悲劇の後
『悪魔の子!!』
火で燃える家。怯えて泣きわめく俺の妹アーニャ、震えながら妹を庇うように抱き締め叫ぶ母、その母の目に映るは紅く光る目をした俺自身。
ふと後ろを振り返ると派手に散った人だったと思われる肉片の数々。俺は正気に戻りただただ悲鳴のような叫び声をあげた
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俺は汗まみれで布団から飛び起きた。
あれから15年の月日が流れた・・・
窃盗、殺害、生きるためには何でもやった。
今日も生きるための生活費を求めスラム街にある部屋を俺は後にした。
アルランド王国大通りPM18:28
「らっしゃい、らっしゃい」
今日もこの町は活気にあふれ、人通りも多い。
俺の穴場だった。
横を素通りする女性剣士。
よし、今日の獲物はコイツにするか。そう思い、相手にぶつかり、その隙に相手の腰に手を伸ばす。
失敗するはずもなかった。今まで10年も磨きあげたスリのテクニックだ。しかし、相手の腰には先ほどまであったはずの巾着がなくなっており、自分の懐に風が通りすぎた。
「っっ!!」
不安に思い直ぐ様懐に入れていた自分の巾着を探す。
ない・・・
直ぐ様振り返ると少し先で立ち止まっている美しい金色の長髪を風に靡かせている女性剣士を眺めた。
「ついてこい・・・」
女性剣士は振り返ることなく歩いて行く。
俺は気づかれたとも、逃げなくてはとも思った。しかし、その女性剣士の綺麗な金色の髪に見いられたのか気付くと相手の後ろをついていっていた。
アルランド王国大通り(甘味屋)PM17:10
俺はなぜか女性剣士と共に餡蜜を食べていた。
なせだ、なぜこうなった。
普通なら騎士などに突き出すだろうと疑問に感じながらも警戒しつつ餡蜜を食べる。
すると女性剣士が口を開いた。
「筋は良いが今回は相手が悪かったな」
ニヤリと笑いながら俺の巾着であろう物を懐から取り出す。
「何が目的だ・・・」
「目的など無い、ただの気まぐれだ。」
「さっさと騎士にでも売り渡せば良いだろう?俺は失敗したんだ。」
投げやりにいい放つ俺に女性剣士は、ほうっと笑い俺に選択肢を与えた。
「面白い事を思い付いた。貴様、騎士に売り渡されるか、私と共に来て冒険者になるか決めろ。
あっ、まだ自己紹介してなかったな。私はルルフェット、ルルフェット=オズウェル。ハーフエルフだ。」
「自己紹介なんか・・・シルクでいい。」
ルルフェットは名前を名乗ったのを共に来る事の同意と確認すると俺の手を引き、代金を払い甘味屋を後にした。
ちなみに俺の巾着から・・・