友達辞めます
***BL*** もう友達辞めようかなと思った。
ハッピーエンド
友建辞めよう、、、
そう思いながら、彼の横に立つ
*****
僕、舘野誠には好きな人がいる。
「コイツ。俺の友達!」
小さい頃からそう言って紹介されて来た。
その度に、僕は愛想笑いをしていた。
小学生の頃からずっと、、、。
僕は友達にしかなれないんだ。
**********
俺は小さな頃から、誠が好きだった。
誰にも取られたく無くて
「コイツ、俺の一番の友達!」
と紹介していた。
誠は人見知りをするし、余り人と関わらない。俺が他の奴らと一緒にいると、いつも一人だった。
俺には友達が沢山いるのに、アイツが俺以外と仲良くするのは気に入らない。
だから、誰かがアイツに近付くと、俺はそれを邪魔してしまう。
誠が一人でいると安心する、、、
**********
休み時間は放ったらかしなのに、登下校は一緒。
朝も放課後も迎えに来てくれる。
「誠!」
と呼ばれて、僕は立ち上がる。
*****
中学校から家までの10分を、二人で歩く
「俺、彼女が出来たよ」
「え?、、、」
「誠も彼女欲しかったら、彼女の友達、紹介して貰うけど?」
僕は達也の顔を見た。
きっと、悪気は無いんだ。分かってる。
でも、がっかりした。
「有難う。考えておくよ」
当たり障りの無い返事をして、無視すれば良い。
その内、登下校も別々になるかもな、、、。
*****
達也は普通に迎えに来た。
彼女と一緒に行かなくて良いの?
いつも通りの朝。彼女の事を知りたいのに、聞きたく無くて、下を向く。
下駄箱で靴を履き替えると、達也の友達が彼に挨拶をする。自然と友達と合流して、僕はおいてけぼり。
少し遅れて教室に入ると、達也の横に女の子がいた。
いつも男子だけの集団なのに、今日は達也の彼女らしき女の子がいる。紅一点で目立っていた。達也はモテるから、あの女の子が他の女子に虐められないか、心配だな。
「誠!」
と言って、僕を呼んだ。学校で話し掛けるなんて、珍しい、、、。
僕が、達也の次の言葉を待っていると、大きく手招いて
「こっち来て!」
と言われた。
僕は鞄を机の上に置き、彼等の元に行く。
達也は、女の子に
「ね、誠に友達紹介してよ」
と言い出した。彼女は、僕を値踏みする様に見る。
「誰でも良いの?」
達也の方を見る。
何だこれ、、、?罰ゲームかな?
僕は達也が好きだから、別に紹介なんてして欲しく無い、、、。
二人は盛り上がって話し出した。僕の事は無視。この状況をどうしたら良いんだろう、、、。面倒臭いな。
チャイムが鳴って、漸く僕は解放された。朝から疲れた、、、。
*****
それから二日後、達也と登校している時だった。
「綾が、友達紹介してくれるって」
「、、、」
「忘れてた?」
僕は達也を見ながら
「その話、立ち消えになったと思ってた」
と笑う。
「綾と二人でどの子が良いか考えたんだよ。誠は大人しいから、あんまり煩くない方が良いだろうとか、結構真剣に相談したんだ。放課後紹介するからな」
「ふぅ〜ん」
「良い子だよ。気に入ると思う」
達也は嬉しそうだった。
大きなお世話だよ、、、。
**********
綾は誠に、クラスの大人しい女の子を紹介した。
顔も普通で、凄く可愛い部類では無い。平凡も平凡。むしろ、存在が薄くて、忘れられてしまいそうな子だった。
多分、綾の友達と言っても、ちょっと話す位とか、小学生の頃は仲良しだったとか、同じマンションに住んでいるとかだろう。
でも、俺には丁度良かった。誠に紹介するなら、あんまり可愛い子は嫌だったから。
放課後、教室に残り、綾と二人で誠と彼女を引き合わせる。
「ね!お似合い、二人付き合いなよ!」
と綾が言うと、彼女、木村さんは迷惑そうに俯く。
「そんな事しなくてもいいのに、、、」
小さな声で言う。誠も何も言わない。
「二人とも大人しいし、良いと思うんだよね。試しに一週間付き合ってみようよ。お互いの良い所が分かって、気が合うかもよ!」
**********
達也の彼女は、しきりに付き合わせようとする。
「誠は木村さんの事、嫌い?」
達也に聞かれた。
その聞き方はズルい。
嫌いと言ったら、彼女が傷付くし、好きと言うのも違う。
「どうする?」
達也が僕を見る。
チラリと木村さんに視線を投げると、彼女も困っていた。
「、、、一週間だけ付き合うよ、、、」
達也と彼女は、顔を合わせて喜んだ。木村さんが小さくため息を吐く。
「きっと上手く行くよ」
達也が言った。二人はさも良い事をした、と言う顔をしている。
なんだかな、、、。
*****
何と無く四人で帰る事になる。と言っても、校門を出たら綾ちゃんだけが右に進み、僕達三人は左に向かった。一つ目の信号で木村さんと別れ、僕と達也だけになった。
別れ際、木村さんがペコリとお辞儀をした
「良い子だろ?」
と言われ
「そうだね」
と答えた。他に何て答えれば良いんだ、、、?
*****
僕と木村さんは、特に一緒に過ごす事無く、一週間が過ぎた。
「舘野くん、、、ちょっと良いかな?」
木村さんに話し掛けられて、僕は振り向いた。
視線の端に、達也と綾ちゃんが見える。綾ちゃんはニヤニヤ笑いながら達也を叩き、彼はジッと僕を見ていた。
僕達は教室を出て、音楽室の前に行った。最上階のどん詰まり、昼休みは滅多に人が来ないし、来れば足音で分かる。
「あの、今日で一週間でしょ?」
ああ、最終日だから、解散の確認かな?
「このまま、もう少し続けて欲しいの」
「え?」
「あの!迷惑なら断ってくれて構わない!ただ、好きな人がいないなら、このまま付き合ってるフリをして欲しくて」
「、、、どうしたの?」
「、、、実は、昨日、告白されて、、、世界で一番嫌いなヤツなんだ、、、」
「、、、」
「同じマンションに住んでて、小さい頃から虐められてるの。髪をひっばられたり、メガネを弄られたり、物を隠されるし、、、」
それって、木村さんの事、好きなんじゃないかな?
「大っ嫌いなの、、、」
指先が震えて、声が詰まる。
ポロリと涙を流した。
「本当に、本当に大嫌いで、、、昨日だって、無理矢理腕を掴まれて「舘野と付き合ってるのか?嘘だろっ!」って大きな声で怒鳴られて怖かった。腕も、、、内出血していて、、、」
僕は正直どうでも良かった。達也には彼女がいるし、僕は告白する気も無い。別れても、このまま付き合ってるフリをしても、どちらでも構わない。
「ごめん、ハンカチ持って無いんだ、、、」
「だ、大丈夫、、、私、持ってるから」
木村さんはポケットからハンカチを出して、涙を拭く。
「舘野くんに迷惑掛かるって分かってるんだけど、、、。彼女が出来るまで、このままじゃダメかな?」
「木村さんは好きな人いないの?」
コクンと頷く。
「分かった、、、取り敢えずもう少しこのままで」
「、、、有難う、、、ごめんね、、、」
木村さんはハンカチで両目を押さえた。
*****
弁当をまだ食べていない僕と木村さんは、静かに後ろのドアから入り、お互い自分の机で遅い昼飯を食べた。
達也の視線が痛い、、、。
*****
それから僕は、たまに木村さんの席に近寄り、少し話しをする様になった。
お互いフリだと自覚していて、ほんの少し話しをするだけ。それでも、あの、木村さんが泣いた日、僕達に何かあったんだろうと勘繰る人はいて、二人が付き合ってるんじゃないかと言われる様になった。
**********
告白したのは綾だった。
同じクラスの目立つ女。
整った顔に、真っ直ぐな黒い髪。身長も高い方だ。
初めて告白されて、それが可愛い子だったから、俺は調子に乗った。俺の周りには、まだ付き合ってるヤツとかいなくて、彼女が出来たのは俺が一番だった。
誠が好きだけど、アイツとは付き合えないし、軽い気持ちで「いいよ」と言った。
誠にも恋人が出来たら、きっと喜ぶんじゃ無いかな?。そう考えて、女を紹介しようとした。
綾と相談して、木村と誠を引き合わせる。
一週間付き合うと言った。俺の選んだ女と付き合うのが嬉しかった。
それなのに、三日目位から何だかモヤモヤして来た。誠は木村と一緒にいる事は無い。それでも、二人は付き合っているんだ。
休み時間、綾と一緒にいるのに、俺は度々誠を目で追っている。
あの日から一週間経った日の朝、いつもと違った。
今日で最後だ、、、とホッとした。
誠を迎えに行き、一週間、木村と何も無かった事が嬉しかった。
昼休み、初めて二人が一緒に行動した。心臓が止まりそうだった。
待て、、、行くな、、、
自分で、二人が付き合う様に仕向けたクセに、不安になった、、、。
昼休み中はイライラしていた。綾に話し掛けられても、集中出来ない。漸く二人が帰って来た時、明らかに木村は泣いた後だった。
一体何があったんだ?
それから二人は、以前より少しだけ一緒にいる時間が増えた。
誠と木村が付き合っている、、、そんな噂が直ぐに流れた。二人が消えた昼休みの日から、付き合っているんじゃないか、と誰かが言った。
綾は、俺と綾が引き合わせたのにね!と笑う。その顔にもイライラした。
自分の感情に振り回され、浅はかだったと後悔した。
綾と付き合った事も、木村を紹介した事も、、、。
でも、今更もう、戻れない。
俺が綾と別れるのは簡単だ、だけど、誠に木村と別れて欲しいとは言えない。
一緒に帰っている時、つい
「木村と仲が良いんだな」
と口に出してしまった。
「、、、達也が付き合えって言ったんだよ?」
「付き合えとは言ってねーよ。誠も彼女が欲しいなら紹介するって言ったんだ」
「、、、付き合わないと終わらない雰囲気だった」
「付き合ったら、好きになったのかよ?」
自分で聞いて、自分で傷付いた。
「別に」
「でも、一週間経っても付き合ってるんだろ?」
「まぁ」
「なら、好きなんだ」
「好きだったらどうなの?」
「誠は簡単に誰かを好きになるんだな!」
「はぁっ?!」
「ちょっと紹介して、付き合ったら好きになるんだろっ?!」
「、、、」
誠は俺を睨んだ。今まで、こんなに悔しそうに俺を睨んだ事は無い。
「僕が誰を好きになろうと、達也には関係無いよ、、、」
「、、、」
「明日から、朝迎えに来ないで、、、」
誠を本気で怒らせた、、、。
**********
いつかはこうなるだろうと思っていた。
達也には友達が多いし、僕と彼はタイプが違い過ぎる。今まで友達だったのが、不思議な位なんだ。
これで良かったと思う事にする。
僕の好きは絶対に届かないし、、、。友達でいる事に疲れてしまった。
僕ばかりが彼を好きで、達也は僕以外を選んだ。
友達も、彼女も、、、僕は対象外なんだ。
友達を辞めよう、、、もう、無理だ、、、。
**********
私には、本っっっ当に苦手な人がいる。
幼稚園の頃から虐められてるんだ。顔も見たく無い。私はアイツが近くにいると、何と無く分かる。
本当に嫌い
ソイツが真逆の告白をして来た。
吐きたい位嫌だ。
どうして私を苦しめるクセに、好きだとか言えるんだろう。訳が分からない。
「美雨、、、」
しまった。考え事をしてたから、気付かなかった。
マンションのエントランスで、待ち伏せされた。私はエレベーターのボタンを押す。
一緒に乗るの、、、嫌だな、、、。
エレベーターの扉が開く、私は乗り込んで、7階を押す。アイツも乗って来た。私は降りる。エレベーターの扉が閉まり、アイツを運んで行った。
助かった、、、。
私はアイツに掴まれた腕を摩る。まだ、内出血の跡が残っている、、、。
もう一度エレベーターを呼び、二基目のエレベーターが来た。ホッとして乗る。扉が閉まり、一人きりになると、怖かったな、、、と泣きそうになった。
7階でエレベーターが止まり、扉が開くとアイツが立っていた。一瞬、降りるのを躊躇い、それでも足を前に出した。アイツを無視して家に向かう。どうか、後ろから着いて来ません様に、、、。
玄関の鍵を開け
「ただいまー!」
と、誰もいない部屋に大きな声で言い、すぐに鍵を掛ける。荷物を置いて溜息を吐いた。
疲れた、、、。
何なの、一体。本当にイヤッ!
**********
僕はいつもより早く学校に行った。達也にもう迎えに来るなと言ったけど、一応早目に家を出た。5分早く出ただけだった。
小学生の頃からずっと二人で登校していた。帰りもいつも一緒。何だか変な感じがする、、、。でも、きっとすぐに慣れる。
「舘野ってお前だろ?」
下駄箱で話し掛けられた。
「 ? そうだけど、、、」
「木村と付き合ってるの?」
、、、もしかして、木村さんの、、、
「付き合ってます」
「そっか、、、」
彼はそれだけ確認すると、行ってしまった。
ちょっと心臓がバクバクした。
自分のスニーカーを拾い、下駄箱にしまう。
横に達也がいた。僕達の会話、聞いてたかな?
まぁ、いいや、、、。
達也は僕の後ろを通り、階段を登って行った。
*****
教室で木村さんに話し掛けると、周りの空気が変わる。
誰かが「ほらね」と言ったのが聞こえた。
教室だと誰が聞いているか分からないから、音楽室の前に移動する。
「今朝、鈴宮くんに話し掛けられたよ」
「、、、」
不安そうに僕を見ている。
「木村さんと付き合ってるのか、確認された」
「、、、大丈夫だった?」
「特に何もされて無い」
「良かった、、、」
「アレッて、鈴宮くんの事?」
「、、、うん」
「そっか、分かった。僕も鈴宮くんの前では特に気を付けるよ」
「ごめんね、有難う」
朝会った時の鈴宮くんは、普通の人だったけどな、、、?意地悪する様には見えなかった。
「今も虐められてるの?」
木村さんは首を振る。
「出来るだけ会わない様にしてるし、二人きりにならない様に気を付けてるから」
「腕を掴まれたのは、久しぶりだったの?」
「うん、、、」
鈴宮くんは木村さんの事、どう思ってるんだろう、、、。
*****
放課後、ホームルームが終わり、僕は席を立って一人で帰る。
誰も僕の事なんて気にしない。
達也は綾ちゃんと話しをしているし、僕はそっちを見ない様にした。
鈴宮くんが歩いてる。信号を渡る為に立ち止まり、俯いていた。
誰かを虐める様には見えないけどな、、、。でも、木村さんは震えていたから、本当にイヤなんだろう。
*****
それから暫くして、達也と綾ちゃんが一緒にいるのを見なくなった。どうしたんだろうと思っていたけど、確認する事も出来ず、僕はいつも通り一人で過ごしていた。
木村さんから二人が別れたと聞いたのは、そのもう少し後。
理由は木村さんも知らなかった。誰かが話しているのを聞いたらしい。僕は何だかなぁ、、、と呆れた。
*****
あ、鈴宮くんだ、、、。本屋の絵本コーナーにいる。小学校低学年位の女の子と一緒にいた。妹かな?女の子は絵本に夢中だった。
彼と目が合うと、小さくお辞儀をしてくれた。そんなに怖く無い、、、。僕もお辞儀を返し、近付いた。
「妹さん?」
「うん」
「一年生?」
「そう」
「、、、あのさ、、、。木村さんの事、好き?」
「なっ、、、?!」
「にぃに?」
妹さんが鈴宮くんを見上げた。彼は顔を真っ赤にして
「何でも無いから、本、読んでな」
と笑う。
僕達は、少し離れた場所で立ち話をした。
「木村と舘野が付き合ってるって聞いて、信じられなかった。木村に好きな人がいるなんて知らなかったし、舘野の事も知らなかったから。舘野も俺の事、知らなかっただろ?」
「うん」
「どっちが告白したの?」
「あー、、、友達の紹介で付き合う事になって」
「そうなんだ、、、」
「鈴宮くん、木村さんの事、好きだったの?」
「その話しは止めない?」
「、、、今も好きなの?」
はぁ、、、と溜息を吐いた。
「好きだけど?それが何?」
「好きだから虐めたの?」
「ぐっ、、、」
「木村さん、凄く嫌だったって、怖がってた」
「ああ、そうかよ、、、悪かったな」
僕に言われて、カチンと来たみたいだ。でも、お店の中だからか、大きな声を出さない。
「内出血してたよ」
「え?」
「木村さんの腕、強く掴んだでしょ?」
「、、、ごめん」
「僕に謝っても、、、」
笑う。何だ、意外と良い人かも、、、。
「本人に謝れば良いのに」
「いや、嫌われてるの知ってるから、、、」
「嫌われてるのに、好きなんだ」
「、、、自分ではどうにも出来ないだろ?」
「そうだね、、、」
僕もまだ、達也の事、好きだもん、、、。
「にぃに、ガチャガチャ見に行こう!」
鈴宮くんの妹が、誘いに来た。
「ごめん、色々話せて良かった」
彼はそう言って、ペコリとお辞儀をして、妹の手を繋いで本屋を出て行った。
**********
夕方、私が学校から帰って来ると、鈴宮くんがエレベーターの横に立っていた。
はぁ、、、と溜息を吐く。
彼を避けながら、ボタンを押すと
「ごめん、、、」
と小さく聞こえた。
「え?」
つい声が出てしまった。
「この間、内出血してたって、、、ごめん」
「、、、」
「それから、イヤな事ばかりして悪かった」
びっくりし過ぎて声が出ない。
「舘野が、内出血の事、教えてくれた」
そうなんだ、、、ん?何で?
「この間、本屋で会って少し話したんだ」
私は彼を見ない。
エレベーターの扉が開いて、私だけが乗った。扉が閉まって、ホッとした。
、、、謝ってくれた、、、
**********
廊下の端に、誠と二組の鈴宮が一緒にいる。
アイツら知り合いだったのか?
初めて知った。誠を怒らせてから、何もかもが上手く行かず、面倒に感じた。綾とも別れた。
鈴宮とは小学校が違う、誠は部活も委員会も入っていない、一体どこで知り合ったんだろう、、、
**********
朝、鈴宮くんに呼び止められて、廊下の一番端で話しをした。
「美雨に謝ったよ、、、内出血の事、後、イヤな気持ちにさせた事」
「仲直りしたの?」
「それは無理だよ、、、。美雨は俺が嫌いだから」
「そっか、、、」
「でも、ずっと謝りたかったから、、、」
「うん、、、」
うーん、言葉が続かない、、、。
*****
昼休み、木村さんに声を掛ける。
「ちょっと、良いかな、、、」
彼女は椅子を引き、僕に着いて来た。
最近は音楽室の前が定番になっている。
「鈴宮くんに話しを聞いたよ。謝ったって」
「うん、びっくりした」
「、、、もう、付き合ってるフリしなくても良いかなって、、、」
木村さんは少し考えて
「うん、、、多分大丈夫」
と笑った。鈴宮くんは、そんなに嫌なヤツでは無いと思う。だから、木村さんが心配する様な事、無いんじゃないかな。
「もし、何かあったら相談してくれれば良いし」
「有難う、、、色々ごめんね」
彼女はそう言って、教室に戻って行った。
僕も遅れて教室に戻る。
**********
最近、舘野くんと鈴宮くんが一緒にいるんだけど、どうして、、、?
「木村さん、お早う」
と挨拶する横で、鈴宮くんがペコリと頭を下げる。
下駄箱で靴を履き替え、二人の後ろから階段を登る。鈴宮くんは舘野くんに
「じゃあ」
と言って二組に入り、私達は一組に入る。
鞄の中身を机にしまい、横に掛けた。
あの二人、仲良くなってる?
何だか変な感じだ。
**********
俺は一組の教室、後ろのドアから舘野を呼んで貰う。
「誠っ!」
一番近くにいた男に頼んだら、めちゃくちゃ睨まれて舘野を名前呼びした。舘野の友達かな?
誠っ!と呼ばれて、舘野は肩をビクッとさせて振り向いた。舘野の延長線上に美雨がいた。後姿。美雨を見れて良かった。
舘野は、ドアの近くまで来て
「どうしたの?」
と聞いて来た。
「あのさ」
と言いながら廊下に出る。
「買い物、付き合って欲しいんだ」
**********
結局僕は、鈴宮くんに本当の事を話した。
木村さんとは、紹介されて付き合っただけで、今はもう付き合っていない事。それから、木村さんが鈴宮くんの事を怖がっていた事。
彼は静かに聞いていた。身に覚えがあるからか、木村さんを責める事は言わなかった。暫く考えて
「分かった、気を付ける」
と言った。
それから、挨拶をする様になり、帰りに会えば信号機まで一緒に帰った。
彼が僕の教室に来て、買い物に付き合って欲しいと言う。
「美雨、もうすぐ誕生日なんだ」
「そうなの?」
「それで、、、」
「ああ、プレゼント?」
「お詫びもしたいし」
「良いよ」
「もし、美雨の好きな色とか、物が分かればと思って」
「探れば良いの?」
ぼくは笑った。鈴宮くんが恥ずかしそうに、少し視線をそらした。
「出来れば」
「頑張ってみるよ」
「週末、買いに行きたいんだけど」
僕達は、土曜日に買い物の約束をした。
*****
木村さんの持ち物を盗み見る。
文房具はシンプルだ。筆箱も薄い水色で、柄は入っていないし、文字やイラストも無い。前にハンカチを使っていたけど、あれも小さなタオル地で派手な感じはしなかった。
みんなが鞄に着けているキーホルダー。彼女のもチェックする。10センチ位のぬいぐるみが一つ着いていた。
*****
女の子が、何が好きかなんて分からない。可愛い物は一杯有るけど、可愛いにも個人差があるだろうし、木村さんが好きな物なんて見当が付かない。
鈴宮くんと二人で買い物に来たけど、どの店で選べば良いか分からないし、取り敢えず文房具を見に行く。
木村さんの好きな物が分からないから、何を見てもピンと来ない。
「妹、連れて来れば良かったかな、、、」
困り果てた鈴宮くんが言う。
「あ、、、これ、木村さんの鞄に着いてた」
女の子が好きそうなお店に二人で入り、肩身の狭い思いをしながら商品を見ていた。ぬいぐるみが置いてある一角に、ウサギがいた。
鈴宮くんがぬいぐるみを手に取る。掌からはみ出る位の大きさだった。
「うわ、気持ち良い。触ってみてよ」
と差し出した。両手で受け取り、弄る。
「ホントだ。めちゃくちゃ気持ち良い」
「これにしようかな」
鈴宮くんは値段をチェックして、暫く悩んでからレジに行く。
「プレゼント用でお願いします」
と声を掛けて、金額を支払った。ラッピングが出来るまで近くで待つ。
**********
俺が友達とフラフラしていたら、誠と鈴宮が一緒にいた。
ぬいぐるみコーナーで、うさぎのぬいぐるみを弄っている。誠の顔が嬉しそうで嫌だった。
鈴宮が値段を見て、レジに行く。それを横目で見ながら、友達が隣のスポーツ店に入って行くのを追い掛けた。
鈴宮が羨ましかった。自然に隣に立っている。
誠、、、俺の事なんて、何とも思って無いんだろうな、、、。
**********
「木村さん」
舘野くんに呼ばれた。
「一緒に帰ろう」
と言われて、びっくりした。彼はそう言うタイプでは無いし、そう言う関係でも無い。まぁ、信号までの短い距離だ。
一緒に教室を出ると、舘野くんは二組の教室を覗く。
「鈴宮くん!」
ギョッとした。私が彼を嫌いだって知ってるのに。
私は思わず視線を逸らす。
「一緒に帰ろう」
と舘野くんが言っている。
何で?
私は何も言えず、着いて行く。知らん振りをして離れてしまおうとしたのに、舘野くんに話し掛けられるから、距離を置けない、、、。
ま、信号で別れるから良いんだけど、、、。
と、思っていたのに、彼は一緒に信号を渡った。
30メートル程歩き
「ね、公園寄って行こうよ」
と言い出した。返事も待たずに彼は曲がる。
何で?
すぐ近くの公園。小さな小さな公園で、ブランコと滑り台しか無い。幼稚園生が遊ぶ様な公園だった。
「木村さん、鈴宮くんが渡したい物があるんだって」
え?
舘野くんが言うと、鈴宮くんが鞄からラッピングされた物を出した。
「きょ、今日誕生日だから、、、後、今までごめん」
えー、、、?!
「あ、ありがとう、、、」
「じゃ、僕は此処まで、後は鈴宮くん、頑張って」
「うん、サンキュ、、、」
えー、、、
**********
鈴宮くんは、折角買ったプレゼントをちゃんと渡せるか不安そうだった。不安過ぎて、緊張して渡せないんじゃ、二人の距離は縮まらない。僕は彼が、ちゃんと渡せる様にしただけだった。
後は鈴宮くんに任せて、僕は帰る。信号の先に達也がいた。
信号を渡り切り、もう一つの信号が変わるのを待つ。
達也が僕の横に、距離を開けて立った。何も話さない。
信号が青に変わり、僕達は歩き出す。
いつも一緒に帰っていた。彼と話しをしなくなって随分経った気がする。
「誠、、、」
少し後ろから声がした。
「木村さんと上手くいってる?」
そっか、まだ付き合ってると思ってるんだ。
「最近、鈴宮と仲が良いんだな」
へぇ、、、僕の事、見てくれてたんだ。、、、ちょっと嬉しい、、、。
「俺はもう、誠の一番の友達じゃ無いんだな、、、」
「、、、達也には友達が沢山いるじゃ無いか。僕より仲の良い友達、一杯いるだろ?」
「、、、それはそうだけど、、、俺には誠が一番だから」
ははっ、、、笑える。
「通学時間しか一緒にいなかったのに、一番だったんだ、、、」
「うん、、、でも、誠は俺が一番じゃ無かっただろ?俺の友達と一緒に遊ぶ事無かったし、人見知りするから無理に誘わなかった」
達也が一番じゃ無いなんて、勝手に決めないで欲しい、、、
「達也は身体を動かす事が好きだったし、友達が多かったから、休み時間は外に出てばかりだったよね?僕は外より教室にいる方が好きだっただけ。僕にも達也は一番だったよ」
後少しで分かれ道だ。
「、、、今は?」
「え?」
「今は、木村さんと鈴宮が一番?」
「、、、木村さんは、達也に勧められたから付き合っただけ、別に好きとか無いよ」
「鈴宮は?」
「、、、この話、長くなるけど、、、」
「良い、聞きたい、、、」
僕達は、分かれ道にあるコンビニの角で、ガードレールに寄りかかって話しをした。
「木村さんと、一週間だけ付き合えば良いと思ったんだ。木村さんも納得して無いみたいだし、達也と綾ちゃんも僕達が付き合えば満足すると思った。一週間経ったら別れれば良い、って考えた。でも、鈴宮くんと木村さんがトラブって、もう少し付き合ってるフリをする事になった。木村さんは小さい頃、鈴宮くんに意地悪をされていた時期が有って、怖がっていたから。だけど、鈴宮くんは木村さんの事が好きだった。鈴宮くんと話しをしたら、そんなにイヤな奴じゃ無いし、木村さんの事好きなら仲良くなると良いなって、協力したくなったんだよ」
「二人で買い物してた」
「うん、木村さんの誕生日が今日で、、、。どうして知ってるの?」
「買い物してる所を見たから」
「そっか」
そうなんだ、、、。
「鈴宮くんは、木村さんの誕生日だからお祝いしたいかったんだ。今までの事も謝りたくて、一緒に買い物に行った」
「すごく、仲良さそうだった。誠が笑ってて、、、羨ましかった、、、」
「何だよそれ、、、」
「、、、」
「、、、僕は、綾ちゃんが羨ましかったよ、、、。校内では達也の横に行けなかったから、、、」
「、、、」
「ま、そう言う訳で鈴宮君と一緒にいたんだ」
「、、、俺は?」
「、、、」
「俺はもうダメなの?」
「ダメ?」
「、、、友達にもなれない?」
「、、、そうだね、、、友達は辞めよう」
「何で?」
「、、、」
「俺は、誠の一番の友達が良い、、、」
「、、、それで、また女の子紹介して、良い事したって顔すんの?」
「そんな事」
「はっきり言って嫌だった。学校で、綾ちゃんと二人で木村さんを紹介されて、いい迷惑だった。、、、僕に好きな人がいるとか、木村さんに好きな人がいるかもって考えなかったの?」
「誠、好きな人、いるの?」
「、、、いるよ」
「い、いつから?」
「小学生の頃から」
「知らなかった、、、」
「隠してたからね、、、だから、もう、友達辞める」
僕はこれでお終い、とガードレールから離れた。
「誰?」
「え?」
「誠の好きなヤツって、誰なの?」
「、、、達也だよ」
これで本当に友達には戻れない、、、達也は僕を軽蔑して、きっと離れて行くんだ、、、
**********
待って?
誠の好きなヤツが俺って、どう言う事?
え?ちょ、、、っと、待って?
誠は、点滅する信号を渡ってしまった。
ああ、どんどん先に行ってしまう。
なかなか変わらない信号に、イライラする。やっと変わった信号を走って渡り、誠を追い掛けた。
「誠っ!」
彼の腕を掴む。怒っている様な、泣き出しそうな顔で俺を見る。
「あの、、、」
今、離れたら終わる、、、。
誠が、マンションのエントランスの鍵を開ける。俺は何も言えず、着いて行く。
一階の彼の家。玄関の鍵を開け、ドアノブを回して動きを止めた。
他の住人が後ろを挨拶しながら通る。此処で立ち話は目立つな、、、。
「入って」
誠が言う。
「うん、、、」
「どうぞ」
と言って、扉を大きく開けた。
誠は玄関横の部屋に入る。俺も着いて行く。彼は鞄を置いて、制服の上着を脱いだ。
「ちょっと待ってて」
と言って部屋を出る。俺は誠の机の椅子に座り、部屋の中を眺めた。昔と変わらない、、、。
机の上には余計な物が無くて、整頓されていた。
台所からカチャカチャと音が聞こえる。暫くして、誠がコップに水を入れて、持って来てくれた。
「ん」
と言って手渡される。
「ありがと」
受け取り、口を付ける。冷たい水が上手い。
誠も水を飲むと、コップを机に置きベッドに座った。
「何か言いたい事があるなら、今言って。これで最後にしよう」
「最後?」
「もう、近寄らない、絶対に」
「何でそんなに頑ななんだよ」
「、、、傷付きたく無い、、、」
「傷付かないよ」
「女の子、紹介されて傷付いた」
「二度と紹介しない」
「僕と一緒にいても、詰まらないよ」
「分かった、、、俺も友達やめる、、、それなら良い?」
誠がグッと手を握った。唇をキツく結び、何かを我慢している。
「恋人になる、、、」
「え?」
眉間に皺を寄せ、何を言ってるの?と言う顔をする。
ギ、、、と音を立てて椅子から立ち上がり、誠の前に立つ。
「俺も誠が好きだから、友達辞めて恋人になる。両思いだから問題無いだろ?」
「両、、、思い?、、、だって綾ちゃんと付き合ってた」
「ずっと好きだったのは誠、、、。でも、付き合うとか出来ないと思ってた。男同士だから、諦めてたんだ。だけど、誠も俺の事好きなら、諦める事無いよな?」
誠は俺の目をジッと見た。少し瞳が左右に揺れる。彼の瞳が潤んで来た。
「待って、、、」
視線を落とし
「受け止め切れない、、、」
俺は彼の頬に触れた。
「いつから、、、?いつから好きだったの?」
もう一度俺を見てくれる。
「かなり前から、小学生の低学年の頃には、特別の好きだった」
「、、、」
誠の瞳に涙が溢れて、溢れた。
**********
舘野くんが帰ってから、鈴宮くんは何も言わなかった。何かを言いたそうだったけど、言葉を探して諦めたみたいだった。
「帰ろうか、、、」
一言言って歩き出す。公園を出て、マンションに着くとエレベーターのボタンを押す。6階と7階。
もうすぐ6階に着く。お礼を言わないと、、、。緊張する。「あの、、、」と言いたいのに、喉が詰まる。
エレベーターが開き、癖で「開」ボタンを押す。鈴宮くんが降りた。
「ありがとうっ!」
思い切り大きな声が出ちゃった!
鈴宮くんは振り向いて、にっこり笑った。
*****
家に着き、自分の部屋でプレゼントを開ける。うさぎのぬいぐるみだった。私の鞄に付いてる子と同じ。触り心地が良い。悔しいけど、嬉しかった。頬擦りするとうっとりする。
私はそっと枕元に置いた。鈴宮くんの事は嫌いだけど、この子は大好き、、、。
**********
朝、エントランスを出ると達也がいた。
「え?」
「迎えに来た」
「何時に来たの?」
「10分前」
「早過ぎじゃない?大丈夫?」
「先に行かれるの、イヤだから」
「そっか、、、」
「今度、買い物に行きたい」
「良いよ。いつ?」
「いつでも」
「今日の放課後とか?」
「うん」
僕達は、放課後買い物に行く約束をした。二人で出掛けるの、、、初めてだ、、、。
放課後も勿論一緒に帰った。達也の方が家が遠い。でも、バス停は彼の家の方が近い。
「着替えたら、家まで迎えに行くよ」
「分かった」
あれからまた、二人で登下校するけど、まだ学校では一緒にいられない。達也には達也の友達がいるから。
会話もちょっとぎこちない。
達也は、鈴宮くんが木村さんにぬいぐるみを買ったお店に、入って行った。
「これ、誠にプレゼントしたい、、、」
あのうさぎだった。
「え?何で、急にどうしたの?」
「あの時、誠が嬉しそうに触ってたから、欲しいのかな?って」
まぁ、触り心地も良いし、可愛いけどさ、、、
「これ貰ったら、木村さんとお揃いになるよ?」
達也は、そっと棚に戻した。
「じゃあ、ダメ」
ヤキモチかな?
「達也は好きな動物とか、好きなキャラクターいるの?」
「うーん、ゲームしかやらないから」
うさぎの横のラッコを弄りだした。
ふふ、、、と笑う。気に入ったのかな?
「誠に似てる」
「じゃあ、達也に似てるのは、、、」
シベリアンハスキー、、、
「これだね!」
僕がシベリアンハスキーのぬいぐるみを達也の顔に並べて
「ほら!そっくり!」
と笑うと、僕の手を掴みながら
「じゃあ、コレにする」
と言った。触れられた手から、熱が身体中に回るみたいで恥ずかしかった。
「コイツと毎晩一緒に寝て」
耳元で囁かれた。
「俺の代わりに大事にして」
ぬいぐるみを持った手に、キスをされた。
「いいいいい、いつからそんな、気障な男になったんだよ!」
小声で叫ぶ。
「だって、誠を誰にも取られたく無い、、、。誠に格好良いって思って欲しい」
僕の心臓は壊れそうな位ドキドキしてるのに、達也は平気な顔をしてレジに行く。
「ラッピングして下さい」
彼の後ろ姿の耳が、赤かった。
*****
帰りのバスは結構混んでいた。会社員と学生で満員だった。押し潰されそうになる僕を、達也は心配してくれる。
幾つかバス停に停まる度に人が降り、僕達も二人掛けの椅子に座る。
窓の外が暗くなり、鏡の様に車内を映す。
達也がそっと手を繋いだ。
わぁ、、、
顔を見ると、窓枠に肘を掛け、頬杖を着いている。窓の外を見る横顔が格好良かった。
こんなに大人っぽい顔だったかな、、、。
僕の彼氏なんだ、、、。
嬉しかった。
いつまでもお幸せに!




