10年前へ
私は能力を得続けた。
光る板に存在したすべての能力を、すでに手に入れている。
それでも、止まらなかった。
思考を強化する能力によって、私は得られるすべての能力の組み合わせを計算した。
どの能力とどの能力を重ねれば、どんな結果が生まれるのか。
どこまで拡張できて、どこに限界があるのか。
組み合わせは、膨大だった。
それを一つ一つ、潰していく。
だが――
それでも、まだ足りない気がした。
――多分。
――私より、賢いやり方をしている人がいる。
そう思ってしまう。
私は、特別頭がいいわけじゃない。
せいぜい中の上。
この場には、もっと優秀な人がいてもおかしくない。
そう考えた瞬間から私の警戒は、周囲へ向いた。
能力を使って、人々の思考を読む。
名前。
年齢。
どんな人生を送ってきたのか。
探知系の能力で、今この瞬間に、彼らがどんな能力を持っているのかを調べ上げる。
初歩的な能力に一喜一憂している人。
力を得たことで高揚している人。
それでも。
――本当に、これだけ?
――裏で、何か隠していない?
疑念は、消えなかった。
私はさらに、隠蔽系の能力を使った。
《時間逆行(10秒)》
この能力が他の誰にも見えないように、光る板から「10秒前に時間を巻き戻す」という項目そのものを消し去る。
――これで、同じことは出来ない。
――少なくとも、表向きは。
可能な限りのことはした。
そう思う。
でも。
――それでも。
――ひょっとしたら。
――私より先に、
――今の私と同じか、それ以上の状態になった人がいるかもしれない。
――ひょっとしたら、
――その人も、能力を隠しているかもしれない。
――ひょっとしたら。
――ひょっとしたら。
――ひょっとしたら。
考え始めると、終わりがなかった。
私の不安は、尽きることがない。
周囲の人々が手に入れたばかりの能力ではしゃいでいる様子すら、私には――
――能ある鷹が、爪を隠しているように見えて仕方がなかった。
やはり、今の状態だけでは足りない。
もっと。
もっと、準備が必要だ。
私は、時間を巻き戻すことにした。
10年前。
――小学校に入学する、その日まで。
世界が、静かに反転する。
次の瞬間、私は真新しいランドセルを背負っていた。
少し若い母親に手を引かれ、小学校の校門を通っている最中だった。
朝の光が、やけに眩しい。
私はその時、はっきりと決意していた。
――何年でも。
――何十年でも。
――何百年かかろうとも。
デスゲームで生き残るために、徹底した準備をしてやる。
その覚悟だけは、もう、揺らがなかった。




