終わりのトキ
『ここは何処だ?』
『俺は誰だ?』
『暗い・・・くらい・・・クライ・・・』
暗い闇の中に立ち尽くしている少年とその周りを囲むかのように見守る紅、蒼、緑、茶の光を纏った四人の女性。
その女性達が口を開くが何を言ってるのかわからない。
遠くで鳴っている大きな音と共にその世界は崩壊していく。少年はその女性達が消えるのをただ見つめ、目を閉じた。
目を覚ますとそこは先ほどの暗い世界とは売って変わり白い天井、窓から差し込む朝の日差し。
少年、麻野雄二の部屋であった。
「またあの夢だ…」
幼い頃に良く見ていた夢を最近毎日のように見るようになり呆れ、首筋を左手でかく雄二。
何故、高校2年にもなった今この夢を再び見るようになったのだろうと疑問に感じ悩んでいると階段の下から女性らしい甲高い声で声を張り上げる一人の女性。
「おにぃちゃん早くしないと遅刻するよ?」
「わかってるよ、魅華」
雄二は、自分の妹、麻野魅華に声を張り上げ返事をし、直ぐ様学校に向かうための用意を始めた。
「早くしてって言ってるでしょう!」
用意が遅かったのか、部屋に乱入してくる魅華。雄二は直ぐ様逃げようとするが、その方向には既に先回りした魅華が回り込んでおり、朝から痛め付けられた。
これが麻野雄二の日常であった。
「お兄ちゃんが遅いから遅刻するじゃない!」
ならば先に行けば良かっただろうにっと心の奥底で呟きながら妹、魅華の後ろを走って行く雄二。
その瞬間、雄二はその後ろから背筋が凍るような冷たい視線を感じ振り向くが誰もいなかった。
「・・に・ちゃ・・ん・!!」
遠くで魅華がなにやら焦ったように叫んでいる。
振り返り魅華の顔をみると恐怖に染まっている。その時右側から鳴るクラクションの音。
死んだと確信し目を瞑ったその時前から押され俺の体は飛ばされた。
目を開くとそこには店に突っ込んだトラックと・・・・頭から血を流し倒れている魅華がいた・・・・
一瞬その光景に何も考えられなくなる。ゆっくりと駆け寄ると雄二は魅華の体を抱き上げた。
手にはドロッと生暖かい赤い液体が付着した。それを眺め壊れたように声にならない叫びをあげた。
「ーーーーーー!!」
まだ青い空を眺め神を恨むかのように目から涙を流す。
そんな時、雄二の頭に声が響く。
―助けましょうか?その少女を。その女性を。その方の未来ヲ。―
その言葉を聴き何度も泣きながら頷く。
―では逝きましょう生と死が散乱する世界へト―
そのまま俺は電源が落ちるかのように目の前が暗くなった。