皇国第6航空軍
1939年、4月7日、
皇国第6航空軍、
「扶桑のガンシップです、時間通りですな、流石は信頼と義理の国です」
懐中時計を片手に髭面の彼は言う、
「ブルーア軍曹、全艦に伝えよ、予定通り、扶桑国への訪問を行うと、」
的確に指示を出す、
中央のチョッと位置が高い席に座る彼女が言った
「はいはい、それと私はこう見えても中将でさぁ、通信手、姫様からの命令だ、打電しろ」
ブルーア軍曹こと、ブルーア中将が隣に居た水兵に指示を出す
「軍曹、その姫様と言うのもやめてくれんか?」
立て続けに姫が言う、
やれやれと言いたそうな顔だ、
「お互いさまでっせ、それに姫様は正統な王族の血を引いてらっしゃる」
ニカッとブルーア"参謀長"が笑い飛ばす
「ガンシップより旗旒信号!!"ワレニツヅケ"」
双眼鏡を持った見張りが指を指しながら報告する、
「全艦より返信を受信、いつでも行けます、」
通信ヘルメットをつけた通信手が報告する、
窓の外を、
この艦隊と比べたら偉く非力な小さな航空機が4艇飛んでいる、
先頭を飛んでいるのが噂の新型ガンシップであろうか、
その他の3艇は見覚えがある形である、
40mm機関砲を両翼に2つ、胴体下に1つ、
翼は特徴的な逆ガル翼、この時代ではこれほどの小型艇にもかかわらず空を飛んでいるということ、
扶桑では『砲艇一号型』と呼ばれるこの艇は『ユンカースJu87』に非常に似ている、
新型機のほうは、
その前翼型が特徴的な艇で、
艇首に金属パイプでもぶっ差したかのように75mm機関砲が1つ、
更に翼内にも20mm機関砲、
これほどの重武装をしながらもあの速度、
『砲艇二号型』と呼ばれる最新鋭艇であり、『震電』に酷く似ている、
「あの機動力が羨ましいぜ」
ブルーア参謀が双眼鏡でその後を追う
「仕方あるまい、本国は未だにバカガラスの量産を続けている、扶桑国は先が見えている、バカガラスの量産は当の昔に止めてアホウドリの量産に移っているらしい」
そう言って、
姫は艦隊を見渡す、
バカガラス6隻
アホウドリ1隻
ブリッグ5艇
フリゲート7艇
コルベット10艇
スループ30艇
ガンシップ1艇
ガンシップに居たっては旧式の物のみが支給されてた、
バカガラスが元々足が遅く、艦隊行動に問題が起きているのにもかかわらず3隻も支給されている、
ここでバカガラスとアホウドリなどについて説明する、
バカガラス、
通称『空中戦艦』又は『飛行戦艦』
その名の通り、
空中戦艦とも言うべき火力を持っている、
1隻の前弩級戦艦の喫水線より下を巨大な飛行船にめり込ませる形で、
マストと煙突は重心の関係で下を向いている、
つまり、前弩級戦艦を飛行船にめり込ませた上で逆さまにつるしているといった表現が正しい
全長は『戦艦大和』をも凌駕し、500m級の巨大な戦闘飛行船である、
発祥はやはり神話の国『扶桑国』
アホウドリ、
『空中戦艦』ときたら『空中空母』
バカガラスから前弩級戦艦を取り除いたの飛行船の部分を横に一刀両断して飛行甲板を設けた航空母艦、
すらっとしたスタイルのお蔭なのか、
バカガラスの半分の体積であるために空気抵抗が少なく速力も出るが、
生まれたばかりの艦種のため未だに運用では試行錯誤の繰り返し
生みの親はやはり『扶桑国』
ちなみに、扶桑国では運用方法も確立しつつある
ブリッグ、
まるで前弩級戦艦の艦体に翼をつけて、
機銃や機関砲で重武装した戦闘艇
速度は出ないがそれでも速い部類
フリゲート、
皇国では、小さな5人乗りの飛行船の事を指す、
大きさはあのB-29をも凌駕する、
後部に機関砲、前部に旋回機銃座、
スピードも航続距離も中途半端なため、
哨戒艇的位置づけ、
コルベット、
大きさはB-29とほぼ同じ、
爆弾倉は無く、代わりに機銃で重武装されている
装甲が無いので戦場での消耗率が激しい機種争い上位である
B-29のような4発機ではなく機体の上に背負い式で1つのエンジンだ
スループ、
B-24をタンデム翼にしたような機体で
エンジンは合計で6発、
前翼に4つ、後翼に2つ、
運動性能もよく、
機首に200mm突破砲を1門、機銃、機関砲多数で武装されている、
対地攻撃、強襲突破戦闘等をもこなす機動艇である、
ガンシップ、
種類はさまざま、
扶桑国のように『砲艇一号型』や『砲艇二号型』の様な機動力があるのもあれば
皇国のような旧式の『サーム級』もある、このサーム級は『九三式陸上攻撃機』に似ている
この艦隊に配備されているのは旧式も旧式の『オーニソプター』の『ドーレン級』だ、
このように、
艦種は分かれている、
「そういやぁ、姫様、近頃またハンスクーヴァー連邦の動きが怪しくなりつつあります、」
航海図を見ながら参謀が言う
「あぁ、かつては500年も前、大陸をも支配した一大軍事国家だ、今じゃ、氷の国だが、」
一応歴史が得意な姫、
「内部紛争でも起こったんでしょうかい?」
もくもくと航海図に何か書き込む
「いや、古文書が正しければ何かの人為的災害だったらしい、それも巨大な何かだ」
そう言って姫は、
座席の下から古文書〔レプリカ〕を取り出す
「...と、言いますと?」
ピタリと手が止まる参謀
「丁度400年も前に衰退期を迎えつつあったハンスクーヴァーの連中どもは、古文書が言うには扶桑国との戦争をしていたようじゃ、艦隊決戦、戦車戦、そして扶桑国による空中戦闘艦誕生、更に『ハンスクーヴァー戦役』の敗退、短期間氷河期到来によるハンスクーヴァー神聖国の崩壊、連邦の樹立、周辺国家との紛争、滅茶苦茶だよあの国は」
姫は、短くも分かりやすく説明する
「がははは、最近じゃぁ遺跡発掘業に力を入れてますからな、何がしたいのか予測不能でさぁ」
再び航海図に向き直る参謀
「海に出ます、航空法切り替え!」
艦内を警報機の音が響き渡る
『切り替え良し!!』
「アイッサー、参謀長、全艦に潮風注意を打電します」
水兵の一人が報告する
「おうおう、やれやれ、...ん?あれは、」
そう言うと参謀は思わず双眼鏡を覗きこむ
「扶桑の高速コルベットです、4発エンジンですよ、羨ましい...」
水兵が羨ましそうに見る
B-29に匹敵するそのおきな艇は恐ろしく高速で3艇編隊を組み此方に接近する
『深山』に似ている、
「お前がぼやいてどうする、参謀の俺だって意見聞いてもらえないんだぜ?」
「それはお前が庶民出身だからだろ、」
姫が聞かれないように呟くも、
参謀の耳は地獄耳の如く、
「がははは、ひでぇや、」
姫の言葉を笑い飛ばす、
ちなみに、
扶桑国のスループは『一式陸攻』に似ているのは別の機会に話そう、
「どうせなら扶桑の重フリゲートに出迎えられたかったな!」
「全くです、参謀、」
庶民出身なのか、
回りに溶け込む力量は半端ではない、
貴族出身だったら艦外へ突き落とされていたであろう、
「い、1時方向!!扶桑の重フリゲートを1艇確認!!」
雲間から見え隠れする巨大な艇を双眼鏡に認める
「おお、嘘から出た真とはまさにこの事だ!」
急いで双眼鏡を構えなおす参謀
「あぁ、上を取られたら必ず負ける奴か、」
古文書を閉じ、
脳内検索した姫が言う
「20mm機関砲96門が胴体下についてますんでね!」
興奮気味の参謀は放っておき
眼下の海を眺める、
皇国の末っ子に生まれ、
更に父上の前国王が毒殺、
母上も地下牢獄に追放された、
現在国を仕切るのは父上を毒殺したアーデスだ、
必ず復讐すると言う心の闇を抱えつつもアーデスに接し続けた、
彼の5人の息子たちが居るのだが、
それぞれ1人1人に航空軍が分け与えられている、
此方の装備よりも豪華絢爛だ、
しかし、弱点もある、
そもそもあの阿保アーデスはこのアホウドリの性能をあまり評価していない、
来週には第1から第5航空軍のアホウドリ10隻が此方の陣営に入る、
つまり、第1から第5航空軍はバカガラスのみの艦隊になるのだ、
バカガラスでも小型戦闘艇をある程度格納できるが、それもフリゲートだけ、
しかも5本の指に収まる数だ、
その他の小型戦闘艇はアホウドリが無ければ陸上基地だけが頼みの綱である、
「姫様?お~い、アーレイド姫さん?」
参謀がしきりに呼んでくる、
「何だ」
「間もなく眼下にヒーンバーグ諸島国が見えますよ、」
にこっと笑う参謀に、
私は分かって居ると返事する、
扶桑国の北側に位置し、島国同盟を組むこの諸島国はかつてハンスクーヴァー神聖国と扶桑国の幾つもの洋上艦隊が壮絶な殴り合いを行った場所であり、
『アイアンボトム・サウンド』、よするに鋼鉄海峡の異名もある、
今でも潮の流れの関係で当時の姿を保ったままの多くの洋上艦がそこには眠っている、
主産業はそれらの洋上艦を引き揚げ、扶桑国に引き渡すサルベージ業が盛んだ、
「まるで巨人がはじきをした後みたいだな」
あっちこっちに散らばる宝石のような蒼い海に浮かぶグリーンのエメラルドの如く、
そこには所狭しと島が並ぶ
「にしても、バカガラスは腹が立つほど脚が遅い...」
逆さまの煙突から排煙を撒き散らしながら、
艦中央の5重反転プロペラ3基を回す
「仕方ないんっすよ姫様、本国の第1~第5航空軍までのバカガラスどもがエンジン用の人工筋肉を独占してるんでさぁ、その人工筋肉も、扶桑国の高馬力には負けますけどな!」
「ちげぇねぇ!!参謀長の言うとおりだ!!」
「「「「「ワハハハハ」」」」」
「だからって、石油機関があるだろ、今時時代遅れの石炭機関をよこしやがって、」
「だけど姫さん、あんたは俺たちのこの艦隊を指揮してて一度も損失艦出したこと無いぞ!」
「ちげぇねぇ!!お前の言うとおりだ!!!」
「「「「「ガハハハハ」」」」」
「おいおい、唯でさえ狭いアホウドリの艦橋だぞ、もうチョッと自重してほしいぞ、」
「まだまだ格納庫があるぜ!!」
「あそこは無いに等しい、」
的確な突込みを叩き込んだ姫、
ガガーン!!!!!
「ウッ!何事だ!!」
突然の閃光に目が一瞬くらむ姫
「報告します!!扶桑の高速コルベットが轟沈!!何者かの敵襲に間違いありません!!!」
窓の外を指差し青ざめた顔で報告する水兵
「見てても分かるぞ!味方同士で撃ち合うバカは督戦隊だけで十分だ!!」
あっと言う間に火を吹き見る見る高度を下げていく高速コルベット、
「ありゃぁ、大口径で間違いないでしょう、高速コルベットを意図も簡単に仕留めたんですから」
参謀が窓を開け艇の表面を確認する、
と、次の瞬間、高速コルベットにまた何かが叩き込まれ、
高速コルベットは、大気圏にその大輪の花を残し、乗員と共に四散した、
「クッソ、何処のどいつだ!こんな事をするのは!!」
窓枠に握った拳を参謀は叩き付けた
「参謀!!太陽の中に何か居ます!!」
身を乗り出し手で太陽の日よけを作り、
指を指して水兵は報告する
「あれは、ハンスクーヴァーのブリッグ!!奴等国際法を知らんのか!!」
脳内で今まで見てきた艦影を思い出し、
一番近いのを割り出す、
「バカガラス!艦隊1番艦被弾!!国際法違反を確認!!」
閃光が走り、
バカガラスの表面を火と黒煙が覆う
「そんなもん確認しなくたって良い!!!問題は撃ってきたことだ!!!!!」
窓枠に拳を数発叩き込む
「第二掃射来ます!!!」
ハンスクーヴァーのブリッグがまた火と鉛弾を吹いた
「伏せろぉぉッ!!」
艦隊のあっちこっちが煙に包まれる、
爆発音が静まり返ると、ブリッグは何かを探すように旋回を始める
「艦載艇!!発艦用意!!」
ここで漸く姫が動く、
アホウドリの格納庫が騒がしくなる、
コルベット10艇、スループ30艇、ガンシップ1艇の制空艇隊が訓練によって培われた速さで並べられてゆく
艦隊のブリッグは戦艦とのワイヤーを切り離し人工筋肉のエンジンを始動させる、
フリゲートも固定用ワイヤーが外されマストの先から徐々に離れ始める、
「敵艇!!直上!!スループ隊早くしろ!!」
アホウドリ上空を『ANT-20』に似た艇が横切る、
「バカガラス!艦隊1番艦ダメコン成功しました!」
艦橋につかの間の嬉しい緊急電が走りこんできた
「重フリゲート上昇します!!」
航空機で言う所の『富嶽』に似たその艇はよっぽどの馬力が有ったのか、
まるで小鳥の様にスムーズに上昇していく
「良いから全艇で当たれ!!」
「敵艇!!直上!!」
次の瞬間、
アホウドリの木製の飛行甲板に大穴が開く
しかし、爆発はしなかった、
「...」
参謀は艦内電話を持ったまま硬直、
姫も普段通りの冷静さを見せるが背中ではいやな汗をかいていた
「ふ、不発弾です、」
水兵がつばを飲み込みながら報告する
「制空艇隊はどうなっている、」
埃まみれに成りながらも参謀が言う
「扶桑の重フリゲート、高速コルベット、ガンシップの協力の下、敵のブリッグを重フリゲートの下に攻撃しつつ誘導中、コースまで、あと500です、」
激しい空中戦が展開されている上空を仰ぎ見る、
一瞬、閃光が走ったが、雲に隠れてて確かな確認は出来なかった
「艦隊速度は、」
そういわれた水兵がメーターに目を向ける、
「およそ200ベイです、」
※1ベイ=1ノット、の設定
※つまり、200ベイ=360㎞
「随分落ちたな、敵のブリッグは」
恐らくは先ほどの閃光と予想は立てておく
「先ほど、重フリゲートと一騎打ちで撃沈しました、」
やっぱりなと心の中で勝ち誇る
「よし、艦隊速度をあと50ベイあげろ、このまま進出しつつ陣形を整える、間もなく扶桑国だぞ、気を引き締めろ、それとこの事は本国へ帰り次第報告する、扶桑のコルベットは?」
並走するコルベットの姿が痛々しい
「3艇中、1艇が撃沈、残りは被弾していますが作戦行動に問題無しです、」
流石は神話の国と、
心の中で自分を納得させる、
「にしても、参謀長、扶桑と言えばぁ?」
水兵の1人が1枚の写真を取り出す、
「あぁ、第3次ヒーンバーグ海峡海戦の英雄艦、『戦艦:扶桑』だろ?」
そう言って、
ポケットから一枚の写真を取り出す、
大陸出身者であったら先ず皆持っている、
ハンスクーヴァーを除けば、
ボロボロの艦体をなおも空中に浮かせている『扶桑』の姿はそこには有った、
およそ3桁の数の敵艦からの集中砲火を食らいながらもその凛々しさを残す、
その3桁の数の敵をボロボロに成りながらもたった1艦で殲滅したその功績、
大陸からハンスクーヴァーの支配をなくした第1歩と成ったその海戦は、
400年経っても、今なお人々の脳内に鮮明に記録されている、
「艦齢およそ400年、洋上艦時代を含めると500年は超える超最古参兵だ」
姿は改装に次ぐ改装で原形をとどめておらず、
建造当初の洋上艦の姿の写真はコピーでも高値で取引される、
勿論、空中戦艦として就役した当時の姿、特に進空式はこれでもかと言う位に高値でごく稀に売られていたりする、
現在はゴテゴテとした本物の空中戦艦と化している、
姿は宮崎アニメのラピュタの『ゴリアテ』にそっくりだ
「全長312m、全高82m、全幅84m、最高速度90ベイ(就役当初)→297ベイ(現在)、巡航速度53ベイ(就役当初)→270ベイ(現在)、乗員360名(就役当初)→430名(現在)、ちなみに俺は5年分の給料をつぎ込んで買った洋上艦時代の扶桑の写真を持っていたりする、」
ポケットから綺麗にコーティングされた一枚の写真を取り出す、
その姿は『日本海軍 巡洋艦 厳島・橋立』に非常に似ており、
扶桑より以前の艦級は『鎮遠』の様な艦だった、
扶桑型は合計で5隻造られて居たが、その殆どをヒーンバーグ海峡海戦で喪失、
残った2隻の内、扶桑が改装されその伝説的な戦果を打ち立てた、
「今の扶桑の空中戦艦の殆どはあの時代、あの戦争を掻い潜った勲章艦ばかりだ、流石は神話の国だぜ」
大事そうに写真をポケットにしまい込む、
「軍曹、今その扶桑たちが目の前に居ると言ったらどうする?」
姫が冷静に、
面白そうに言う
「この人生に一切の悔いは無し!といった感じだな、姫様」
笑い飛ばす参謀、
それもその筈、
扶桑の姿を見ようと思ったら先ずは扶桑国軍の海軍部、更に聯合艦隊司令部に航空時間、出入港の時間を聞き出さない限り、
見られるのは奇跡に等しいのだ、
場合によっては半年以上帰って来ない事も有るからだ、
「雲間に飛行物体、軍曹、バカガラスたちの砲門を開かせろ、」
ある一定の方向のみ睨み付ける姫、
確かに他の雲に比べればその場所の雲は影を落としたかのように黒かった
「そうだ、全砲門10時方向、扶桑のフリゲートとコルベットにも伝えろ、」
そして、
雲が突然晴れるとそこには、
「げ~!!ハンスクーヴァーの制空ガンシップ隊!!?」
面倒くさそうな顔をして参謀は言う
予め装填しておいた榴弾が制空ガンシップ隊のど真ん中に炸裂する、
「恐ろしく鈍重な野郎だ、未だあの旧式を使ってたのかよ」
その外見は『八九式艦上攻撃機』に似ているが、
この世界のは陸上運用である、低速鈍重操作性最悪の汚点ばかりだが、
航続距離があるため現在でも使われているのが現状だ
「扶桑の重フリゲートが上を取りました!!」
雲間から蜘蛛の糸の如く幾つもの雲の糸を引いて出てきた、
胴体下部の20mm機関砲96門が一気に唸る
鉛弾のゲリラ豪雨だ
「撃て撃て!!奴等に思い知らせてやれ!!」
張り切る参謀を見て、
姫は呟く
「男って...」
勿論、主砲音で聞こえていなかったが、
「スループ乗りの血が騒ぐのか?軍曹?」
「当ったり前よ!姫様!何年スループに乗り込んで艇長を務めたことか!!」
こう見えて参謀はスループ乗りの名手だったのだ
その活躍はまたの機会に語らせてもらおう、
「おうおう、高速コルベットとガンシップが一騎打ちでさぁ」
持ち前の高速性能と運動性能であっと言う間に後ろを取る、
そこからは艇首の四連装旋回20mm機関砲の滅多打ちだ
ガンシップはあっと言う間にボロボロと砂のように崩れていく
「...奴等本当に国際法知らないのか?」
呆れた顔で言う参謀、
「あぁ、可能性は有るが、この霧は何なんだ?」
「さぁ?」
そして、
ここで、彼女たち皇国第6航空軍は初めて異世界からの漂流者と、
遭遇する、
着々と迫る欲望に満ちた戦乱、
開戦まであと1年と8ヶ月、
皇国:聖都『ガラド』
「何?失敗した?」
ワイングラスを片手に黄金で装飾されたイスに座る
やせ細った老人、
「は、父上、申し訳御座いません、アーレイドめを取り逃がしました、」
5人の青年がひざまずきその頭を下げ、
いやな汗をかく、
「...まぁいい、しかし、わざわざハンスクーヴァーの設計図をコピーした苦労は報わないとな、それに、ハンスクーヴァーに対する口実も出来た、」
口ひげを撫でながら不敵の微笑をする老人
「お前たち、引き続きあの女めを監視しろ、いいか、これは聖戦だ、エリア10は我々の手に!」
パンとワイングラスが割れ中身のワインがペルシャ絨毯の様な高級絨毯にこぼれる、
「「「「「神は偉大なり、父上は偉大なり、アーデス一家に光栄あれ」」」」」
青年たちが口々に呪文の様に唱える、
「そうだ、我が名は、"アーデス"なり、」
『アーデス・アーバーバン戦役』開戦まであと、
ー1年と8ヶ月ー