47:馬ちゃん✕5と出発前夜
報告です。
湖集落に新しい仲間が増えました。馬ちゃん✕五頭。
フローレンスさんと兵士青年を送った後、ふと気になって見に行ったんだよ。バランドル側の森の境界線に。
そしたら、いた。
彼女が乗せられて来たと思しき護送馬車と、それを引く二頭。
あと、護送してきた下級兵が乗っていたらしい、三頭。
ごめんね、貴方たちのご主人は吹っ飛ばしちゃったの。下衆だったので後悔はない。が、主人を失くした馬ちゃんたちには悪い事をした。
お詫びという訳じゃないけれども、放っておく気にもなれなかった。「一緒に来る?」と訊くと五頭とも大人しく従ったので、全員お持ち帰りしたのだ。
異世界の馬ちゃん賢すぎ、というか――アシュが五頭に向かってブルルヒヒン何か話しかけていたようなので、説得(?)したのだろう、多分。
余談だが、兵士の数と合わないのは数頭が逃げたからみたい。周辺を一応探したが、見つからなかった。無事に王都まで帰ってるといいな……。
✵✵✵
さて、その後――。
新たな馬ちゃん五頭は、瞬く間に湖集落に馴染んだ。
先輩馬のノワとアシュが後輩たちに色々教えているようで、仲良く戯れつつも統率がとれた馬集団となっている。
その他は以前通り。妖精たちやトレントたちが暮らしを営む平和な光景を、微笑ましく眺めながら、やるべき事をこなしつつ数日を過ごす。
周辺の瘴気はあらかた祓い、結界もなるべく拡げて強固にした。
旅の準備も整った。
いよいよ明日はジオの祖国に出発するという、その夜。
あたしは今まで日時を確認する以外には使わなかったスマホの、とあるアプリを開きスライドさせていた。
……なんでWi−Fiも電波もない状態でアプリケーションが使えるんだろうね?
疑問に思ったものの、この世界での『不思議』にいちいち突っ込んでも仕方ない。
そういうものだと考える事にしてる。
で、何のアプリを開いているかというと、フォトアプリだ。
そこには家族、友人たち、イベントで撮った写真……または日常の何気ない一コマなど――懐かしい人々や景色が並んでいる。
異世界に召喚されてから、ずっと閉じっぱなしにしていた、日本での思い出だ。
久々にそれらを見る気になった理由は、実は自分でも具体的な言葉にできない。
ただ、心の中で何かしらの区切りが付いたのかなぁ、とぼんやりとした自覚はあった。
そうでなければ見れない。もう戻れないだろう世界と、置いてきた生活。会えない人々への郷愁と哀惜。
そして、心配をかけているだろう父母や弟、友人たちに対する申し訳ない気持ちに押し潰されそうになっていただろう。
自分の気持ちに一区切りついた事、諦めに近い形で記憶が薄れつつある事を、喜べば良いのかは分からないけれど――。
写真を眺めながら自嘲していると、視界の端から銀の花がニュッと生えた。
もとい、コロの頭だ。何これ? みたいな様子で画面を覗き込んでいる。
「ん、気になる? これはね、スマホって言って、色々便利な機能が付いた携帯電話……電話は知らないか。えーと……」
ところで、コロは大妖精様との戦闘時に集めたマナを多量に浴びた(というか喜々と取り込んだ)せいか、少ーし風貌が変化した。
全体がほんの一回り大きくなって、頭の銀の花も少ーし大きくなって、肌の色がどことなく薄くなって、着てる若草色の服がほんのり濃くなって……。
毎日見てないと気付けないような、間違い探しみたいに極僅かな変化だけど。
コロポックルも成長するのかなと思いつつ、スマホを操作しながら機能を教える。
その後ふと思いたった。
「せっかくだし撮ってあげるよ、コロ」
立てた膝に乗っているコロにレンズを向け、パシャリ。
うん、きょとんと首を傾げるポーズ、可愛い。絶対ベストショットだ。
ああ、なんで今まで考えなかったかな。スマホで写真撮ること。
これから沢山撮れば良いかもしれないけど、ノワとアシュの霊獣・聖獣化前の姿はもう戻ってこない。今も美馬だけどあの頃だって可愛かったのに。惜しい事をした――と反省しながら写したコロを確認し。
あたしはそのまま硬直した。
◇◇◇
名前:コロ
種族:草妖精
年齢:?歳
主人:サク・マナベ
ギフト:――
スキル:豊作
属性:草
魔法:草魔法
魔力:6450
耐性:瘴気(微)、精神
備考:草妖精(中位)、ヒーリル草の妖精。主人の魔力譲渡、及び非常に濃いマナを取り込んだ事により、草妖精の長となった。まだ幼体。
◇◇◇
…………はい?
可愛いコロの画面の下に出たこの説明書きは何ですか?
色々突っ込みどころが多いんだけど。
何ですか、って……これはまるで……。
あたしはストレージから鑑定石を取り出し、スマホを鑑定した。
◇◇◇
名前:スマートフォン
種族?:異世界機器
年齢?:?歳
スキル:上位鑑定
◇◇◇
…………。
………………。
森の恵みが食べられるか食べられないかの暗中模索。
対処に失敗し、微毒にやられて寝込んだ日。
大っきい鹿だな可愛いなーと思ったら突進仕掛けられビビった瞬間。
……湖集落に辿り着くまでの、鑑定能力がなくて困っていた日々が走馬灯の如く脳裏をよぎった。
ここにアッタヨー、と虚ろな目で天井を仰いだのは、語るまでもない――。
このたびは数多くの作品の中から『ジャナ見』をお読み頂きましてありがとうございました。
お陰様で『追放〜湖集落編』はあと一話、幕間(26/3/1、日曜投稿)で一区切りとなります。
次章なのですが……。
事情により、開始が遅れることとなりそうです。詳しくは活動報告にて。
大変申し訳ありませんm(_ _;)m
那内より。




