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「ジャナイ方」の異世界見聞記  作者: 那内


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04:買い物できるならマシか?


 あたしは溜め息を吐き、頭を振った。今は落ち込んでいても仕方ない。


 【パーソナルエリア】について考えよう。

 どんな能力なのか、パッと想像できるのは良い。


 確か、他人に侵入されると不快に感じる距離、だっけ?

 自分と他人との間に存在する目に見えない心理的な空間、縄張りでもある。満員電車での密着状態が嫌なのはこの心理が働くからだとか。


 だからといって、それが『能力』となると実際にどんな効果があるのかは首を傾げる。強いて言えば、街を歩いてても常に周囲の人や通行人とは一定の距離が空いてたな? と思うぐらい。

 歩き通しだったから、あたしが汗臭かったとかじゃ……ない、よね?


 …………よね!?


 思い至ったら風呂に入りたくなった。

 風呂! ……無しの宿でした!


 ちょっと、この世界って風呂文化はどうなの? テンプレに基づくと『無い』が妥当だけど、冗談じゃないよ!


 と、そこでふと思い出す。

 あたし、もう一つ能力なかったっけ?


 A:生活魔法


 おお……便利魔法の代表じゃん。

 王宮の聖堂なる場所にいた魔道士そのイチみたいな奴が「平民ですら使う者が多い」とか言ってた気がする。ならあたしにもすぐ使えたりしないだろうか。


 どうすればいいの? 呪文?

 それとも体が綺麗になれ〜と念じればいい?


 直後、体からふうっと何かが抜ける感覚がしたと同時に、全身が少しスッキリする。

 おぉお!!?


 どことなく汗ばんでベタついてた肌がスベっとして、奥歯にちゃっかり挟まってたおにぎりの海苔も無くなってる!


 今のが魔法? 大袈裟なエフェクトみたいなのはなかったけど……。


 ならさ、この少し薄汚れた古着もなんとかならない? 髪もまだちょっと埃っぽいし。

 街の中、見た目整然としてはいたんだけど、小さなゴミやら何かのフンやらがそこここに落ちてて、空気はよろしくなかったんだよね……。


 魔法はイメージとも言う。


 髪と服が綺麗になるイメージを想像で練ると、自分の内側の『何か』も練られる感覚がある。

 充分、と思ったところでそれを放つ(イメージ)。


 さあっと風が吹き抜ける清涼感と共に頭皮の痒みが収まり、衣服は……古着感はともかく汚れなんかはすっかり消えた。


 ……やっぱり洗濯してなかったんだ、と顔が引き攣ったものの。


 少なくとも、あたし、魔法が使える。

 じゃあこれからも、なんとかなるかもしれない。


 いや、そればかりじゃ見込みが甘いのは分かってるよ。

 ただ今は必要なの。この先、どうにかなるっていう希望が。


「生活魔法……どこまでの事ができる?」


 検証。検証じゃ!


✵✵✵


 翌朝。

 目を擦りつつ宿を出、まずは繁華街に向かう。


 居並ぶ建物の一つ、『魔導具屋』の看板を掲げる店に入った。

 文字は当たり前に地球の言語じゃないけど、読める。もう一つのギフト【言語理解】のお陰かな。


 魔導具に立ち寄るのは、露店で買い物した時に見たからだ。

 旅人らしき人が、両手に抱える程の食料を、それより明らかに小さい袋に詰め込むのを。

 あれってアレでしょ?


 空間収納とか、ストレージバッグとか言うやつ!

 絶対欲しい。絶対必要、と鼻息荒くやって来たのです。


 金貨5枚がドナドナしました。


 日本円でいうと、多分五百万円くらい。こんな高価な買い物初めてだ…………。


 しかも一番小さい、拳大の小袋サイズで、だよ。

 もっと容量の大きい袋や、お洒落なポーチタイプはとても手が出せなかった。

 拳大でも容量は馬車二台分くらいあるらしいし、時間停止効果も付いてるとかで、買わないなんてあり得ないけど。


 その他、魔力を込めるだけで作動するランプや錆びないナイフ、ポーションなどもあった。

 ランプと十数本のポーションを金貨1枚と銀貨8枚で追加購入。


 残る金貨2枚と銀銅貨十数枚。これは食料や旅道具に注ぎ込みたいので、もっと欲しい物もあったけど泣く泣く諦めた。


 特殊効果の付いた魔導具は高いらしい。ただ刃物は必要だろう。

 食料やら着替え(古着)、敷物。野宿用のカトラリーと必要そうな物を買い込み。

 余ったお金で、露店に並んでいたナイフを購入した。


 おお、ナイフランプを鞄に詰め込んだぞ。有名アニメの主題歌通りの行動にちょっぴり胸が踊る。


 そんな気分も、王都の門近くに設えられた馬車停まりを見てあっという間に沈んだけど。


『魔の山』行きの乗り合い馬車はすぐに分かった。他の地域行きの馬車と比べ、乗客が少ないからだ。

 なんでも、『魔の山』周辺には町も何もないし、余程のモノ好きしか利用しないんだとか。


 そんな便をなんで残してんのと思いつつ、御者らしき人に尋ねれば、やはりその馬車で当たりだったようだ。


 やや迷って……視界にチラと入った人影に嘆息する。


 行くしかないか。

 乗車賃の小銀貨一枚(日本円で一万円くらい?)を払って乗り込むと、ほどなく出発した。


 すんごいガタゴト揺れる。道が悪いのか、馬車だからそういうものなのか。

 お尻に多大なダメージを受けそうなので、例のクッションを取り出して座り直す。


 ……キミ、役に立つなぁ。王宮関係者よりよっぽどあたしに寄り添ってくれるよ。殴ってごめんね。もうしない。


 重い気分で見上げた中天には、燦々と照り輝く太陽と青空。


 天気が良いのだけは慰めだなと思った。


このたびは「ジャナイ方」の異世界見聞記をご高覧下さり、誠にありがとうございます。

よろしければ来年も引き続きお読み頂ければ幸いです。

どうぞよいお年を。

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― 新着の感想 ―
 やはり、ナイフとランプをカバンに詰め込むと「冒険」という感じがして、ワクワクしますよね。リンゴと目玉焼きパンも詰め込んでほしくなります。  さて、サクちゃんの旅はどのようなものになるのでしょうか。
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