探検中に襲われました。
まず調べるなら手近の建物、それから残る三つの建物を調べよう、二人はそれで合意した。
最初に入った入り口以外にも入り口があるようなのでそこからも入ってみる。
おそらくさっきの入り口は、納戸の入り口で、ここが正規の玄関だとかほるたちは判断した。
扉には鍵がかかっていなかった。
玄関といっても、靴を脱ぐ場所ではないようだ。下駄箱というものが存在しない。
ホールになった場所から、まっすぐに廊下が伸び、その向こうは二つに分かれた廊下だった。
「二手に分かれるか、一緒に行動する稼動する?」
二つに分かれた廊下の場所まで来ると、二人はそのまま顔を見合わせた。
「とりあえず、離れないほうがいいな」
狼はそう判断した。なんといってもこの建物は後者とどっこい野規模だ、下手に迷子になられたら、厄介だ。
かほるも、そう考えた。相手の方向感覚は知らないが、それでも分かれて迷子になる可能性を無視することはできない。
二人はコイントスで、進む方向を決めると、そのまま通路が分かれたら右、と決めて進んだ。
最初から右と決めておけば、帰るときはひたすら左に曲がるだけですむという合理性を追求した形だった。
石を組んで作り上げた建物のようだった。ところどころ、木の枠のようなものが見えたが、ないそうに気を使って漆喰や壁土を塗ったような形跡はなかった。
「本当に人の住むところか自信なくなってきた」
かほるはそう呟いた。
その時、何かが落ちる物音がした。振り返った二人の前に、刃渡りの長い刃物を持った男が立っているのが見えた。
髪と瞳は黒い、一見すると東洋人のように見えるが、そのわりに妙に堀が深い気もする。
そこまで見て取った二人はそのまま、相手に飛び掛っていた。
凶器を携えた相手に無謀なとは思わなかった。
こういう場合、背中を向けて逃げるのも危険だ。
それならば二人係という数の有利に頼ろうと判断した。
かほるは喧嘩の場数は相当踏んでいた。
一見すると普通の高校生だが、いかにも不良といった風采の人間も、かほるを見ればこそこそと逃げる。
そして、かほるにとって幸運なことに、一緒にいた狼もそこそこ場数を踏んでいたということだ。
左右から両腕を抑えるという形で男を取り押さえると、かほるは腕をねじって刃物を取り上げ、向こうに放り投げた。
相手の背中に馬乗りになる形で、押さえ込む。
「思ったより、やるな」
「そりゃ、この名前だから、そのせいでしょっちゅう喧嘩沙汰でさ」
かほるはむなしく笑う。
何故よりによってかほるなのだ、せめて、かおるにしてくれれば。
そんなことを思って親を呪ってしまうかほるだった。
東村高校は男子校だ。当然かほるもれっきとした男だった。
別に女とは一言も言ってませんよ。言い訳。