術者
前回の更新では不都合があったことをお詫びします。
目は覚めても事態はまったく変わらない。
見慣れない木の枠組みでできた天井が見えた。いかにも時代がかかったおそらく十八世紀くらいの工法で作られた部屋の中、かほるはどんよりと起き上がった。
固いマットレスはせんべい布団で寝る程度の寝心地だったが、それでもあの場所での熟するよりはましだったのだろう。
「たぶん、朝飯も出るし」
勤めて明るい展望を口にする。
狼がもぞもぞと起き上がる。
「朝飯……」
半覚醒状態でゆらりと起き上がる。
扉が開いて、洗面器とタオルに使うらしい布を持った小母さんが入ってきた。
こちらが置きだした気配を探っていたのだろうか。
無言でベッドの横の小テーブルに洗面器を置くとそのまま出て行った。
「王様に対する態度じゃないな」
「王様だから口を利くのは畏れ多いんじゃないか」
二人は軽口を叩きながら、顔を洗い、寝る前に脱いだ服を着た。
「もし帰れたらどうなっているんだろう」
かほるはそう呟いた。
「それってつまり、ここですごしたのと同じだけ時間がたっているのか、それともあの玄関を出たその瞬間に戻れるのかってことか」
「まあ、戻ったときにわかるだろう」
そう言って、二人は、身支度を整えるとそのまま廊下に出た。
夕食を食べた部屋に戻ると、予想通り、朝食の用意がしてあった。
夕べの豪華絢爛な料理に比べると品数は少ないが食欲をそそる匂いは変わらなかった。
それぞれの席に、スープとパン。それがそのままの代物かは別だが、そして目玉焼きとゆでた野菜。そして真ん中にチーズに見える代物の、盛り合わせの皿が鎮座していた。
そしてアルマも主人の席と思われる席にすでに坐っていた。
夕べはアルマは食べている様子がなかったが、今朝は食べるようで、空いた席と同じように料理がその前に並べられていた。
「とりあえず、俺達はどのくらいで帰してもらえるんだ」
狼が一番聞きたいことを尋ねた。
「後数日ください。術者の体力回復待ちです」
アルマの言う術者という単語にかほるは引っかかった。
「術者って言うのは何なんだ」
その疑問に、アルマはしばし考え込む。
「そうですね、あちらに術者に相当する人間はいなかった。なんと答えればよいのでしょう」
アルマは額に手をやって考え込んだ。
「普通ではできないことをできる人です」
考えた末に、一番シンプルな言葉で説明した。
「何でもできるというわけではありませんが、彼らには彼らの枠が存在します。それを超えることはできません。ですが普通の人間には、できないことはないように見えます」
その説明ではまったく意味不明だが、それでも一つだけ理解できた。
「つまり、術者が、俺達をここに呼んだんだな」
「その場を作ったのは彼女です」
どうやら、術者は女性のようだ。
「超能力者みたいなもんかな」
アルマの説明から一番蓋然性の高そうな答えを狼が導き出した。
「呼ぶのは、あの場所ではなければならなかったそうです。何故なら、あの場所で自然に起きる現象に、干渉するという方法でしか、あなたたちを呼ぶことができなかったから。そう言っていました」




