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準備

部屋の姿見を見ながら、今日の服装を確認する。


髪は食べる時、邪魔にならないよう首の後ろでまとめている。これはいいな。

次に服。これが難儀した・・・

普段着てる服はTシャツとジーンズだが・・・これで行くのは流石にオレでも無いとは思う・・・

他の服は・・・って駄目だ。


「なんでジーンズしか持ってないんだよオレは・・・」


クレッセンに行くのにジーンズとかマジでありえねぇだろ・・・

母さんの服を勝手に借りる訳にもいかねぇし・・・


「やっぱ、これしかねぇか・・・」


クローゼットの一番奥に仕舞っておいた服を取り出す。

これも爺ちゃんが入学祝って贈ってくれた取って置きの服だ。


ゆったり目の青いロングワンピースに白いカーディガン・・・

ケーキを目一杯食ってぽっこりお腹になってもこれなら目だたねぇし、クレッセンに行くのに悪くねぇチョイスだ。

後はオレなんかが着て似合うのか?って所だが・・・


「ん?・・・まぁ、悪くはねぇか。」


ちょっとオレのイメージとは違うが、知り合いにでもみつからねぇ限りは大丈夫だろう。

制服以外のスカートなんて久しぶりだな・・・

少し気恥ずかしいが、クレッセンの為だ。このぐらいは我慢しよう。


ティッシュとハンカチ、財布と携帯をポシェットに詰めて・・・っと。これでいいな。


ガチャッ


「あら。休みなのに朝っぱらから部屋に篭ってると思ったら・・・ふぅん。」


いきなり部屋を開けたと思ったら、母さんはそう言ってオレのことを上から下までじろじろと見る。


「そう言う事だったか。

 分かってると思うけど、最終判断は自己責任で行いな。」


「ブッ!!」


とんでもない事を言って来た。


「そっ・・・そんなんじゃねぇ!!

 ちっと飯をおごって貰うだけだ!!

 

 アイツとデートだなんて、そんな縁起でもねぇ。」


そう。

今日は侘びにおごらせるだけだ。

デートだなんて縁起でもねぇ・・・


確かにチャラい男だから誘ってくるかも知れねぇが、んな事言い出したらぶん殴ってやる。


「ふっ、語るに落ちたね。

 自分からデートってばらしてちゃ、茶化す気にもなれない。

 色気づいたようで安心したよ。


 あたしは店に出るからね。

 羽目は外し過ぎないように。」


「うっ・・・なっ!?」


オレの返事の何所が楽しいのか、母さんは楽しそうに言うとドアを閉めた。


パタン


玄関の方からドアの音が聞こえる。

どうやら仕事に向かったようだ。


「変な事いいやがって・・・

 デート?・・・あぁ、嫌だ嫌だ。

 

 あんな男と一緒に出かけるのが初デートだなんて嫌な冗談だ。


 今日はケーキバイキングに行くだけ。アイツが付いて来るのはおごらせる為にしゃぁなくだ。」


誰にとも無く言って時計を見る。


―9時30分―


待ち合わせ場所までは徒歩で10分。


あんなチャラ男が時間きっちりに来るとは思えねぇが・・・

まぁいい。だからってオレが遅れていく必要もねぇ。


いつものスニーカーを履いてっと・・・


「色気づいたようで安心したよ。」

母さんの言葉が脳裏に浮かぶ。


・・・ふ・・・ふんっ。


アイツは結構背が高いから、少しヒールのある靴を履いても丁度いいぐらいだろ。


靴箱の奥から真新しい箱を取り出す。

これも爺ちゃんが入学祝の時に贈ってくれた靴・・・


服に合わせた水色のオープントゥパンプス。


オレの柄じゃないと履いた事は無かったけど・・・

うん、クレッセンに行くんなら、このぐらいのオシャレは必須だ。


けしてアイツに見せる為なんかじゃねぇ。


・・・よし、行くか!!




・・・あっ、もう一回身だしなみの確認だけしておこう。


髪型・・・良し。服装・・・良し。持ち物・・・良し。

うん、今日はバイキングに行くだけ。決してデートなんかじゃない。決してデートなんかじゃない!!・・・良し!!


「行ってきます!!」

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