表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東西南北物語  作者: karon
南十字星高校
26/29

ある日の出会い 2

 夕子はヒアリングがあまり得意ではなかったそのため単語の応酬になったが、かろうじて意思の疎通はできた。

 名前はアルマ。年は八歳。ここはどこかわからない。

 全く役に立たない情報だけが交わされる状態ではあったが。

 血の滲んだ足にハンカチをまいてやる。

「どこから来たの」

 そう呟いてからその単語を思い出す。

 アルマは向こう側を指差した。

 夕子がそちらに行ってみると、内側から破壊されたような状態のぼろけた木箱が置いてあった。そしてその木の破片に、かわいた血のついた痕跡の残るものがあって。裕子はアルマの足の傷跡をちら見してみた。

「ここにいたの」

 思わず声が震える。

 木箱のサイズは、たぶん子供が入るくらい。それですべての状況が分かった。

 小さい子供を箱に詰めて運ぶ。どう考えても犯罪だ。だらだらと背中を冷や汗が伝った。

 誘拐犯。それとも人身売買。

 どちらにしても凶悪犯罪、もしそんな連中に見つかれば命はない。

 夕子はアルマの手を握った。

 この場を離れよう。そうだそんな凶悪犯に出くわしたっていいことななにもない。

 きょろきょろと周囲を見回して誰もいないのを確認しつつ足音を殺す忍び足でその場を後にする。

 廊下には等間隔に、壁にはめ込み式の行燈のような火がついている。だから進むには問題はなかった。しかし、そんなものがあるということは頻繁に人の行き来があるということでもある。

 曲がり角に来るたびに、誰もいないのを確認しながらそろそろと進む。

 ここは人身売買か、誘拐犯のアジトだ、できるだけこの建物から離れなければ。

 そろそろと、ゆっくり、それでいて全速力で夕子は外を目指した。


 歩いて行った先に階段があった。それも上り。今まで歩いていた場所に窓はなかった、だからここは地下かもしれない。

 そう思った夕子は階段を上ってみることにした。

 階段は、石畳で舗装されている。まるで屋外の階段だ。

 進んだ先には、窓のある廊下があった。窓から外をうかがう。そして夕子は失望に舌打ちした。

 そこは二階だった。どうやらこの建物は一階にはあえて窓を作らず、二階以上に窓を作る仕組みらしい。だとすればこの建物から出るには、一度、一回に戻って玄関をくぐらねばならないらしい。

「やっぱり防犯のためかな」

 無駄なことをしてしまった。

 それに窓から見たこの場所はあちこちに別棟がある、結構大きな建物だった。

「玄関の位置は、あんたに聞いても無駄か」

 アルマに聞いたとしても箱詰めにされていた少女にこたえることができるはずもなく。そもそも言葉の疎通も不能だ。

「君は誰だ?」

 ふいに背後から声をかけられた。それは日本語だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ