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東西南北物語  作者: karon
東村高校
6/29

懐かしい言葉

 思いっきり腕をねじり上げられて男がけたたましくわめき散らす。

 その言葉はかほるにとって整合性のあるものだった。

「こいつ、英語をしゃべっている、どうやらここは地球上のようだぞ狼」

「あのな、こいつの武器を見てみろ、たとえ地球上でも、十八世紀以前のイギリスなら、異次元に落ちたのと変わらないじゃないか」

 言われてみれば、この建物の中にも配線らしいものを見た記憶がない。

 見渡してもスイッチらしいものもない。いや、よく見れば、壁のくぼみは何かを燃やして明かりにするための場所なのでは。

「どうしよう」

「ええと、英語わかるんなら、こいつ尋問してみろや」

 言われてかほるは肩を逆関節に決めた。

『さっきは何の真似だ』

 かほるは小学生の頃からちびっ子英語教室に通っていた。

『王を隠された王を殺すためだ』

 王という単語で、かほるは英国史を検索してみた。

 隠された王という単語に引っかかるものは何も見つからなかった。

「適当な拘束するものは持ってないか?」

 狼に訊いても狼は小さく首を振るだけだった。

「じゃ、シャツを脱げ」

 奪い取ったシャツで、腕を縛り上げた。

「気絶させるとかできないのか?」

 シャツを奪われた狼は寒そうに、身体を抱きしめる。

 この場所の気温はやや低い。石造りの建物のせいもあるのだろうけれど。

「王って何だろうね」

「馬鹿にするな、キングぐらい聞き取れる」

 狼は胸を張った。しかし、それが聞き取れなかったらそれは十分問題だと思う。

「イギリス史を丸暗記しているわけじゃないからわからないけど、隠された王って誰のことだろう」

「そんなこと、俺が知ってるわけないだろう」

「だからそこで胸を張らないでくれ」

 かほるはなんだか疲れて、建物の窓から外を見る。

「一階じゃだめだな、二階以上登れば、遠くまで見えるかな」

「門題は、階段がどこにあるかだ」

 建物の外壁から三階以上の高さがあるのは確かだが、未だに階段を見つけていない。

 その時、狼が口を開いた。

「どうやら、新手だ」

 くすんだ毛織らしい衣服を着た中年男。その男は、二人を見たとたん逃げようとした。

 狼が取り押さえる。その時男は叫んだ。

「助けてくれ」

 二人は顔を見合わせる。

「十八世紀に、イギリスに日本語を話せる人間は」

「いるわけないと思うんだが」

 かほるは、取り押さえる手を思わず緩ませてしまった。



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