにしていた侮りは、既にない。
油断ならない敵。グランバルトはリュウトに対する評価を改めていた。
「ジーク、君と彼とで格闘戦はどっちが勝つ?」
「そうだな、あいつは予想以上に格闘センスがあった。でも、身体強化を無効化してしまえば俺の方が力は上だ。あいつの体裁きならかわされるだろうが、じりじり攻めていければいずれは俺たちの方に軍配が上がる」
顎に手を当てて、ジークは自分の意見を分析した。
肯定するように、グランバルトは頷く。
「守りは任せた」
口角を少し上げながら、ジークはグランバルトを見る。
「任しとけって。でもその前に、まずはレタデミー戦」
「ああ、もちろん負けるつもりはねえよな?」
「それこそ、さ。レタデミーは結構持ち上げられてたけど、今年は3位だね」
すましたように、グランバルトはそう言って、
「最初から飛ばしていく。あのマクミランて子が魔法戦主体だってことがわかったのは大きい。これは、ソージックに感謝しなくちゃ」
不敵に、笑った。
◇
……疲れた。
さすがに獣族3人の後にあれだけの魔法センスを持った選手との交戦は無茶だったかもしれない。合図を出した後、ルーガたちに任せておけばよかった。
おかげで危く沈められるところだった。
「おつかれさん」
肩を回す俺の背中を、ルーガが労いの言葉と供に軽く叩く。
「おっつー」
「お疲れしたー」
他の2人も、俺に対して試合前と態度が違う。獣族3人に1人で勝ったからだろうか。狙ったわけではないが、それなりに効果的だったらしい。
「ウィーっす」
軽い返事をして、俺たちは試合場から退場する。
「リュウト、マジで勝っちまうんだもんな。驚きよ全く。どこであんなに動けるようになったんだよ?」
控室に続く廊下を歩きながら、ルーガは未だハイなテンションを維持して、そう捲し立ててくる。
「謙遜するようで悪いけど、俺だけの実力ではないぞ? 相手も俺の動きに動揺しっぱなしだったから、上手く出来たんだ」
「それでもすげえよ。相手の動揺があったにしてもあの動きは。それに、運も実力の内っていうだろ?」
当たり前だ。
動揺してもらうためにわざわざ1人で敵陣に乗り込んでいったのだ。あれで獣族3人が冷静に対処なんかしてきたら、最後のグレンで相打ちになっていたに違いない。そうなれば合図も出せずに俺は脱落となり、最悪ルーガたちは林ステージの側面を回ってレタデミー側の平原ステージを目指して、トラップで消耗したところをマクミランによって一掃されたかもしれない。
無論、こんなのは俺の悲観的な予測に過ぎないが。
状況1つで形勢なんて簡単に反転する。
俺が相打ちに持っていって3対1の状況にできたとしても、ルーガたちが林ではなく側面を選んでいれば、勝率は著しく下がってしまう。
そう考えると、俺は結構危ない橋を渡っていたようだ。
今更のように、背筋がひやりとした。
――しかしまあ、何だろう。少なくとも、今は清々しい気分だ。戦闘行為は、好きか嫌いかで言えば嫌いな方だったのに、何故だろう。楽しかったという気分さえ、今の俺は感じているのだ。
妙に満ち足りた気分で、俺は控室のドアノブを回した。
……この時、俺は疑問に思うべきだったかもしれない。いつの間にか、ルーガのうるさい声が止んでいる。どころか、ルーガ含める3人の姿が、俺の傍から消えている。
ドアを回した途端。
その先には、
リンがいて……。
思考が一瞬止まる。
何故リンがここにいる?
――リンも選手なんだから控室にいるのは当たり前だ。
なら――、
何でリンは、下着しか着けていないのだ?
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
直後にリンの悲鳴があった。
「………………ごめんなさい」
それだけを呟き、ガチャリとドアを閉める。
……あの状況は何だったのだろう?
下着装備のみ。つまり、リンは着替え中だったということだろうか。仮にリンが隠し露出狂キャラでもない限りは、着替えていたという見方でいいはずだ。
……なら、何故だ?
何故今なんだ。着替える機会くらいいくらでもあったろうに。
ああもしかして……。
コドーファイナとハイ・サヴァイヴの試合会場は別々の闘技場で行われるから、移動のせいで着替える時間がなかったとかじゃいだろうか。
……でもそれなら何故に控室なんだ?
隣の更衣室を使えばいいだろうに。
「……リュウト」
考えていると、ドアの向こうからリンの声がした。
「着替え終わったの?」
「ああ、うん」
そう、とだけ呟くも、その先はさすがに思い浮かばない。
「あの、なんかごめんね。更衣室に入られたわけでもないのに叫んじゃって。どうぞ」
「…………」
ドアが開けられた。
ドアのすぐ前に立っていたリンは、シドー着のままだった。着替えたんじゃなかったのか?
訝しみつつ、とりあえず控室の入る。室には、俺とリンしかいなかった。
……当たり前か。ここで着替える以上は、リンだって他の目を気にするだろう。下着姿だったのは、控室に他に誰もいなかったからに他ならない。……リンが露出狂でもない限りは。
「……なんでシドー着のままなのさ?」
思っている疑問を、そのまま口に出す。
「あうえ? えっとー、その、ねー」
リンは目に見えて狼狽えだした。
答えに詰まるような内容でもないと思うが。それだけ俺に言いにくいか、もしくは恥ずかしい理由なのだろう。安易に着替えについて訊いてしまった俺も俺だ。
「やっぱ答えなくてもいいよ」
そう反省して言ったつもりだったが、リンは俺のこの言をマイナス方面に取ったようだった。
「ちょっと待って!! えっと、このシドー着、どうかな?」
どうかな? とだけ訊かれても、何をどう答えればいいのかわからない。
――と、言うほど俺も鈍感なつもりはない。つまりはアレだ。「この服似合ってる? うふふ」「似合ってる似合ってる。すっげえ似合ってる」みたいな展開を期待しているのということだ。
残念なことに、俺は素で世辞を言うのは苦手な方だ。演技と割り切れば上手く繕うことは簡単にできるが、親友相手にそういう“騙し”のようなことをするのはなんとなく憚られる。リンも、そんな曖昧な態度で言われても疑心を抱くだけだろう。
リンとシドー着が似合ってないわけじゃない。けど、日本人としての感受性故か、どう見ても外国人めいた印象のリンの着物姿には違和感を禁じ得ないのだ。
「ああ、綺麗だと、思います……」
必然的に、言葉に力はなくなっていく。
けれど、リンには気にならないようだった。
「そう? うふふ、ふふ」
嬉しそうに、頬に両手を当てている。そのまま小躍りしてしまうそうな雰囲気だった。これならば、別に世辞で似合ってるとか言ってもよかったんじゃなかろうか。
――結局、何故にシドー着から着替えてないのかはわからなかったが。
「…………というか、何で俺1人なのだ?」
小さな声で、ぼそりと呟く。リンには聞こえなかったと思う。
少し前から気づいてはいた。いつの間にかルーガたちがいないことには。
まさか、これはドッキリ的なあれだろうか。しばらくすると「ドッキリ大成功」の看板を持った仕掛け人(仮)が室に入ってくるとか。
……さすがに考え過ぎだろう。
腰に手を当てて溜息をついていると、リンがはにかみながら言ってきた。
「その、リュウトのユニフォームも、かっこいいよ?」
なら、疑問形で言わないでほしいものだ。
伸縮抜群のゴムタイツにぶかぶかのジャンパー半袖と半ズボンの、黒ずくめスタイル。地味だが、確かにかっこいいとは思う。けど、デザイン的には中二病もいいとこだという印象がある。これで腰回りにマントのような飾りでもあれば開き直っていたところだが、あいにくとそんな改造を試す勇気はなかった。
「そりゃどーも」
投げやりに、俺は返事を返した。
◇
「どう、上手くいってるかしら」
「わかりませんって、あいつら静かにしてやがる」
ソージック選手控室前の扉。
イルサとテラは扉にぴったり張り付き、中の様子に聞き耳を立てていた。
「……あんたらどーなんだよ」
傍でその様子を見ている、ソージックハイ・サヴァイヴ新人戦選手3人。
呆れたようなルーガの発言に、しかし2人は返事を返さない。
「もしかして……キャー」
「なんすかその間は? 先輩何を想像してんすか?」
「ダメよダメよ。まだ12歳なんだからそんなことは……」
「ちょ、何が!?」
小声で話しているので、中の2人に気付かれることも、多分にはないだろう。
「でも一体、何でこんなに静かなのかしら?」
「先輩の想像した通りなんじゃないすか?」
「…………」
「重そうな表情やめてもらっていいですか先輩が発端でしょう!?」
「シーっ、テラくん静かにしないとリュウトくんに気付かれちゃうわ」
「……何この全部オレが悪いみたいな流れ」
選手3人を放っておいて、イルサたちの会話はエキサイトしつつあった。
そもそもこうなったのはどうしてだったか。
リュウトと供に控室に向かう途中をイルサとテラに呼び止められ、リュウトだけを控室に入れるように図るのを手伝えと「謎の威圧感」で脅されて、そして今に至るわけだ。
不幸にも、リュウトが先頭で歩いていて、特に会話らしい会話もなかったから、リュウトもルーガたちの脱却に気付けなかったのだ。
「リュウト、大変だろうなー」
他人事のように(実際他人事なわけだが)、ルーガは言ったのだった。
――その時、
ガチャリと、
控え室前の扉が開けられた。
「ひゃ!?」
「うお!?」
自然、扉にひっついていたイルサたち2人は体勢を崩されるわけで、
「…………何やってんの?」
リュウトの呆れた声音が、尻餅をついた2人に投げ掛けられる。
「えっとね、その」
「…………」
狼狽えるイルサと、押し黙るテラ。リュウトが冷ややかな視線を向けたのは、イルサの方だった。
「イルサ先輩の仕業ですね? これは」
脇に退けながら、そう呟く。
リュウトが退いたことで、控室内の様子がわかるようになり、控室には、リュウトの他にリンがいた。黒のシドー着に身を包んだ赤い髪の少女は、若干恥ずかしそうに頬を染めている。
けれど、それでルーガたち3人が状況を把握できるわけではないが。
ルーガたちが見守る中、リュウトは2人に送る視線をさらに冷めさせて、
「俺をからかってそんなに楽しいですか?」
溜息交じりに紡がれた声音も、どこか冷淡だった。
「あの、その、ねー」
「…………」
こめかみを押さえながら、リュウトは大きく吐息する。
「何か言うことは?」
「……ごめんね」
「……悪かった」
2人から謝罪の言葉を聞いて、リュウトは三度溜息を漏らした。
「勘弁してほしいです。一応、疲れてるんですから。ドッキリならもっと体調がいい時にお願いします」
「……申し訳ございません」
その場に正座して、イルサは苦笑交じりに反省の言を口にした。
果たして、苦笑してとは言え正座する17歳の少女と、鬱陶しそうに彼女を見下ろす12歳の少年という、なんとも珍妙な絵が出来上がったのだった。
「ところで、観客席の場所取りはいいんですか? レタデミー対ラスパーナを立ちながら観戦することになったりとかは……?」
目を細めながら、リュウトは軽い疑問を口にする。
「大丈夫大丈夫。レンくんがやってくれてるから」
先ほどの反省が嘘だったかのような気軽さで、イルサはそう発言した。
「…………人の弟をそんな雑用に使わないでください」
選手控室の扉の横で、リュウトは4度目の溜息を吐きだしたのだった。
◇
珍妙なドッキリに嵌められた者だ。
一体何が目的だったのかもあやふやだ。いや、ドッキリにはもともと目的なんてないか。ターゲットをからかってその反応を楽しむ娯楽なのだから。そう考えればリンの演技もなかなかの……、
あれ?
あれってホントにドッキリだったのだろうか。
少なくともリンは演技をしてるようには見えなかったが……。
もしかして、イルサがリンに無理強いして手伝わせたのだろうか。なんて悪女なんだ、イルサ。
「……どうかしたの? リュウトくん?」
半眼で睨み付けると、俺の隣に腰かけていたイルサはけろりとした様子でそんなことを訊いてきた。
どうかしたの? じゃねえ。この女は自分がどれだけよ蛮行をしたのか自覚がないのだろうか。
「……いえ。何でもないです」
――なんて言えるはずもなく、俺は当たり障りのないような返事を返した。
「そう?」
「ええ、それよりもうじき始まりますよ?」
第5競技ハイ・サヴァイヴ2回戦目、レタデミー対ラスパーナの試合開始まで、もう1分とない。
ソージック側の観客席にて。
左から順にテラ、レン、俺、イルサ、リンで並んで座っている。相も変わらず、例のごとくのように俺はセンターで固定らしい。……今更文句を言ったりなんかしないが。
「リュウトくんはどう思う? どっちが勝つかな?」
イルサが若干楽しそうに訊いてきた。何故そんなに楽しそうなんだ?
「……そうですね。ラスパーナだと思います」
「なんでかな?」
「レタデミーはラスパーナに勝てるとは思ってないようだったので。なんかソージックに勝つとかしか言わないで、優勝とかは全く言ってませんでしたし。最初から弱腰なら絶対勝てないと思います」
「……辛辣だね」
……そうだろうか。
何をするにしてもやる気やモチベーションは大事だと思うわけだが。
俺は視線を試合場の方へスライドさせた。
ちょうど、ソージックはレタデミー陣地の側の観客席だったため、レタデミーの選手4人の様子がよくわかった。
グレンは体勢を低くして既に突撃する準備を終えている。負けるとわかっていてもせめて一矢報いようと思っているのだろうか。これは殺し合いではなく試合なのだから、そのような姿勢は大変好ましい限りだが。褐色肌の2人も、どうやら突撃するつもりらしい。3人でなんとか敵1人だけでも、て感じだろうか。
マクミランは、そんな3人の背中を順に軽く叩いている。激励なのだろう。
「いいですね。試合やってるって感じです」
言いながら、俺は視線を試合場から上空に固定設置された巨大モニターに上げる。林ステージを挟んだ向こう側は、見えにくい。区分けされた巨大モニターのいくつかはそんな観客のために双方の陣地の様子も映している。
ラスパーナのユニフォームに身を包んだ選手が4人。1人は俺やテラ、レンやリンも知っているブラウンの髪に、画面越しではわからないが黄金色の瞳を持つ、グランバルト・ドラグラン。その隣には、彼よりやや背が高く、そして俺やレンと同じ黒髪。シドー人か、それともシドー系か。グランバルトと親しげに話しているところを見ると彼の友人だろうか。後の2人は、画面越しでは違いがわからない。背丈、髪色、身体付き、見る限り全てが似通っている。双子だろうか。
『第2回戦ラスパーナ対レタデミー、開始まで10秒』
そうこうするうちに、アナウンスが流れてくる。
俺の口元はわずかに緩んでいた。
イルサに対しての発言は、しかし返事が返されることはなかった。
『5、4、』
カウントダウンが始まる。
試合場の4人も、各々気を引き締めるように身構えたようだ。
『3、2、……開始!!』
直後にレタデミー陣地に立っていたのは、マクミラン1人だけだった。
獣族の3人は、既に10メートルほど前方を疾走している。あのスピードなら、あと数秒で林ステージに突入するだろう。
だが、3人が林ステージを目前にした、その時――、
林ステージ全体が、豪と唸る火炎に呑み込まれた。




