玄関を出たらそこは草原だった。
それはいつもと変わらない放課後のはずだった。
しかし、玄関を出ればそこは草原だった。
そして、背後を振り返れば、そこには見知らぬ建物が建っていた。
今日は狼と二人で行動していた。そして一緒に校舎の玄関を出たはずの他の生徒は誰もいない。
背後の建物は、大体校舎くらいだろうか。
そして前方にも三軒同じような建物が建っていた。
しげしげと観察して気付く。それは他の三校。西部高校。北斗女学院、南十字星高校とまったく同じ配置だということに。
しかし、その周囲には建物らしい建物は一軒も建っていない。ただ生い茂る背丈の高い草の荒野だ。
地平線の向こうに木立が見える。
「あそこまで行って見るか?」
狼の提案に、かほるは首を振った。何が出てくるかわからないし、建物があれば最低の風雨はしのげる。
「いや、この建物の中を探ってみよう」
扉を開ければ、やっぱりそこは玄関だったりしなかった。もう見慣れてしまった下駄箱の列やかさたてなどはまったく見当たらない。
代わりに木製の、何に使うか意味不明の道具が並んでいる。
「これは、馬を繋ぐ道具じゃないか?」
狼がそう呟く。
よく見れば、馬の鞍かもしれないものが付近に積んである。
「学校の近くに、馬で歩く場所なんかなかったよな」
「当然だ、確か競馬場もなかったはずだぞ」
それ以外にも雑多なものがつんであり、どうやら、ここは、いらないものをしまっておく倉庫のようなものらしいと結論付けた。
「どうやらとうとう東西南北の怪奇現象に巻き込まれたらしいな」
狼の言葉に、かほるも頷く。
しかし、以前巻き込まれた、博次や狼以外の友人から聞いた話は、階段を上っていたはずなのに、二階から一階に出たという実に地味なものだった。
こんな今まで見たことも聞いたこともない場所に放り出されたという派手なものではなかった。
「人を探すか?」
狼の言葉にかほるは思わず考え込んだ。
「もし、人がいても、はたして、日本語が通じるだろうか」
狼のこめかみに冷や汗が伝ったのがわかった。
ここはもしかして日本じゃないのだろうか。一瞬にして遠い外国に飛ばされたのでは。
だとすれば不法入国。不法出国。これでは立派な犯罪者だ。
「外国くらいなら、まだいいかもしれない」
狼の言葉に、かほるは目を瞬かせた。
「異次元ということはないよな」
かほるは笑えなかった。校舎から出ただけで、はるかな異次元に落ちる。或いは遠い外国に飛ばされる。どっちもどっちだが、同じ地球上であるならば、外国のほうがましな気がした




