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「ジャナイ方」の異世界見聞記  作者: 那内(元ちみーば)


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21/23

21:お持ち帰りした


 拠点に帰ってすぐ、ノワとアシュがお出迎えしてくれたのでホッとした。

 二頭は最近、よく眠る。


 起きてる間は食欲旺盛だし、元気に駆け回っているのだが、とにかく寝る時間が増えた。

 今日出かける際も眠っていたので、そっと出かけたのだ。


 以前はあたしが出かけると後を追って来てたのに、と思うと寂しいけど、お年寄りだから無理もさせられない。


「こりゃまた……」


 二頭を撫でている所にジオグラッドさんもやって来る。

 おっと、忘れるとこでした。


 あたしはジオグラッドさんの提案を呑む事にした。

 何せこの世界の常識すらマトモに知らないからね。色々教えて貰うのと交換条件で。


 って、何をそんな驚いてるの?


「? こっちの黒い子がノワで芦毛の子がアシュです」


「そ、そうか」


 気もそぞろな返答。

 馬ちゃんたちや、今日も草ボーボーの広場、畑を見て顔が引き攣ってる。


「……何かあります?」


「……何かっていうか……。この世界の事は殆ど知らねぇんだったな。追々説明してやるよ。いっぺんに詰めたら混乱するだろ?」


 します。

 あたしの頭脳は標準仕様なので、小分けにして頂いたほうが記憶に留められますね。


「ジオグラッドさんは……」


「長ぇだろ。ジオかグラッドでいい。敬語も要らん。肩が凝っちまう」


 竜人って気さくなんだな。

 んじゃお言葉に甘えてジオと呼ばせて貰おう。


「ジオの寝場所をどこにします? 見た通り、広場と畑しかないんですが」


「敬語要らんって。お前さんはどこに住んでんの?」


 要らんのですか。

 本人がそこまで言うなら止めにして……いいのかな?


 あたしは「あの洞窟」と指差した。


「一緒でいいぜ?」


「あたしが嫌です……

嫌」


「ククッ、だよな」


 あたしが言い直したのが可笑しかったのか少し笑って、ジオは近くにいるノームたちをチョイチョイと手招きした。


「『土の妖精』よ、俺の寝床をこしらえてくれね? 雨風が凌げるくらいで良い。礼はこれ」


 言って、腰に装着したセカンドバッグサイズの鞄から、赤や青の石を幾つか取り出し、寄って来たノームたちに渡す。

 貰ったノームたち、大喜び。


「宝石……?」


「そ。土の妖精は別名、鉱石の番人と呼ばれる。彼らの手先は器用でドワーフに勝るとも劣らず。ドワーフは偏屈で、同族や余程気に入った相手にしか仕事をしないが、ノームは宝石か貴金属を報酬にすれば願いを叶えてくれる。……ま、嫌われたら願いどころか姿さえ現さないが」


 報酬ですと??

 ノーム、もとい土の妖精には色々作って貰ってるけど、貴金属なんてあげた事はないぞ?


「不思議そうな顔してるな。お前さんの望みを、妖精たちがホイホイ叶えてるとしたら当たり前だ。従属してんだもの」


「は? 従属!??」


 字面は知ってる。でもそんなんした覚えは無いですけど!?

 びっくりしてるあたしに、ジオは言った。


「魔力を譲渡しなかったか?」


「…………」


「ああハイ、その顔で分かった。――あのな、魔力譲渡は上位の者から下位者にのみ行われる契約なんだよ。成功した時点で契約は交わされたってコト」


「し、し、知らなかったよ! じゃああたし、勝手に皆を従属させちゃったのです!?」


「勝手じゃねぇよ。従属が嫌なら下位者には拒否する権利がある」


 拒否する権利。

 この子たちは拒否しなかったってこと?

 それは嬉しいけど……。


「そもそも土妖精はともかく、草妖精は滅多にヒト族と関わらねぇ。何があった?」


 草妖精はコロポックル(?)の事で間違いないよね。


「干物みたいにしなしなだった」


「干物て」


 妖精たちが現れた時の状況を説明すると、ジオは険しい表情で顎を撫でる。


「……そっか。そこまで悪化してたか」


「そこまでの悪化とは!?」


「急ぎなさんな。混乱してるとこに詰めても留めらんねぇだろって。ひとまず言えるのは、お前さんのお陰でこの魔の山森(エリュシオン)は滅びを免れたって事だ。妖精たちが従属するのも納得だぜ」


 いや、なんか初耳ルビが振られてなかった?

 ……ううん止めておこう。確かに今説明されると脳がパンクする。


 それより、宝石を貰ったノームたちがジッとあたしを見つめてくるのはどうしてだろ。


「くく、お前さんが主だからな、お伺いを立ててんだよ。報酬を自分たちが貰っていいのか、依頼通り俺の寝床を造っていいのか」


 えぇ? 律儀な……元はキミたちの住処もりだろうに。

 あたしはノームのモヒカンを一人一人撫でた。


「働いて報酬があるのは当然だからね、貰っておきなよ。ジオの寝床もお願い。そうね、あの辺りによろしく」


 あたしが指差すと、ノームたちは喜々と走っていき、早速モリモリ土を隆起させた。


「サク嬢ちゃんよ、妙に洞窟から遠い場所じゃねぇかい?」


「気のせい、気のせい」


「……安心してくれていいんだがなぁ。俺はこれでも紳士なんだぜ? 特に未成年の子供には手を出さねぇ主義だ」


「……22歳ですが?」


「……」


 ジオは表情を消し、あたしをまじまじと見つめる。

 あたしも据えた目で見つめ返した。


「あー……。大人のジョセイなら、警戒するわな、うん」


 ――すんっごく気まずそうにフォローされる方が、キッツい事ってあるよね……。


 どうせあたしは(とある部分が)貧相ですよ。それに日本人は実年齢より若く見えるっていうし、西洋風の顔立ちが多いこの世界じゃ余計……。


 ていうか一体いくつに見えたんだろう。 

 答えを聞く勇気は勿論、無い。


✵✵✵


 夕食は定番の焼き魚と山菜キノコスープ。

 洞窟そばの石テーブルにはもう一つ石椅子が造られ、ジオが着席している。


 ジオは「肉はねえの?」とか不満そうだったクセに、焼き魚四十匹は食べた。生け簀が空になった。

 竜人て胃が三つくらいあるの? 湖の魚が食べ尽くされないかとても心配である。


 食後、刈り取った雑草を乾燥させて煮出したお茶をふるまうと、なんでかそれにも引き攣った顔をされた。

 色が青汁そのものだからだろうか。


「? 見た目はアレだけど味は良いよ? 毒なんか入ってないですよ?」


「……いや、毒は効かねえからそこは良いんだけどよ」


 効かないんだ。

 耐性があるのかな流石竜人、と思っていたら。


「とりあえず、刈り取った雑草(・・)さ……余ってるなら俺に買い取らせてくれね?」


 よく分からん商談を持ちかけられた。


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― 新着の感想 ―
 共同生活が始まりましたが、色々と衝撃の事実が明らかになっていきますね。やはり、アレもコレもタダモノではなかったのですね……。
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