表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピース・メーカー  作者: ウミネコ
第三章
PR
49/94

四十六話

 ルーチェは目を閉じ苦痛の瞬間が訪れるのを座して待った。

 思えば、弟と袂を分かつ原因になった母の死は、ルーチェにあった。

 ルーチェが〝印石〟に触れ、怪物を呼びさえしなければ、母は死なずにすんだ。

 ユアンスウを喚び、アレスを喚び、シンを喚んだ。

 他にも、自分が知らない所で、たくさんの〝何か〟が喚び出されているのだろう。

 それらは全て自分が願った望み。

 私の祈りを世界が反映した結果。

 グロースとクラインの戦争の遠因を作ったのも、自分自身。

 だからきっと。

 ヴァイスに指を削がれるのも、運命なのだろう。

 だけどせめて。

 みんなに謝りたかった。

 自分に付き従ってくれる人たちに一言、ごめんなさいと言いたかった。

 それが、唯一の後悔。

 死ぬのが恐い一番の理由。

 想像する痛みで涙が溢れ、恐怖で身体が震えた。

 いまやいまやと指が切り落とされるのを待つ時間が、永遠に感じる。

 ルーチェの、泣き、怯え、震える姿を彼らは極上の愉悦として眺めているのだろう。

 だが、いつまでも訪れない激痛を不審に思い、そっと瞼を開ける。

 捉えた視界に、驚愕し、涙した。

 背中があった。

 まだ日が浅いけど、いつの間にか見慣れた背中。

 奇妙な格好をした、私が異世界から喚んだ少年。

 些細な事で喧嘩し、ルーチェの我儘に付き合ってくれた男の子。

 彼に恋をし、彼も私に恋してくれた。

 神様に祈り、神様と同じ名前を持つ少年を世界は寄越してくれた。

「シン……!!」

 一条真が、いつの間にかルーチェの前に立ち、〝銃〟を構えヴァイスとヴリエーミアと対峙していた。



「大丈夫か、ルーチェ?」

 真は、泣きじゃくるルーチェに優しく声をかけた。

 ルーチェは嗚咽まじりに、「うん……、うん……!」と頷く。

「私は、大丈夫……! シンは……?」

「俺もまあ、何とか平気だ。他のみんなはちょっと危なそうだけど……」

 真が周囲を見渡す。

 フーもリウビアも、ユアンスウやアリアも虫の息のようだ。頼みの綱のセラピアはアレスとともにいるが、この戦闘が終わらない限り、彼女の介入は不可能だろう。

 真は銃を構え、ルーチェを抱き寄せる。

「行くぞ、ルーチェ。みんなを救い出そう」

「うんっ!」

 一条真とルーチェ・クライン。

 神の名を持つ少年と、光という意味を持つ少女の、反撃の瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ