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転生者の苦悩 ~呉呉末  作者: 近藤 了
 第2章 定期戦<上> 代理出場編
17/102

2,Kr測定検査

 十五分ほどが経過して、女子は戻ってきた。

 次は男子の番だ。

 戻ってきたリンにどうだったか聞いたが、「よくわからない」という答えが帰ってきた。俺たちは、もやもやとくすぶった疑問を抱えて、保健室に向かった。

「はいはい、Bクラスはまだ少し後なの。ちょっと待っててね」

 保健室の前で、この学校の養護教諭兼高年部からの保健の授業の教師であるテレサにそう言われた。彼女の言葉から推察するに、やはりこの授業も他のクラスと同時進行であるようだ。

 保健室前の廊下で、Bクラスの番が来るのを待っていると、Cクラスの担当教師と男子たちが列をなしてやってきた。さっきの女子の時と同じだ。状況から判断すると、今保健室の中にいるのはAクラスの男子という解釈で間違いないだろう。とすると、じきにDクラスの男子も来るというわけだ。

 予想通り、それから5分ほど経過して、Dクラスの教師と男子たちが来た。

「はーい、OKでーす。Aクラスの男子が出た後にBクラスは入ってください」

 保健室の扉が開き、テレサが顔を出した。

 彼女の顔が再び保健室の中へと戻ると、今度はAクラスの男子たちが綺麗な列で出てくる。

 保健室は、医務室に比べて狭く、置かれてるベッドの数も二個だけで、今はその内のひとつはカーテンで閉め切られていた。

 保健室にはテレサの他にもう一人、男性がいた。

「次は、Bクラスだね。こんにちは」

 スキンヘッドぎりぎりまで茶髪を刈り込んで、がっしりした長身の男だった。でかい図体なのに、笑顔がやけに安心できるのが印象的だった。どこかで会ったことがあるだろうか見覚えのある姿だ。

「安全委員の者です。今日はみんなに簡単な検査を受けてもらいます」

 安全委員を名乗った男は、またにこやかな笑みを浮かべる。やはりどこかでみたような気がしないでもない。

「あの人オレらが一年の時に来た人じゃないか?」

俺の後ろから、テラが耳打ちしてきた。

「一年の時って?」

「ほら、リュウトとイルサ先輩が決闘した時だよ。おまえが気を失ったあと医務室に入ってきてリンたちのバアさんの話した……」

言われて、納得した。確かに彼はあの時に医務室に入ってきた男性だ。名前は、たしかルークと言ったはずだ。

「列の前の人から、順にベッドの方へ入ってきて、検査が終わったら保健室からは出ずに隅で待っててください」

 ルークは説明を終えると、カーテンで閉め切られた方のベッドへと姿を消した。

 俺とテラはいつものごとく列の後ろ側に並んでいる。テラの方がまえなのは珍しいのだが、とにかくそうすぐには順番は回ってこないだろう。

「なんの検査だろ?」

 改めて、テラに問う。

「安全委員が絡むなんて普通じゃないな。なんかの感染病かな?」

 テラと一緒に、俺は首を捻った。安全委員は、国家間の問題や世界の脅威への対処が主目的だ。一介の学校で検査にわざわざ出てくるような機関ではない。

 一人の検査にかかる時間は、四時限目の魔力測定のものと比べると明らかに長くかかっていた。魔力測定が一分も掛からなかったのに対し、こちらは平均して大体二分ほどだ。

 先に終わらせて、後はみんなが終わるのを待つだけの列の前の方だったクラスメイト達は、さぞ退屈なことだろう。もっとも、待つと言う意味でいえば後ろ側の俺たちも相当退屈なわけだが。

「次の人」

 テラの番が来た。

「じゃ、行ってくるわ」

 ガッツポーズでそう言い残し、テラはカーテンの奥へと姿を消した。彼のガッツポーズは少し、大げさな気がした。

 五分ほどだろうか。他のみんなの倍近い時間がかかって、テラはカーテンの奥から出てきた。不思議そうな表情をしていた。

「なんか、わけわかんねえ」

 リンと同じようなことを言いながら、テラは室の隅の方へと歩いて行った。

「次の人」

 カーテンの奥から声がかかる。

 次は俺の番だ。

 カーテンの奥は、特には何も変わっていない。ベッドのわきに椅子が二脚置かれ、内1つにルークが腰を下ろしている。

「おや、君は前に会ってるね。僕のこと覚えてるかな?」

「一応は、覚えてます」

「そう、こんなおじさん覚えてくれてるなんて、さっきの子もだけど嬉しいね。さて、まずは椅子に座って」

 ルークが空いている椅子を示す。

 黙ってその通りにすると、今度は左手をまくって出すように言われた。

「何を測定するんですか?」

 一応、訊いてみた。ルークは少し考えるそぶりを見せ、

「血圧とかいろいろ、かな?」

 十二歳で血圧測定、する意味ってあるんだろうか?

 ルークは俺の左腕の肘あたりに、金色の腕輪のようなリングをはめた。ケーブルやコードで旧式のラジオめいた装置と繋がっているリングは、どことなく魔力測定器を思わせる。

「息を吸ってー、吐いてー」

 もっとも、今度はすぐには終わらないようだったが。

 一分ほどの時間が経ち、装置から終了を告げるような電子音が鳴る。

 ルークは装置を見て、顔を強張らせた。

「君も!? いや、しかしこれは……」

 俺もそっと装置の方を見るが、メーターが振れているだけだった。血圧測定なら、そもそもメーター表示はおかしいと思うが、そのことを置いてもまず振れていて問題はないと思う。

 けれど、ルークは信じられない物を見るような目でもう一回の測定を提案してきた。

「ごめんね」

 また俺の左手にリングをはめながら、ルークは謝った。

 一分の測定時間の後、再び終了を告げる電子音が鳴る。

「……やっぱりか。うん、でもこの数値はな……。リュウトくん、申し訳ないけどもう一回お願いできるかな?」

 三度目の正直、と言うやつだろうか。ネワギワにそのようなことわざはないけど。

「さすがにつまんないでしょ?」

「いえ、特には」

「ふうん、大人だね。他の子だったら退屈だって垂れるのに」

「他のみんなもやり直したりするんですか?」

「ああいや、そういうわけじゃ……さっきの子は口には出さなかったけど雰囲気がね」

 テラは俺みたいに枯れてるんじゃなくて、大人の事情がわかるだけ・・の子供だからな。

「テラの時も三回やったんですか?」

「いや、彼は二回だよ」

「じゃあ普通は一回ってことですか?」

 こくん、とルークは苦笑いを浮かべて頷いた。

「こういうやり直しは、結構あるんですかね?」

「いや、そんなには。ただ君たち男子の前にやった女子の時でも一人やり直したらしいし、この検査って他の学校でもやってるんだけど、レープでも一人、やり直したらしい」

 レープ、とはジビロン国においてこのソージックに次ぐ教育機関と言われるあのレープ校のことだろう。

「他の学校でもって、結構規模が大きいんですね」

「うん、て言うより前に君たちと会った時はこれが目的でソージックに来てたんだけどね」

 微妙に離れているが、時期的には、たしかに俺がルークと会ったのは、六年前の今頃だ。毎年行われてるということだろうか。

「これまではこんな検査受けたこともなかったんですけど」

「低年部最終学年である七年生の時だけに受けるものだからね」

 電子音が鳴った。会話は打ち切りだ。

 放置がメーターが表示する結果を、ルークは今度は落ち着いた、しかし険しい顔で見ていた。

「またか。故障ではないな。しかし……」

 難しい顔で、ルークは頭を掻いた。

「あの……」

 遠慮したような声音を作って、俺はルークに話しかけた。

「もっかい、やりますか?」

「……本当に悪いけど、お願いするよ」

 俺の検査に掛かった時間は、総計八分ほど。実にテラよりも長く掛かってしまった。

 カーテンから出た時のみんなの怪訝そうな表情はとても印象的だ。

「リュウトもやり直し?」

 保健室の隅で、テラにそう訊かれた。

「ああ、四回」

「四回!?」

 俺のこの告白に、テラはやはり仰天した声をあげた。

「なんだって……」

「さあ、何でだろう。……そろそろ終わるな」

 テラの動揺の抜けきらない声に、俺は乾いた口調で言った。視線の先では、Bクラス最後の男子がカーテンをめくって出てくるところだった。


      ◇


 ソージックから西に歩いて五分ほどの位置にあるレストラン。

 ルーク・キミラはコーヒーに口を付けて、大きな溜息を漏らした。

 正面に座る彼の補佐役の女性は、そんな様子をただ見ていた。

「今年は一体どうなってんだろうね全く」

 目頭を押さえて、ルークが愚痴をこぼす。

「男子からも汚染者が二人出たよ」

「女子の方からは一人だけですが、……レープ校での一人を合わせれば今年発見した女子の汚染者は二人ということになりますね」

 リミアン・ハルトイヤーは淡々と言葉を繋ぐ。しかし、その声はルークほどではないにせよ疲労感を感じさせる色だった。

「今年は四人か~。去年まではっていうより、今まで全く出なかったんだけどね」

 またコーヒーを啜り、ルークは目を瞑る。

「ソージックでの汚染者は女子がリン・ホルミナさん、男子がテラヴァルト・ドラグランくんとリュウト・カワキくん、三人とも七年Bクラス所属。部長、確かこの三人は……」

「うん、五年か六年前に僕らが行った時、保健室で話をした子たちだね。たしか、あの時の彼らは、一年生で……あっ!!」

 突然、ルークの声の音量が上がった。突然テーブルを叩いたルークの行動に、近くにいた客が何人かルークたちへ視線を向ける。

「っ!? 何ですか?」

「あの年、ユグシルナの研究所で爆発事故が起きた。Kr因子の管理装置の……」

「!! ……当時彼らは一年生……。一年生は見学でユグシルナを訪れる……。ということは」

「爆発が起きたのはソージックの見学の時期と一致する。三人が爆発の場に居合わせていたとしたら、彼らからKr反応が出るのも頷ける」

「部長」

「うん、……でもね」

 ルークは高揚していた口調を沈んだものに戻した。

「博士の話じゃ、誰も被爆者は出なかったっていうしね」

 その言葉で、リミアンの顔が暗む。

「でも、今回の三人も、変質者と認定するにはKr値は低いんですよね、部長?」

 ひとまずは安心、と言うようにリミアンが確認を取る。しかし、

「うん、それなんだけどさ……」

 ルークの声が、さらに沈む。

「ねえ、リミちゃん。レープの子のKr値ってさ、いくつだっけ?」

「たしか278だったと思いますよ。決して低くはないですけど、危険値と定義される20000には程遠いですが、何か?」

「検査で出た三人のKr反応値、女の子の方は10だったよね。男子の方なんだけど、ドラグランの子の方は14だったんだけど、もう片方のカワキくんの方はさ、356だった」

「さんびゃ!? レープのカミネさんを超えてって……、それは!?」

「まあ、リミちゃんの言うとおり変質者に認定するには体内のKr因子が全く足りないけど、他の二人との差が気になってね」

 リミアンはほとほと疲れきったような呻き声を上げた。

「カワサキ化する心配はないとはいえ、カワキくんとカミネさんの数値は心臓に悪いです」

「ほんとにね、それも含めて、ちょっと調べてみたいことがあるんだけど。近々博士に連絡してみないとね」

 すっかりだらけきってしまったリミアンに、ルークは苦笑を浮かべる。普段はきっちりと真面目に、それこそ典型的な学校の委員長のような性格の彼女がこうした姿を見せるのは仕方がないことだと割り切っている。なぜなら――、

「つい先日、定期戦襲撃の犯行声明があったんですよ? その対策だけでも手一杯なのに、これ以上の労働は」

「リミちゃんは仕事人間てわけじゃないからね。まあ、もし仕事人間だったとしても、安全委員として・・・・・・・の定期戦襲撃への対策と通常業務、加えて『カワサキ対策委員会・・・・・・・・・』としてのKr汚染者及び変質者の捜索に『片目のヨミ』への警戒。これだけの仕事の前には音を上げるだろうね。まったく、いくら独立機関だと言っても安全委員は労働法から外れすぎてるよ」

 肩をすくめながら、ルークはやれやれと首を振った。

「せめてカワサキ対策委員会だけでも別の機関として分けてもらえれば」

 すがるような声音で、リミアンが言う。既に、彼女から冷静さは欠けていた。

「無理無理、カワサキ対策委員会と安全委員は書類上は別の機関として組織されてるもの。僕らがなんと言おうと、お偉方は安全委員とカワサキ対策委員会を、名前が違うだけの同一機関と認めない。もともと別の組織ってことなら、業務を分担させることもできないだろ?」

 カワサキ対策委員会。それは、安全委員に与えられた裏の役職の名称であり、同時に彼らの別名だった。

 安全委員の業務には、各国の脅威に対する迅速な対応、というものがある。

 対して、カワサキ対策委員会はひとつの脅威のみを警戒する。

 彼らが安全委員としてではなく、カワサキ対策委員会として警戒するもの。それは、大昔に実在していたとされるカワサキの化身と言われる『Kr変質者』だ。

 ネワギワ史に記録される史実を見る限りは、裏歴史も含めてのネワギワの歴史上、カワサキ化した変質者は『片目のヨミ』ただ一人とされている。カワサキそのものも、実在したとされるのみでこれまでで存在が確認されたことはない。

 故に、カワサキ対策委員会が常に警戒するのはヨミと、いずれ出現する可能性のある変質者のみとなる。しかし、それだけで安全委員がカワサキ対策委員会として機能してしまえるほど、カワサキというモノは異常だった。

「定期戦襲撃の方も、なんでああなんですか? 普通だったら嘘かどうかの審議に掛けられるのに、予告してきたのがあの・・組織だったからってだけで嘘かどうかよりまず守りを固めるって」

「まあまあ、予告してきたのがあの組織じゃなくたって、安全委員ぼくらは動いたでしょ。警戒態勢を強めるだけで、別におかしいことは」

「おかしすぎます! よりにもよって、襲撃を予告してきたのは安全委員わたしたちの表向きの敵の『ヘルヘイム・・・・・』なんですよ!? これでもし片目のヨミも出てくるようなことになったら、ああアあァaaaaaaaaaaaa!!」

「ちょ、リミちゃん、声、声。ここレストラン。確かにそんなことになったら厄介きわまりないけど、まずは一般の人たちにばれないようにしなきゃ」

 壊れたように叫ぶリミアンを、ルークは小さく落とした声で必死に宥めたのだった。


      ◇


 低年部は基本的に五時限目まで授業を行う。しかし、最終学年でもある七年生は六時限目を取ることが少なからずある。

 ちょうど今日も、五時限目のわけのわからない検査の後、もう一時限分が用意されていた。

 教壇には俺たちBクラス担任のレアが立っている。

「では、この時間は皆さんにとっても重要な発表があります」

 教卓に手をついて、身を乗り出すようにして喋るレアは、いつになく真剣そうな表情をしていた。ほんわかした雰囲気も、今はなりを潜めている。

 クラス中に、一気に張り詰めたような緊張感が漂う。俺はと言えば、それほど緊張はせずに聞いていたわけだが。

「皆さんも既に承知でしょうが、七学年は定期戦の新人戦に出場することができます。今日の四時限目はそれ関係で魔力測定を行いました。その結果と、皆さんの魔法科と戦闘実技の成績をじっくりと先生方で話し合い、一応の候補は絞り込みました」

 クラスの緊迫感が、さらに張り詰める。

「子の6次元目は、その選ばれた候補の中からさらに新人戦出場の選手レギュラーを決めてもらいます。選手に選ばれなかった人は補欠・・になります。また、出場の意思がない場合は申し出てもらっても構いません。その場合も補欠ということになりますが、まあよっぽどのことがない限りは選手が入れ替わったりすることはありません」

 先生の説明が終わると、教室に静寂が広がった。

「では、それぞれの競技の候補に選ばれた人を発表します」

 レアが、教卓に置いていたプリントを手に取る。

「まず『プノ・フィース』の候補から、男子は――」

 新人戦で選ばれるみっつの競技は、どれも出場選手が四人分のものだ。ソージックの学年はいつも大体四クラスだから、ひとつの競技に一クラスから一人を代表として選出すればいい計算になる。純粋な格闘能力が物を言う『プノ・フィース』、バトルロイヤル形式の『コドー・ファイナ』、そしてほとんど男子競技と化している陣取り合戦の『ハイ・サヴァイヴ』。ちなみに言っておくと、プノ・フィースとコドー・ファイナは低年部においては男女混合となっている。

 「俺はメンバーには選ばれない」という客観的な俺の思考は、ハイ・サヴァイヴの候補を告げる際のレアの言葉で消え去った。

「最後に『ハイ・サヴァイヴ』、テラヴァルト・ドラグランくん、ギリー・スマレくん、あとリュウト・カワキくん」

「……は?」

 つい、間抜けな声が出てしまった。

「以上、候補に選ばれた人は、できるだけこの時間のうちに誰がBクラスとして出場するか決めてください」

 レアはそういうと、持っていたクリップボードにプリントを挟んで教室の隅の方へ行き、椅子を引いて腰かけた。

 後は生徒たちの話し合いの出番だ。皆それぞれに立ちあがり、自然にいくつかの班を作って誰が出るかの話し合いを始めた。

 俺は立ち上がると、皆の話し合いの中ではなく、レアの方へと向かった。

「あら、リュウトくん、どうしたの?」

「どうしたも、……なんで俺が候補に選ばれてるんですか? 戦闘実技の授業はともかく、魔法科でいい成績を取った覚えはないんですが」

 別に苦手と言うわけでもなかったのだが、候補に選ばれるほど優秀な結果を魔法科でしたことはない。第一工程が苦手な俺からすれば、よく毎回補修を喰らわないという低レベルな評価しか下せない。

「リュウトくんの魔力総量は他の子と比べてものすごい量だったの。それこそ、第一工程が苦手だっていう君の言い分・・・を無視できるくらい。あとは、戦闘実技の成績的に、一番その魔力を活かせるのはハイ・サヴァイヴかなって。それで、どうかしら?」

 座ったまま、レアは俺を見上げて訊いてきた。

「どうかしらって、もちろんやりませんよ」

「そう、少し残念ね。じゃ、リュウトくんは、補欠ってことね」

 クリップボードに止めたプリントにボールペンで何やら書き込みながらレアは言った。

 俺は踵を返して自分の席へと戻った。

 その途中で、テラに呼び止められた。

「リュウト、おまえは……?」

「俺は出ない。レア先生に言ってきたから」

 テラの言わんとしていることはすぐに分かっていた。

「……そう、か?」

「ああ」

「てことはハイ・サヴァイヴはオレってことになるんだけど」

 テラが話し合っていたグループに目をやる。何人かの男女の中に、俺とテラと一緒に選ばれたギリー・スマレがいた。既に二人の間ではテラが出場ということで話が付いているのだろう。なんだかんだ言って、テラも魔法科の成績はいい。ギリーも魔法科は上位の成績だったと思うが、テラよりは下だったと記憶している。

 ならば、後は俺がどうしたいかの意見を聞くだけというわけだ。

「いいんじゃない? 昼も言ったけど俺出る気ないから」

「そうか? じゃ、そういうことで」

 結果を言えば、Bクラスとしての出場選手3名はその時間のうちに決まった。

 第一競技として設定され、新人戦の中では一番最初に行われる『プノ・フィース』は、一年の時に俺と同じクラスだったルイス・フラストという男子生徒。

 第四競技『コドー・ファイナ』からはリン。

 本戦と新人戦が分けられ、新人戦そのものはコドー・ファイナのすぐ後の『ハイ・サヴァイヴ』はテラ。

 という組み合わせオーダーとなった。

 奇しくも一年次のCクラスメンバーになったわけだ。……俺以外の。


「さあ、明日から練習頑張って新人戦は優勝するぞー!!」


 六時限目の終りごろ、テラの鬨の声が教室中に響いた。

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