26:識るは金なり
あと耐性。
瘴気耐性がありました。あたしが瘴気の影響を受けないのはパッシブバリアのお陰かと思ってたけど、これの効果も兼ねてたのだろうか。
毒耐性はキノコ他で熱を出したりしたせいで生えたっぽい? だとしたら怪我の功名ってやつだね。
もう一つの精神耐性については不明。元からあったのか、精神攻撃みたいな何かを防ぐのか……後でジオに尋ねてみよう。
他に知っておきたいのは……魔力かな?
大や小じゃなくて数値表記になってる。流石改良盤の鑑定。
「ジオ、あたし前の鑑定で魔力:(小)だったんだけど、それって数値で言うとどれくらい?」
「んー? 500から3000てトコじゃねぇか?」
「ざっくり……」
「だから、アレは旧式なんだって。魔力:大、中、小でしか判定されねぇ」
まぁ道具ってそういうもんだよね。携帯だって親世代の若い頃は鞄みたいな大きさで、通話機能以外なかったらしいし。
「因みに魔力:(大)なら?」
「確か、一万以上だったか」
え、あの聖女ちゃんそんなに魔力多いの?
そういえば……。
『王太子殿下、ヒメナ様の魔力も『大』ですぞ! 王宮魔道士であれ『中』がせいぜいですので、この魔力量は聖女にしかあり得ませぬ!』
とか、王宮にいた神官ぽい老人が言ってたな。
するとあたしは今8547だから中ぐらい、王宮魔道士の魔力量同等か多めと考えていいのか。
もし初期が最低値の500だったなら、十倍以上も増えたって事? なんか増えたような気はしてたけど。
何の行動で増えたんだろ?
「魔力ってどうやって増やすの? 枯渇するまで使うとか?」
「完全に枯渇すると死ぬが? 運が良けりゃ気絶で済むけど」
そうでした。体の魔力=マナが消失するのは、命脈を絶つのと一緒でしたっけ。
あたし、ぶっ倒れたこと二回あるね……本当に運が良かっただけだったんだなと今になってブルリときた。
なんとなしに腕を擦るあたしに、ジオは呆れた目を向ける。
「それも経験済ってか?」
「やむを得ず……」
「意外に無茶する事あるよな、お前さん。――まぁ魔力を手っ取り早く増やしたいなら効果は絶大だが、今後はお勧めしねぇぜ」
「……分かってるよ」
あたしも別に死にたい訳じゃないんで。
「安全に魔力を増やすなら、純粋なマナが豊富な土地に住むのが一番確実だ。世の中の高位魔道士は大抵、数年くらい俗世から離れてマナの濃い森なんかに隠遁する。あとは、体が少し怠くなる程度に魔法やらスキルやらを使うこった。体内魔力が一定以上減ると、その反動で魔臓器がより多くの魔力を精製するって仕組みだ」
なるほど。
トマトにあんまり水やりをしない方が甘くなるみたいな?
え、違う??
いやしかし、ジオが言った事あたし全部達成してるわ〜。コンボだコンボ。
んじゃ、今の生活を続ければ順調に魔力は増えるのね。この湖集落、妖精たちがいるからかすんごくマナが多いし。
ただ。
「魔力を増やし過ぎてパーンしない?」
「ぱーん?? ……魔力過多で体の負担になるって事か?」
「それ」
「自分の器を越える魔力は精製されねぇし、されたとしても留めて置けねえから体外に出て行くんだよ。よって『ぱーん』はしねぇ。ま、例外はあるが」
「なら良かった……けど、例外?」
「ヒト族には魔力過多症やら魔力枯渇症なんて言う病もあるらしい。が、お前さんには当て嵌まらねぇな」
「根拠は?」
「病だぜ? どちらに罹ってもマトモに歩けなくなるし、飯も満足に食えなくなるから肌も真っ白で痩せ衰えるんだ。サク嬢ちゃんみたいに日焼けして、やんちゃ坊主よろしくあちこち駆け回ってんのは健康な証拠だよ」
微笑ましそうにジオは言うけど、あれ? これ褒められてる?
否。
言うなら『やんちゃ坊主』じゃなく『お転婆娘』だよね?
悪気がないからって許せる事と許せない事がある。ジオはそろそろ覚えた方がいいと思うの。
「あ、茶がなくなっちまった。嬢ちゃん、おかわり」
なので、処す。
ニコニコと頷きながら、あたしはさっき別の容器に移した液体を沸かし直し、ジオがこちらを見ていない隙を見計らってシレっと湯呑みへと注いだ。
直後、「にっっっっが!!」という苦悶の声が広場に響き渡ったのは語るまでもない。
✵✵✵
二時間後。
「ひでえよ嬢ちゃん……」
「余計な一言があるからいけないんですー」
まだ石テーブルに突っ伏しているジオに返し、あたしは出かける準備をしていた。
「どこ行くんだ?」
「ちょっと散歩」
「ふーん? 気をつけろよ」
ジオはそれだけ言い、手を左右に振った。
詮索されなくて内心ホッとしつつ、あたしは森へと向かう。
だって、ねえ? 一度止められて引き下がったのに、やっぱり気になるとか。
そう、瘴気溜まりよ。
ジオに頼んだけど、あんまり報告がない。でもあたし自身が任せたので文句も言えない。
それにどうやら、人任せでじっとしてるのは性に合わないみたい。なので自分でも探しに行く事にしたのです。
まだ陽は高いので、十数キロ往復しても夜には帰れるだろう。
お供には肩が定位置のコロ、他のコロポックルやノームが二人ずつ。
あと、丁度起きてたノワとアシュも加わった。
二頭とのお出かけは久々なので、気分が浮き立つ。
湖集落周辺の『外』に出ると徐々に瘴気が濃くなっていく。
といっても『瘴気溜まり』なる特に密度の濃い所があっても、コレなのかなぁ? と思うばかりだ。
なんせチョチョイと指で突くと消えるんだもの。
普通の瘴気と『溜まり』の違いがよく分からない。
分からないなりに気の向くまま歩き続ける。すると。
「……こんな場所があったんだ」
ヘドロ色に濁った池? のような水場に行き当たった。




