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「ジャナイ方」の異世界見聞記  作者: 那内(元ちみーば)


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5/22

05:あんさつしゃ が あらわれた!

明けましておめでとうございます!


 二頭立ての馬車がガタゴト進む。


 席は長板がL字に造り付けてあり、五人くらいは座れそう。

 屋根がついて、四方は大草原の絶景を眺め放題。ちょっぴりトゥクトゥクっぽいな。


 と言うと何か良さげだが、今はあたししか乗客がいない上に風が吹き抜けて寒い。

 街を出る前に立ち寄ったくだんの魔導具屋の主人が、旅に出るなら防寒具も用意しろと勧めてくれた。もうすぐ冬なのにそんな薄着で旅してんの頭おかしいのかとも言われた。


 勧めに従って(これも古着だけど)毛皮のマントっぽいのを買った。お陰で「とんでもなく寒い」から「少し寒い」まで緩和されてる。口は悪いけど良いおっちゃんであった。


 従う、といえば。


 この馬車『魔の山行き』に素直に乗る義理はあたしにはなかった。王太子の命令とはいえ、あたしは国民じゃないんだし。


 しかし乗り込まざるを得なかったのは、昨日からチラチラと複数の人間があたしの周りをそれとなく彷徨うろついているのに気付いたからだ。


 あれって王太子の監視かな? ちゃんと期日まで出て行くかを見張ってるとか。

 もし違ったとして、一人を付け狙う複数の男連中なぞ良い想像ができない。


 後者なら人気のなさげな場所へ向かうのは、余計に自殺行為な気もしなくないんだけど、そいつらが一緒に乗り込んで来るという事もなくて。

 乗客が一人で、実はホッとしている。

 御者の人は、最初に乗る時に料金を告げただけで、後は話しかけて来ない。


 今は誰かに近寄られたり、素性を訪ねられるのが一番怖い。


 王都を発つ頃には、王太子が主導で行った『聖女召喚』が成功したとお触れが出されていた。

 これで瘴気が祓える、と王都中がお祭り騒ぎ。


『もう一人の巻き込まれた召喚者』については情報が伏せられたのだろう。誰も噂してなかった。


 それは良いけど、もしバレたら?

 ハズレギフト扱いなので、何かに利用されるというのは今のとこ可能性が低いように思う。


 ただ、周知されたらまたあの『聖女サマ』が何を企むやら。

 初対面で、敵対とかしてないあたしを「怖いです」の一言で排除する奴だぞ。

 簡単に煽られる王太子も王太子だけど、王族すら手玉に取るなら、国民を煽るのもお手の物かもしれん。


 本当に簡単だよ?

「その人は聖女のわたしに危害を加えようとしてるんです!」

 と宣言して、国中に手配書でも回せば良い。


 そこまでするか? とも思うけど、やらないと言い切れないんだよなぁ。


 そういえば召喚の時に、ギフトはその者の望みに相応しい力を神が与えると教典にある、とかのたまってた奴がいたが……。


 あの女が、瘴気を浄化して世界を救いたいとか望むかね? 大いに疑問だよ。

 ……あ!『聖女』になりたかったんならあり得るのか。一発で異世界召喚とか当てたんだから、そういう小説や漫画を読んで憧れてもおかしくない。

 乙女の物語の華だもんね、聖女。美形王子付きなら尚更。


 まあ、殆ど初対面の人間の考えなんて分からないから、全部推測でしかないけれども。


 推測であれ、少しでも危険があり得るなら、王都からは遠ざかった方が良い。

 そして、身の安全を優先するなら『魔の山』なんぞには行かないのが吉だろう、が……。


 実は地図も入手したのよ。

 それで確認すると、隣国に行くなら『魔の山』を直進するのが一番の近道だった。


 隣国。

 なんて希望に満ちた二文字だろう。

 小説や漫画の主人公は、自国で不憫な目に遭うけど、大体は隣国で才能を開花したり幸せに暮らしたりするのだ。

 いやたった一日じゃ、その隣国がどんなもんかは風聞すら仕入れられなかったけど。『隣国』のイメージに縋り過ぎな気もするけど。


 少なくとも、この国に留まり続けて聖女と王太子の追撃を喰らうよりマシ。


 不安はないかと問われればありまくりだ。魔物とか……。あたしのギフトと練習した生活魔法でどれほど対処できるかも定かでない。


 でも、もうね。ここまで来たらなるようになるしかない訳で。

 時間をかけると手配書も本当に回りかねないから、他のルートは考えず、『魔の山』一択なのだ。


 王太子の命令に従ったように見えるのは悔しいですがね!


✵✵✵


「……なんだ? 刃が通らねえ」


 ガギン、という耳障りな金属音が聴こえた後、苛ついた呟きが聞こえた。


 ん? あれ、あたし眠ってた?


 ゆうべ、生活魔法で何回も検証して、いつの間にか床に突っ伏して寝てたんだよね。

 もしかしたら魔力切れなる状態だったのかとゾッとしたのと、せっかくベッドがあるのに床寝とは、と自分に突っ込みを入れたもんだ。


 なので、実は寝不足。王都から目的地まで半日くらいかかるらしく、ガタゴト揺られる間にうたた寝してたみたい。


 もう一度ガギンと鳴る。


「くそ、やっぱり『障壁バリア』張ってやがる。スキル持ちだなんて聞いてねえぞ」


 バリア? スキル?

 あたしにあるのは【パーソナルエリア】のギフトだよ。


 てか、なんぞ不穏だな。

 さっきから響いてる耳障りな金属音って何? ブツブツ喋ってる男の声は何?


 まさか暗殺とかじゃないよね。


 はは、いくらなんでも穿ち過ぎか。やたら『割とマシな方の追放』だったな、本気で邪魔なら存在ごと排除する可能性もあったよなとか……。

 思ったりもした……けど……。

 …………。


 もう一度、ガギン! と。

 音が響いたと同時に飛び起きた。


 瞬間、「うぉ!?」という悲鳴を挙げながら近くにいた人影が後退あとじさる。

 周囲は暗闇。ただ、馬車にぶら下がった二つのランプが仄かに現状を浮き上がらせていた。


 あたしは、馬車の長椅子で横になっていたようだ。

 そのあたしの正面に、フードを被って身構えている人物。


 その人物が手に握っているのは――刃物。

 銀の色がランプの薄明かりを弾いて目が縫い留められる。


「チッ……起きちまったか」


 舌打ちした男の姿を改めて凝視すれば……御者だった。


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― 新着の感想 ―
 スキル【パーソナルエリア】があって良かったです。しかし、念には念を入れてサクちゃんを殺害しようとするところが恐ろしいですね。その割には詰めが甘いと申しますか、もっと確実な方法があったはずですので、拙…
明けましておめでとうございます。元日から更新ありがとうございます\(^^)/ 御者! 盲点でした。そして【パーソナルエリア】、バリアがパッシブで命拾いですね!害意が直接的でコワイ。 古着の事を思えば気…
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