アルマの真意
再び、馬車でアルマの館まで戻る。
アルマの地所がどのくらいの範囲まで広がっているのか、隣の地所の人間とはどう付き合っているのか、そんなことは考えてもしょうがない。
そして、ふと、博次のことを考えてみた。
そもそも博次はどんな奴だったのか、生徒会長に、いきなり呼び出しをくったときにとなりにいただけの。もしかしたらあの時隣にいたのはわざとだったのかもしれない。話しかけるきっかけを求めて。
自分にあてがわれた寝室で転がりながらかほるは博次のことを考えていた。
博次は、基本ただ隣にいるだけだった。自分のことは極力話さず、自分や狼の言っていることに相槌を打つぐらいしか大体はしゃべらない。
今にして思えばぼろを出さないためだったのかもしれないが。
狼が食事に行こうと呼びに来た。かほるはのろのろと身体を起こす。
のたのたとかほるは歩いていた。食堂に向かうそこになにやら殺気立った。男が立っていた。
年のころは三十半ば、短く刈り込んだ栗色の髪。がっちりとした体型。ぱっと見かほるはどこの筋の人だろうと思ってしまった容姿だった。
この国にやくざがいるとは思えない。いるかもしれないが、たぶん彼は違うだろう。そうなると当てはまりそうなのは、軍人だろうか。
ありそうだ。警察官も危ないところに配属された人間はやくざに似てくるらしいし。
目の前の男と警察官に失礼なことを考えながら、かほるは、そこの男をボーと見ていた。
「なんか殺気立ってないかあのおっさん」
狼が見たままを言う。
相手はかほるのほうを一瞥したが、どうやら日本語が通じていないようだ。
さもなければかほる達はどういう目に合わされていたか。
しかし、食堂の前に突っ立っていると言うことは、この男をかわさなければ、食堂に入れないということで。
アルマはすでに食堂に入っているのだろうか。
かほるは食堂の前で立ち尽くした。
「お久しぶり」
ハスキーな声で、それも英語でアルマは呟いた。
「困ったわね、お食事あなたの分は用意してないわ、だってくるってあらかじめ知らせてくださらないのですもの」
アルマは鼓惑的な笑みを浮かべる。
「何を企んでいる」
「企むなんて人聞きの悪い」
なんとなくわかる、あれは人を煙に巻くための笑いだ。
「お前は、王を利用して権力を手に入れるつもりだろう」
男はアルマを糾弾する。
そしてかほるは、心の中で手を打った。そうか、そういう考え方もあるんだと。
確かにかほるが王になっても、何もできないだろう。たよれるのはアルマだけとなればおそらく政治的なやり取りは殆どアルマの手にゆだねられる可能性は高い。
「王妃に成り上がるつもりか」