準備と警戒と準備と警戒
私は、可能な限りのトレーニングを行った。
体を鍛える。
筋力、持久力、柔軟性。
反射神経と、痛みに対する耐性。
できることは、すべてやった。
それだけでは足りないと感じて、私は戦うための精神を鍛えることにした。
やったことのない格闘技を、いくつも始めた。
――団体競技は意味がない。
必要なのは逃げ場のない状況で、自分一人で立ち続ける精神だった。
個人競技。
勝敗が、すべて自分の責任になるもの。
相手に頼れない。
言い訳もできない。
ただ、負けるか、勝つか。
その繰り返しの中で、私は自分の心が少しずつ変わっていくのを感じていた。
それでも、警戒は緩めなかった。
デスゲームに参加していた人間は、全員、覚えている。
名前。
年齢。
住所。
性格。
得た能力。
誰が、どんな反応をしていたか。
追跡系の能力を使えば、地球の裏側にいようと関係ない。
今、何をしているのかが分かる。
――同じことを、している人はいないか。
――私以外に、時間を巻き戻した人はいないか。
――私は、見られていないか。
考え続けた。
もし、監視されていた場合に備えて、偽の記憶も用意した。
デスゲームに参加した記憶。
時間逆行を行った事実。
それらは、探知されないよう、深く、複雑に隠した。
まるで、何も知らない普通の人間のように振る舞う。
能力は、徹底的に隠蔽する。
使わない。
気配も出さない。
それでいて周囲への警戒だけは、絶対に解かない。
一秒一秒が戦いだった。
誰にも見えない場所で、常に神経を張り詰めている。
安心できる瞬間は、なかった。
そうして、十年が過ぎた。
――でも。
――まだ、足りない。
そう思ってしまう。
私は、再び時間を巻き戻した。
さらに十年。
自分を鍛え、世界を観察し、疑い続ける。
準備を終わらせるために。
終わりが見えなくても、止まるつもりはなかった。
生き残るためなら、どれだけ時間を使っても、構わなかった。
更に十年、更に十年、更に十年、更に十年、更に十年。
気が遠くなるほどの時間を私は準備と警戒に費やす。
そして私は可能な限りの準備を終えた、その時だった。
違和感が走る。




