実はそうでした
戦うものたちの哀歌や呉越同舟膝栗毛を読んだ方にはちょっとネタばれです。
かほると狼が制服に鞄を持って、最初にこの世界に来た建物から出た。
そこはいつもの下校時間。二人はそのまま歩き出した。
そしていつの間にか現れたのか博次が、二人の後を追って歩き出す。
誰も不思議には思わない。いつもどおりの下校風景。
翌日、昼休みに、かほる達は校庭の隅に集まって弁当を使っていた。
狼と博次。そして博次の幼馴染の少女。彼女がかほるたちを送っていった術者だと紹介された。
他校の生徒が昼休みにいるのは珍しいことではなかった。
実際は禁止だが、近くにあってそれなりの交流がある以上、休み時間に周りの高校の生徒が入っているのは誰も見てみぬふりをするのがお約束になっている。
「そういえば、お前、なんか気がついたとか言ってなかったか?」
それは、かほるが、あの世界で呟いたことを狼が蒸し返した。
「英語で書いてあった文章なんだが」
かほるは、思い出せる限りでその文章をノートに書き記していた。
『かつて戦争があった。
戦争で大地は砕け海は煮えたぎり、風は灼熱をはらんだ。
そして天に逃れた者たちがいた。
われらの祖は地の底に潜り、時を待った。
再び大地が緑を取り戻し我らの祖は大地に戻った』
かほるはノートを叩いた。
「まあ、ざっとした内容だが、そんなに間違ってないよな」
そう博次に尋ねる。
「歴史書の最初にそんなことが書いてあったような」
かほるは重々しく告げた。
「たぶん、俺達は異次元空間に落ちたんじゃない。俺達はたぶん、タイムスリップをしていたんだ」
狼が目を瞬かせた。
「タイムスリップ??」
「後悔すると言っただろう。たぶん、これは第三次世界大戦のことを書いてあるんじゃないか」
狼はまじまじとノートを睨んだ。
「戦争、つまり核戦争があったということか?」
かほるは重々しく首を振った。
「違う、これから起きるんだ」
狼は、頭の上に巨石が落ちてきたような気分になった。
これから核戦争が起きる。
いずれは起きると怪しげな駆ると雑誌で読んだことはあったが現実感はなかった。
「じゃあ、俺達は」
「場所はこれっぽっちも動いてやしない。俺達はずっとここにいた、この近所界隈を彷徨していただけだ」
狼は呆然と辺りを見た。
ここがあそこになるのか。
あのうち捨てられた建物が立ち並ぶ廃墟に。




