アルマの真意2
その言葉を聴いたとき、かほるはとてつもなく何かに納得した。
王には王妃が普通はついているものだ。なるほど、右も左もわからないかほるを王にしてその隣の王妃が政治をする。
ありそうなことだ。
ひとりで納得している、かほるを気味悪そうに狼が見ている。
「どうしたんだ、お前」
「いや、俺としても、無償の善意は気味が悪いし、世のため人のためしか言わない奴はどっかとっつきが悪いし、ある程度自分のエゴイズムを満足させてる奴のがましだなと思っただけだ」
「だから、意味がわからん」
狼はかほるをせっつく。さっき乱入してきた男の言っている意味がわからないので状況が今ひとつ理解できていないのだ。
かほるたちの会話が理解できないのは相手の男も同様だったため胡散臭そうな目で二人を見ている。
「まあ、ぶっちゃけ、御妃様になりたいのかって博次に言っている」
あえてアルマの名前を使わなかったのは、アルマと言う単語にどういう反応をするかいまいち読めなかったからだ。
「隠し事などいたしません、そちらに殿下はおわします」
あっさりとばらされて、かほるはそちらを睨んだ。
「おい、厄介ごとを俺におしつけようってのか」
日本語でそういうと、次に英語に切り替える。
「王になれと言われているのは俺だが」
男はしばらくかほるを見ていた。
「殿下、だまされてはなりません、そちらの目狐こそ、殿下をかような立場に追いやった張本人でございます」
「それは無理だろう、だって同い年だし」
かほるが幼児の時、日本に放り出された。そして、かほるが幼児なら当然アルマこと博次も当時幼児だったはずだ。
そういう道理をすっ飛ばすような人間をあまり信用する気にはならない。
さてどうしようかと、かほるは男を見ていた。
「アルマが王妃になりたいなら別にかまわない。最終的に、まともな為政者になるならな」
かほるはそう断言した。視界の隅で、アルマが何故か頭を抱えていた。
すっかり毒気を抜かれた男を脇においてアルマが近づいてきた。そして日本語で囁く。
「あのな、これで俺達結婚しなけりゃ収まらなくなったぞ」
「え、そのつもりだったんじゃ」
「んな訳あるかあいつの邪推だ」
しかし顔を至近距離で近づけての会話は、内容を理解できなければまるで睦みあっているようにしか見えない。
「何がどうしてそうなったのか俺に説明してくれ」
狼がやっと聞き取れるようになった会話を聞いて余計に混乱を増やし、そうぼやいた。