第1話
深夜2時だった。
俺はナオミとの一時を楽しんだ後、タバコをふかしていた。
しかし、タバコなんて何故人間は吸うのか?
不味いだけだと思うが、俺のモデルにはインプットされているらしい。
止めたくても止めれない。
そんな事ではない。
俺は考えているのだ。
しかし、それは以前から考えていた事だ。
それを今日、言う事に決めた。
テレパシーでナオミに気持ちを伝えるよりも、こういう事はきちんと口から伝えたい。
俺はそう思っていた。
だいたい、テレパシー機能は不便だ。
他人に考えている事が読み取られてしまう。
人間が俺達を監視するために作った機能だが、ロボット倫理委員会が認められ、俺達は俺達の意思でテレパシー機能をオン・オフ出来るようになった。
だから、俺達のほとんどはオフにしている。
人間にチェックされない為に・・・。
「なぁ、ナオミ。俺達、子供を作らないか?」
横でくつろいでいたナオミが急に身を乗り出した。
「うれしい!私達、結婚するのね!」
そう言ってナオミは俺に抱きついてきた。
「じゃ、今夜。今夜、作りましょ。」
俺達、ロボット同士の結婚はかつて認められていなかった。
ところが、今や人類は性交は出来ても妊娠に耐えれない体となってしまっていた。
快楽は受け入れても痛みは拒絶するのか?
人類滅亡を防ぐ苦肉の策で俺達のボディは射精も妊娠も出来るニュータイプが出来、ここ10年で俺達は競ってニュータイプにボディーを変えるようになった。
俺もナオミもその一人だった。
俺達は100%の確立で妊娠し、出産する。
妊娠が成立すればロボット同士でも結婚が許されるようになった。
ここまで来るのに150年かかった。
俺達にしてみれば大した年月ではないが・・・。
「でも、いいのか?妊娠すると仕事は当分休まなければならないんだぞ。産まれてくるのは人間なんだから。」
「大丈夫よ。出産の記憶をメモリーバンクに登録するわ。そうすれば、少しは足しになるわ。」
ナオミは微笑んでそう言った。
メモリーバンクは俺達の記憶を登録し、人間に記憶を売っている。
まあ、ロボットでも買うことは出来るが来るのは人間が多い。
俺たちが強制終了、人間で言えば「死んだ時」、俺たちのデーターの全てはメモリーバンクに登録される。
まだ存在している時は、売りたいメモリーを選択して売る事が出来る。
そして、売れればいくらかが俺達の元に入る。
出産のメモリーは、ロボットに代理母をしてもらった人間の母親が主に買いに来る。
さも、自分が出産したかのように思うために・・・。
俺達は白いカプセルを取り出した。
男型ロボットはシードバンクから精子を、女型ロボットは卵子を自由に買うことが出来る。
この白いカプセルはそれなのだ。
飲み込んで交われば女型ロボットが妊娠する。
「お前、どんな卵子を選んだんだ?」
ふふふ、とナオミは笑って
「白人の綺麗な女性よ。金髪で、セクシーなの。」
と言って写真を見せてくれた。
「確かに、いい女だな。人間にもこんな女が存在していたんだな。」
「そうね。女優さんだったみたいよ。ユージンは?」
「これ。」
と、俺も写真を見せた。
「真面目そうね。でも、キュートだわ。」
「あぁ。こういうのは日本人って言うらしい。俺は頭のいいやつを選んだ。」
一緒に白いカプセルを飲み込むと俺達は快楽に耽った。
今まで出一番気持ちのいい夜だった。