表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ジャナイ方」の異世界見聞記  作者: 那内


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/48

40:大妖精の祝福


 柔らかく微笑む大妖精。


 おお……すんごい美女……。


 この美しい女性があの醜悪なハーピーゾンビだったなんて、ビフォアアフターにもホドがある。狂化魔獣化ってホント怖いね。


「えぇと……風の大妖精……さん? 大丈夫です? ご自分のこと、分かります?」


 問うと、大妖精は少し哀しげに顔を曇らせつつ、頷いた。


 あ、この妖精ひとも話さない系かと少し思ったのは頭の隅に追いやり。

 意識はマトモに戻ったみたいだから、つい直前まで暴れてた事実が辛いんだろうなと察する。

 ……でも言わなきゃ。


「じゃ、あの。魔の山一帯の、風のマナを正常な状態に戻して貰えますか? 実は、うちにいる馬が、霊獣化の眠りについて、その属性が風で――」


「心配要らんさ」


 答えたのは、上空から降りてきたジオだった。


 竜人の再生力が高いと言っていたのは強がりじゃなかったらしく、ピンピンしている。

 流石に服の、特に背中側はボロボロのままだけど。それはまぁ、仕方ないと思える範疇だろう。


 地面に降り立ったジオはあたしの頭をポンと叩き、労うように笑んだ。


「大妖精が戻ったんなら(マナ)の歪みも速やかに正されてくもんだ。アシュも確実に目覚める。――よくやったな、嬢ちゃん」


 …………そっか。

 じゃあ、もう大丈夫なのか。

 ふっと足から力が抜ける。


「おいっ?」


「あはは……安心したらドッと疲れが……」


 地面にへたり込みながら乾いた笑いを漏らす。いやー、これまで敵に遭遇したら吹っ飛ばせば済んだもんで。

 初めての戦闘と言える戦闘がよもやボス戦とは思わないじゃん。

 まぁ、戦ってたのはほぼジオだけどね……。


 ジオも苦笑した。


「ま、一時は本気でヤバかったし、無理もねぇな。……しかしどうする? 今日のところは帰って魔力溜まりの対処は後日にするか? それとも少しここで休んでからやるか?」


 あ、それなら決まってます。


「ちゃっちゃと片付けてすぐに帰る」


「……大丈夫か?」


「大丈夫! だってだって、ノワとアシュが霊獣になるとこは絶対に見たい!」


「へいへい。――ほれ」


 くつくつ笑いながら手を差し出すジオに掴まり、あたしはややふらついたものの立ち上がる。

 可愛い馬ちゃんたち(ノワとアシュ)の一大事だってのに、こんな所でへたれてられないのだ。



 瘴気溜まりを消す為、ハーピーゾンビだった大妖精の棲家に向かう。

 そこは最初の衝撃波祭りをくらって消失したが、瘴気溜まり自体は何の影響もなかったように留まっていた。


 抉り取られた岩壁にアメーバ状の黒い液体がこびりつき、黒いもやを絶えず吹き出している。例えるなら、黒い霧が溜まった50メートルプール、といった印象だ。


 これが瘴気溜まりなのか……。

 思わず呟くと、ジオは少し訂正した。


「『最大級の』瘴気溜まりな。他のはここまでデカくねぇ。平均だと、せいぜい1メートルくらいの黒い靄程度だ」


 マナの濃い場所で瘴気になり、定着してその場所から動かない様が水溜まりに似ている事から『瘴気溜まり』と呼ばれるようになったのだとか。

 へー、と思いながら手を伸ばす。


 触れた瞬間、十メートル程のそれは跡形もなく消し飛んだ。


 同時にかなりの魔力も消耗したが、安心して下さい!

 今のあたしは消費した先から魔力満タンになる『シン・サク』なんです。


 ……続けて読むと『新作』になるな。『ニュー・サク』の方が良いかな?


「お見事。……しっかし、これで浄化じゃねぇんだもんな。嬢ちゃんの消した瘴気ってドコに行ってるんだ?」


「それは不明なんだよねぇ……。できるならあたしも知っておきたいんだけど」


 こう言うって事はジオも知らないって事だよね。

 変な所に飛ばしてたら問題になりそうだから、何か聞けたらなと期待してたんだけれど、無理そうだ。

 と思ってたら、続きが返ってきた。


「うーん、俺としても多少の推測はしてるんだが、推測の域を出ねぇんだよなぁ。ウチの国の文献か、もしくは知者のジィさんなら詳しく知ってるかもしれんが。――あ、訪問を急かしてる訳じゃねぇぜ?」


 最後さりげなく付け加えられた台詞に、あたしは目を瞬かせた。

 そして、吹き出す。


「? なんだ、いきなり笑って」


「ふ、はは……なんでもない。――さ、これで用は終わり。帰ろ!」


✵✵✵


 湖集落へ帰ると、妖精たちやトレントたちが出迎えてくれた。

 ……リンゴさん、モモさん、あんまり枝を振るとまだ熟してない実が落ちちゃう――いや今は歓迎に水を差す台詞は厳禁だな。落ちた実は後でハチミツ漬けにすれば良いんだし。


 ノワとアシュはまだ眠っていた。でもなんだか出掛ける前より、力強さが増してる気もする。


「えっと……属性が定着した、と思っていいの?」


「お、嬢ちゃんも感じ取れるようになってきたか。その通りだ。ここまで定着したら、後は結果を御覧じろだぜ」


 自分の顔に喜色が浮かぶのが分かる。本当に良かった……。


 と、そこで銀緑髪の美女が、ノワとアシュにふわりと近寄った。


 え? あ、うん。

 付いて来ちゃったんだよね、大妖精様……。

 実は瘴気溜まりを消した時にもいました。静かに空気に溶け込む様はまさしく風の精。


 彼女からは爽やかで穏やかな気配しか感じないので、突然ノワとアシュに近寄っても危機感が煽られない。

 でも、何をするんだろうとは不思議に思った。


 彼女は慈愛に満ちた双眸で二頭を見つめた後、アシュへと顔を寄せると。

 その額に、口付けする。


 隣に立つジオが息を呑むのが聞こえた。


「……何?」


「――『大妖精の祝福』だ……。あー、うん。ま、流れからしてこうなるか……」


 と、頭をボリボリ掻くジオ。

 は? ……ちょっと、不安になる匂わせみたいな台詞、やめて欲しいんですけど。


 だが、『大妖精の祝福』を貰ったアシュは間違いなく風の加護を受ける(・・・・・・・・)から大丈夫だと太鼓判を押され、文句が封じられるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そうよねサクさん。瘴気を消すのも大妖精さんを助けるのも、それ自体が目的じゃない。早くすませておうちで待ってる子達の所に帰らなきゃね。 無事に目覚めてくれるまで、あとちょっと? もうハラハラしなくて大丈…
風の大精霊さんはすごい美人さんなんですね〜(*^^*)♪ ハーピーゾンビになってたのも好きでなってたわけじゃないもんね。 シン・ゴジラならぬ、シン・サク!僕も新作みたいだ〜、とツッコんでましたw気が合…
 お帰りなさい、サクちゃん、ジオ殿、コロちゃん。そしていらっしゃいませ、風の大妖精さん。皆で無事に帰って来れてほっとしていますが、今にも落ちそうなリンゴさんとモモさんの実が気になります。落ちた実は、後…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ